[新しい運用スタイル]

加藤さんは、DXCCナンバーワン・オナーロールメンバーになった後、隣の生駒市に新居を購入してQSYした。引き続き固定局でオンエアする一方、新たな運用スタイルへのチャレンジも始めた。移動局運用である。

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運用場所はロケーション優先で選んでいる。

加藤さんは、50Wのトランシーバーと、グラスファイバーポール、垂直ツエップアンテナを携えてロケーションのよいところに車で移動し、車中からもDXingを楽しむようになった。アンテナは「7MHz以上のバンドは全部用意している」と言う。固定局の大規模設備を使ってのDXingももちろん楽しいが、このような小規模設備で珍局をハントできたときはまた格別であると話す。

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移動局運用に使用しているIC-706とパドル。

[エンティティの増減]

2007年12月現在、加藤さんは消滅エンティティも含めて358エンティティとのQSOを達成し、それらすべてのエンティティのQSLカードをコンファームしている。また、CW DXCCのスコアは346に達しているが、これはJAでもトップクラスのスコアである。

ところで、DXCCは増減があり、独立などで新たな国家が誕生すると、ニューエンティティが誕生し、逆に併合などで国家がなくなるとそのエンティティは消滅となる。DXCCナンバーワン・オナーロールを維持するためには、当然、新しく誕生したエンティティとも交信しなければならないが、加藤さんは、ニューエンティティともすべて交信し、そのポジションを維持している。

加藤さんによると、「DXCCのスコアを伸ばすためには、まずはワッチが基本である。バンドのワッチの加え、珍局を発見した際には、相手の送信している内容をよく理解することが重要。スプリットなのか、シンプレックスなのか。特定の地域を指定していないかなどをよく聞いて、的確に対応しなければならない。そのために、特にCWにおいては、送信より受信に重きを置いて練習し技量を高める必要がある、平文のQSOを積極的にワッチするのがよい」とアドバイスする。

[WAZ]

加藤さんはDXCCのスコアアップを第一の目標にして運用を続けたが、その課程でDXCC以外のアワードも獲得している。その一部を紹介すると、まずはWAZ(Worked All Zone)。これは米国のCQ誌が発行するアワードで、同誌が定めた世界の40ゾーン全てと交信することで獲得できる。

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加藤さんが獲得したWAZアワード。

日本からの難関ゾーンとしては、伝搬的に難しいカナダ北東部のゾーン2や、アイスランド、グリーンランドなどから構成されるゾーン40、また、伝搬的には問題はないがアマチュア局の数が非常に少ない、エジプト、リビア、スーダンから構成されるゾーン34などである。加藤さんが獲得した当時は、アマチュア局がほとんど居なかったゾーン23(モンゴル、中国の一部、ロシアのごく一部から構成)が難関であったと言う。ちなみに、日本は、ゾーン25に含まれる。

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モンゴルから出てきたJT1YLのQSLカード。

[その他のアワード]

その他、加藤さんは、フランスのアマチュア無線連盟(REF)が発行するDUF(Diplome de L’Univers Francophone)や、南アフリカ共和国のアマチュア無線連盟(SARL)が発行するAAA(All Africa Award)などの難関アワードも獲得した。

それらのルールを簡単に説明すると、まずDUFはREFが定めたカントリー(フランスならびに、その海外県、植民地、それにフランスがかつて支配していた国など)と多数交信することであり、4つのレベルがある。一番優しいDUF1は、3大陸を含む5カントリー、DUF2が4大陸8カントリー、DUF3が5大陸10カントリー、一番難関のDUF4が6大陸20カントリーとなっている。

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加藤さんが獲得したDUF4。

つぎに、AAAであるが、おそらくアフリカのアワードでは一番有名な物だ。ルールは、アフリカ大陸にある異なる25カントリー、および南アフリカ共和国の全てのコールエリアと交信することになっている。アフリカの諸国は、概してアクティビティの低い国が多いため、完成はかなり難しい。

[コンテスト]

最近はほとんど出ていないが、開局からしばらくの間はよく参加したという。鮮明に記憶しているのは、1959年のCQWWDXコンテストCWで、このときは、ロングワイヤーアンテナを使って参加したが、JAはまだまだ珍しかったため、ガンガン呼ばれた。当時加藤さんは、アンテナスイッチを持っておらず、「送信/受信を手動で切り替えて運用した」と言う。