[バッテリー]

郡山さんの移動運用はいつも大成功ばかりとは限らず、時々トラブルにも遭遇する。連載第10回にも書いたように、平戸市への移動運用では、移動先で、さあ運用しようと思った際、バッテリーのプラスとマイナスを逆接して、DCケーブルのヒューズが飛んでしまい、応急処置で対応したことがあった。「飛んだのがリグ内部のヒューズでなかったことが幸いでした」、と郡山さんは話す。

バッテリーが新しいうちは、50WのSSBであれば5〜6時間持つが、容量が少なくなり、電圧が下がってくると、交信相手から電圧降下による変調の異変を指摘されるという。そうなると、郡山さんは一旦リグの電源を落として、別のバッテリーに繋ぎ直し、運用を継続する。「バッテリーは3個か4個積んでいくので、1日運用しても充分に持ちます」と話す。

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リアシートの足下に置いた運用用のバッテリー。

鹿児島県の韓国岳に登ったときは、大事なものを忘れてしまった。144MHzの5エレ八木を組み立て終わり、さあ同軸を繋ごうと思った際に同軸を忘れてきたことに気づいた。せっかく伸縮ポールまで担ぎ上げたのにがっかりした。それでもハンディ機に付属している短いホイップアンテナで運用したところ、当時はまだまだ局数が多かったため、ハンディ機単体運用でも、ある程度局数ができたのが幸いだった。

その他には、ダイポールアンテナの支柱にグラスファイバー製の釣り竿を使用していた際、強風で2度折れてしまったことがある。その時は折れた竿で手に怪我をしてしまったという。

[事前連絡]

北松浦郡小値賀町の小値賀島への移動運用を計画した際には、早朝からフェリーの出発港である佐世保港に向かったが、予約を入れておいたフェリーが強風で欠航になってしまい帰宅を余儀なくされた。やむなく小値賀町の民宿にもキャンセルの電話を入れた。翌朝も佐世保港に向かったところ、その日も依然風はあったものの、なんとか出港できた。しかし船は出るには出たが、相当揺れて郡山さんは船酔いしてしまったという。

郡山さんは、移動先でしょっちゅう警察官から職務質問を受けるため、運用前に地場の駐在所に連絡を行っておくこともある。小値賀島から運用したときも、運用することを伝えるために、島の駐在所を訪れた。さらに駐在所に向かう前には、小値賀町役場の観光課にも出向いて念を入れておいた。駐在所に着いたときには誰もいなかったため、置いてあった連絡用の電話器を発信したところ、遠く離れた五島市の警察署につながってしまった。

郡山さんは、「島のあちこちで、2、3日無線をやるけどよろしくお願いします」ととりあえず連絡を入れておいた。小値賀町から何時間か運用していると、駐在さんがやってきたが、すでに電話連絡した警察署から連絡が入っていた様子で、話が早かった。このときの小値賀町移動はリクエストに応えたものだが、ここは県内屈指の珍町のため、「もう一度行って欲しいとリクエストを受けることがあります」と話す。

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2006年10月の小値賀島移動。

郡山さんの移動先の選定は、新市や新駅以外は、自分の交信記録を確認して交信数の少ないところを優先している。その他には、久しぶりにどこどこ方面にドライブに行って、そのついでに無線運用もやろうと考えて出かける。しかしいざ目的地に着いてみると、観光など皆無で、無線しかやらずに帰ってくることがよくある。熱中すると昼食もまともに摂らず、コンビニで購入したパンを食べながら運用を続けている。

[携帯電話]

数年前、伊万里市にある道の駅で移動運用中、所要で電話をかける必要が生じた。そのため道の駅で公衆電話の場所を聞いたところ、「道の向かいにありますから」と教えてくれた。実際に捜してみたところ、なかなか見つからず、斜め向かいの100mくらい先でようやく1台見つけた。道の駅ですら公衆電話を設置しない現況と、公衆電話が無いような場所に移動運用に行くことが多いため、郡山さんは携帯電話の購入を決断した。

その後は、もう1台購入して、夫婦別々で携帯電話を持つことになった。携帯電話を購入するまでは、セカンドシャックと自宅の通信には、144MHzのFMを使っており、セカンドシャックでの運用中は、常に144MHzFM機の電源を入れていたが、以後は携帯電話で通信するようになり、ほとんど電源は入れていない。「携帯電話は買いましたが、これで無線のスケジュールを組んだことは一度もありませんよ」と話す。

[アンテナの変遷]

先にも書いたが、HFの移動運用を始めたころは21MHzオンリーだった。ツエップアンテナを使い、3mのポールに片側を引っかけ、もう片側は周辺の立木などに結んで運用した。そのころはコンディションが良く、21MHzが頻繁にオープンしていた。その後、釣り竿を支柱としたダイポールアンテナを使って7MHzに出るようになり、さらに支柱をアルミポールに変えて強化した。

5〜6年くらい前にはカーボン製の釣り竿を使って10MHzのホイップアンテナを作り、これも併用するようなった。このアンテナは、所属している長崎CW愛好会で製作会が開会され、メンバーの何人かが作った。講師を勤めた先輩によると、場所さえ選べば50Wで結構海外とQSOできるとのことだった。

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10MHz用ロングホイップアンテナを装着。自宅前にて。

その先輩は、自宅ではブロードバンド(BB)アンテナでオンエアしていたが、国内ならある程度できるという話を聞き、郡山さんもBBアンテナの購入を検討した。結局2010年3月の西日本ハムフェアでBBアンテナを購入した。「はじめからあまり期待はしていませんでしたが、全バンドでだいたいSWR3位までに収まっています。チューナー併用でどこでも出られるというのが大きなメリットです」、「しかし長さが6mなので、飛びはそれなりです。ロングワイヤーの方が飛ぶと思います」と話す。

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庭先に設置したブロードバンドアンテナ。