[レピーター許可]

昭和57年(1982年)1月、全国の電波監理局に対してレピーターを免許するに当たっての概要が通達された。わが国にとっては初めてのことであり細かな規制があったが、要は430MHzと1200MHzの2周波で、直轄局と団体局に分けて許可するが、免許人はすべてJARLである、ことであった。

全レピーターを手がけるだけの資金のないJARLは各地のクラブに協力を求めたもので、団体局を立ち上げた団体は完成後はJARLに引き渡すことになっている。直轄局は各地方本部と沖縄県に設けることになり、この年の3月に東京のJARL事務局の近くに設けられたJR1WAが第1号となった。

[東北団体局第1号]

東北では直轄局JR7WAが当然のことながら地方本部のある仙台市に設けられ、団体局第1号JR7WBの誘致争いとなった。東北各県支部間の第一号コールサイン入手意識は非常に強く、仙台事務局、また電波監理局への折衝も青森県は一番遠く、菊地さんら八戸グループは「青森県は関係筋へ日参は出来ず、まして八戸は無理かな」と半分あきらめていた。

ところが、ある日JARLから「WBだよ」と電話があり、東北最初の団体局を許可された。「早くからレピーターの必要性を訴え、意思表示をしていたためだろう」とメンバーは大喜びだった。その後、菊池さんらは意欲的にレピーター建設を始める。レピーターの自作も始め、隣りの岩手県のレピーター局の建設も支援した。その当時430MHzは飛ばないとの感が強く、ハンディー機で手軽に、広範囲の局と交信出来る通信網構築を目指し「ピーク時には青森県下に10局程度のレピーター局をつくった」と言う。

[ピーク時は10局程度]

青森県は津軽地方と南部地方が八甲田山という山に遮られ、全県カバーは難しい。それを解消するため青森県の北側、津軽地方全域と北海道道南をカバーする、広域レピーターにいち早く取り組み、青森市他県内各クラブの協力により土井伸二(JA7JTB)さんを代表とする管理団体を設け、八甲田山田茂谷地岳山頂のロープウエイ駅の厚意を得て、レピーターが設置された。

一方、県南については、岩岡隆雄(JA7NJU)さんを団体代表に、三戸郡階上町階上岳頂上に設置、県南一円をカバー。八甲田山、階上岳ともに、430MHzと1200MHzの2周波数をもつ。「今ではレピーター局は減少してしまったが、この2つは現在も稼働中」と言う。

[青函博]

昭和63年(1988年)全長53.9kmの青函トンネルが開通した。かつて、青函連絡船で結ばれていた本州と北海道が鉄道でつながった。青森県東津軽郡今別町と北海道上磯郡知内町を結び、最深部は海面下約100mというドーバー海峡トンネルより長く世界最長である。その開通を記念してこの年の7月9日から9月18日まで「青函博」が開催された。

青森側は「青森XPO」として青森市内安方地内を会場に、北海道側は「函館XPO」として函館市弁天町地区を会場に開かれた。期間中は十和田丸、羊蹄丸のかつての青函連絡船が復活運航され、両会場で約270万人の来場者があったという。青森では8J7XPO、函館では8J8XPOのアマチュア無線記念局が設けられた。

しかし、青森側の記念局は「無線室及び展示室など飾り付けなどする予算が無く、青森クラブの方々による手作りで会場を作った。毎日ノコギリと金槌、工具を持参、電気の配線、アンテナ線の引き込み等々ほこりまみれの毎日であった」と菊地さんは当時を懐かしむ。両会場ともに記念局を船舶内に設置したのがこれまでの記念局にはあまりない試みであった。青森の8J7XPO局は青森港に繋留されている八幸田丸に置かれ、特別室を無線室と展示に使用、外部からのアマチュアテレビによる中継等も実施、来場者にアマチュア無線の楽しさをPRした。

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八甲田丸上での「青森XPO」記念局

[アップル総会]

平成7年(1995年)5月28日、弘前市市民会館を会場にJARLの第37回通常総会が開かれた。東北で開催された総会は第6回(仙台市)19回(天童市)28回(福島市)についで4回目であった。福島市での総会が終わって4、5年が経過したころ、菊地さんは次ぎの東北地区での総会を北東北では初めてとなる青森県で開催することを計画し、支部会議で相談した後、支部大会で開催が承認された。

具体的な準備は平成6年の初めころから開始され、総会実行委員長に菊地さんがなり、副実行委員長の川村敏男(JA7AXP)さん、佐藤眸(JE7JGG)さん、事務局長の佐藤明(JA7JW)さん(サイレントキーされました)らの協力を得て、準備が進められた。前年の神戸で開かれた総会には「次年度の開催地として、視察と引継ぎの目的で参加したが、その神戸が1月に阪神淡路大震災に遭遇。複雑な思いで総会を迎えた」と言う。

「知られていない話題」

実は青森県支部では総会を一年前にやることで連盟と話しを進めていた。ところが「神戸の皆さんから先にやらせてほしい」との申し出が連盟にあり変更となった。このことは「あまり知られていないと思う。もし予定通り実施していれば、神戸では地震とぶつかり総会実施は大変なことになっていたのでは」菊地さんは不思議な巡り合わせを語る。

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弘前市で開催されたJARL「アップル」総会

総会では、阪神淡路大震災での非常通信実施や災害地での復旧に貢献した兵庫県支部、自宅を非常通信のために解放された冨安大輔(JK3LFO)さんらが表彰された。総会の特別記念局8J7APLは八戸市NHK放送会館で開局、テープカット後菊地さんが開局の第一声を発している。以後 青森市は八甲田丸に設置され、また、弘前市会場へ設置されて、多くのハムに運用された。

総会への正会員出席者は1007名。総数1500名。本州の北端である青森県での開催。それだけに実行委員会のメンバーは密かに「神戸の地震などがあり、あるいは1000名を割るのではないか」と心配していた。 総会議長には佐藤秀隆氏(JA7BAL)さん 副議長には小山俊一(JA7DZ)相沢喜弥(JA7AGL)さん両氏を選出「総会全体が盛りあがり、白熱した討議があったが、提案された4つの議題も了承され、無事終了した。あれだけ仲間がまとまったことはなかったと思う」と、当時を思い出している。

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「アップル総会」記念局のQSLカード