[HFの移動運用を始める]

1994年にV/UHF帯のFMハンディ機を購入してアマチュア無線を再開した郡山さんは、近くの小高い丘などから移動運用を始めた。その後徐々にグレードアップしていき、144MHzの八木アンテナと伸縮ポールを入手した。それらを釣り道具入れに収納して、同軸ケーブルやポータブルバッテリーと一緒に山の上に担ぎ上げて運用するようになった。

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移動先で収縮ポールに取り付けた144MHz5エレメント八木。

はじめの頃は長崎県と佐賀県周辺の山に出かけていたが、次第に活動範囲を広げ、九州各地の山に登るようになると、交信範囲が広くなり、移動運用がますます楽しみになっていった。一方、HF帯の運用は、IC-706を購入して以来、自宅からしか行っていなかったが、144MHzの移動運用では交信範囲に限界があるため、それなら移動先からもHFにトライしてみようと、ドライブに出かけたついでに、モービルホイップアンテナを使って試しに21MHzを運用してみた。

[21MHzを運用]

21MHzに出てみると、モービルホイップでも自宅からの運用と同様に遠距離と交信ができたため、2002年もう1台HF機を購入した。アイコムのIC-706MK2である。これは、IC-706が万一故障した時のバックアップという目的もあった。IC-706MK2購入後は706MK2を自宅運用に使用し、706を車に積んで、長崎県内を中心に頻繁にHFの移動運用を行うようになった。

その頃は、サイクル23がピークを過ぎたところでコンディションも良く、HFハイバンドが良くオープンしていたため、郡山さんは21MHz用のツエップアンテナを手に入れ、駐車した場所の近くの立木にアンテナの片側を引っかけて21MHzを運用した。21MHzを運用したのはアンテナが小さくて済むという理由もあった。

HFの移動運用を始めた当初、運用は洋子夫人に任せ、郡山さんは機器のセットアップとアンテナ張りに徹していたが、洋子夫人が電話で多くの局から呼ばれているのを見て、自分は電信に出てサービスしてみようという気になった。次第に洋子夫人の休憩時間などに少しずつ運用するようになり、その後は、夫婦で時間を分けて運用するようになっていった。

[7MHzを始める]

21MHzがオープンしていない時に7MHzで運用できるようにと、7MHz用のワイヤーダイポールアンテナを作り、広い場所ではこのダイポールを展開するようになった。ダイポールとは言っても給電部は地面に置き、エレメントの片方をタイヤベースで建てた10mの釣り竿に沿わせ、もう片方のエレメントは地面を這わす様に展開したため、型式的にはL型グランドプレーンであった。逆V型ダイポールにしなかったのは、釣り竿の先端に給電部を取り付けると、アンテナの重量で、釣り竿がしなってしまうことが理由であった。

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釣り竿を支柱にした7MHz逆V型ダイポール。トップから2mくらい下に給電部を設置。

しかしその後は、釣り竿があまりしならない程度トップから下げたところに給電部を取り付け、逆V型ダイポールとして運用するようになった。それでも、風の強い日に2回、竿の根本のところを折られ、釣り竿はオリジナルより短くなり全長6mぐらいになってしまった。そのため給電部の高さは4m位になったが、それでもそこそこ飛んだという。郡山さんはしばらくのこのスタイルで運用したが、5m長のアルミ製伸縮ポールを入手した後は、逆V型ダイポールがしっかり建てられるようになった。この7MHz用のダイポールはそのままで21MHzにも出られるメリットもあったため、移動運用時の主力アンテナとなった。

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アルミ製収縮ポールのトップに給電部を設置した7MHz逆V型ダイポール。

その他にもカーボン製の釣り竿の流用で7MHz用の長尺ホイップアンテナを作り、道の駅などでダイポールが張れない場合は、このホイップアンテナを使って運用した。普段の運用では、郡山さんが電信を担当。洋子夫人が電話を担当し、IC-706を交代で使ったが、新市などで本格的に運用する際は、郡山さんは、新たに手に入れたFT-817を使って車の外に別シャックを作って運用し、洋子夫人は車内で706を使い同時運用した。

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車外に作った別シャック。

[電源にはバッテリーを使用]

郡山さんの移動運用では、電源は車のバッテリーから直接配線せず、別立てのバッテリーを積んでいって運用している。理由は、運用に熱中してバッテリーを消耗させてしまい車のエンジンがかからなくなることを回避することで、安全のためである。もう一つの理由として、発電機と違ってバッテリーの運用ならノイズの発生がないことも挙げる。郡山さんが使っているバッテリーはシールドタイプのものではなく、ホームセンターなどで一般的に市販されている小型自動車用の廉価タイプで、運用前には自宅で充電し、通常3個を持って行く。古くなるとあまり持たないので4個を持って行くこともある。

泊まりがけで移動運用に出かけるときは、充電器も持って行き、ホテルの部屋で充電しているが、大型充電器を持って行ってイヤな顔をされることを避けるため、小型の充電器を持って行く。充電に時間はかかるがそこは割り切っている。バッテリー本体は車内での転倒防止のためポリバケツに入れており、ホテルの部屋にはポリバケツに入れたままの状態で持ち込んで充電している。

「バッテリーが新しいうちは、SSBの50W運用なら、1個で5〜6時間ぐらい持ちます、古くなるとフル充電しても、1時間くらいしか持たなくなります。そうなりますと廃棄して、新しいバッテリーを購入します」、「CWの運用では、バッテリーを長持ちさせるため、出力を20Wくらいに絞って運用しています」と話す。

ある時、長崎県北部の平戸市まで移動運用に行き、さあこれからやろうというときに、電源ケーブルをプラスとマイナスを間違えて繋ぎ、バチっという音と共に、ヒューズが飛んでしまったことがあった。その時は、応急措置としてヒューズ部分をビニール線で繋いで運用したが、「電源ケーブルにはプラス側とマイナス側の両方にヒューズが入っているため、一時運用なら片方あればまあ行けるだろうと判断しました」と話す。

その時は平戸市での運用を終え、自宅への帰り道に立ち寄ったホームセンターで同型のヒューズを見つけて購入した。その失敗を経験した後は、全てのバッテリーのプラス側に、印となる赤いビニールテープを貼った。そもそも自動車用のバッテリーは、一度車両に取り付けてしまえばそうそう取り外したりすることはないため、プラスとマイナスの表示はパッと見ではわかりにくい。この措置により、プラスとマイナスが一目で分かるようになり、急いでいるときでも繋ぎ間違える事がなくなった。

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ポリバケツに入れたバッテリー。プラス側に赤テープを貼ってある。