[パソコンの変遷]

松ヶ谷さんの使ってきたパソコンの変遷について触れておく。1台目はNEC社のマイコンキットTK-80。2台目もシャープ社のマイコンキットMZ-80Kを作った後、3台目でシャープ社の完成品・MZ-80Bを購入した。これは、文字表示用のブラウン管式モニターと、磁気記憶装置としてテープレコーダを装備した、当時としては画期的なパソコンだった。このパソコンでOSという概念を知り、CP/M(Control Program for Microcomputer)の移植に成功し、その上でMS-BASICを走らせ得意になっていたと言う。

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シャックで稼働中のMZ-80B

松ヶ谷さんは、このMZ-80Bでインベーダーゲームや、ブロック崩しなど簡単なゲームのプログラムを組んで楽しんだ。もちろんゲームをすることより、プログラムを組むこと自体が楽しかったと言う。プログラミングに慣れてくると、人工衛星の軌道計算ソフトの移植にもチャレンジした。ログ(業務日誌)ソフトにもトライしたが、これは実用にはならなかった。

その後、1985年頃、松ヶ谷さんはNEC社のPC-9801を購入した。この頃になると、大手企業はもちろん、個人企業でも顧客管理や、経理の為にパソコンを導入するようになっていた。松ヶ谷さんが経営していた松賀屋洋傘店で、在庫管理や税務計算などのためにPC-9801を導入したのに合わせ、使い勝手が同じであるため、自宅での無線用にも同じパソコンを購入したのだった。

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PC-9801と松ヶ谷さん。1990年当時。

PC-9801以降は、しばらく完成品を購入することはなく、自分でパーツを購入してパソコンを組み立てた。いわゆる自作PCである。自作とはいってもTK-80の様な半田付け作業は不要で、パーツを組み合わせて完成させていくというものだった。この頃になるとOSはウインドウズ95になっており、インターネットへの接続も比較的簡単になった。その後、松ヶ谷さんは、引き続き自作PCを何台か組み立てた。現在、メインに使っているパソコンは、デュアルコアのCPUを搭載したDELL社のセットで、2007年時点の最新OSであるウインドウズVISTAもすでに導入している。

[アマチュア無線のため]

松ヶ谷さんがパソコンを使用する主目的はもちろんアマチュア無線である。そのため無線用の各種ソフトを導入している。一例として、EMEに使用する月の位置を計算するソフト、アンテナを設計するソフト、WSJTなどデジタルモードの通信用ソフト、ログソフトなどである。

それでも、「一番使用頻度が高いのは、やはりブラウザーとEメール、それにIP電話であるスカイプの利用」と言う。ブラウザーは、主にアマチュア無線に関する各種情報の収集用として、Eメールとスカイプは主にアマチュア無線に関する各種情報の交換用としての使用だ。松ヶ谷さんにとって、「インターネットはアマチュア無線をサポートする手段、道具としての位置付けになる」と言う。

[ホームページ]

1997年、松ヶ谷さんは、自身のホームページを立ち上げた。目的は、自局JA2TYのピーアールであった。その頃、松ヶ谷さんは、ホームページを簡単に構築するソフトを持っていなかったため、全部HTML言語で書き上げた。曰く「特殊な言語で書くことが楽しかった」という。また、英語のページを先に立ち上げた。これには、自身の英語の能力を落とさないという目的もあったが、海外の無線仲間に自局をアピールすることが目的であった。立ち上げてからは、松ヶ谷さんのホームページを見た海外の局から、「この記述はこちらの表現の方が良い」といったEメールを、しばしばもらったという。

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QSLカードを掲示した松ヶ谷さんのホームページのトップ

ホームページを立ち上げたことにより、世界中のハムからEメールで無線に関する色々な情報が得られた、特にEMEに関する多くの情報を得ることができ、大きなメリットがあった。しかしEメールはすべて英語で来るので、返事も英語で対応しなければならず、「勉強にはなったが、そのうちに面倒になっていった。更新作業も負担になって、ページの更新頻度も下がっていった」と言う。その後、松ヶ谷さんは、支部報などに投稿した原稿の掲載を中心とした日本語ページも追加した。

[ジャンクメール]

ホームページでEメールアドレスを公開したことにより、多くの情報が得られたが、逆にデメリットもあった。ジャンクメールが大量に届くようになったことだ。松ヶ谷さんがホームページを立ち上げた当時はセキュリティも良くなく、プロバイダーによるフィルタリングサービスなどの対策も皆無だったため、「とにかくジャンクメールの多さには閉口した」と言う。

松ヶ谷さんは、ホームページを2年間程度公開した後、ジャンクメールへの対応がイヤになりプロバイダーを変えた。それをきっかけにメールアドレスが変更になったため、ジャンクメールは止まった。それと同時にホームページの公開は止めてしまった。

[インターネットオークション]

最近、松ヶ谷さんは、インターネットオークションに填っていると言う。当初は、倉庫にあった不要品を処分するつもりで始め、古い機器がけっこう処分できた。松ヶ谷さんは、不動品は必ず完動状態に修理してから売却していたため、相応の価格が付き、いい小遣い稼ぎになったという。

ある日、SR-700という受信機をオークションに出品したことがあった。この受信機は竹内博(JA2BVL)さんの倉庫から出てきたものを、松ヶ谷さんが整備して完全に動作するように直したものだが、竹内さんは使う予定がないので、代わりに出品したと言う。「売れたら一杯飲みに行こう」と1万円でスタートしたところ、あれよあれよという間に価格が上がり、最終的に8万円以上で落札された。松ヶ谷さんと竹内さんは「一杯飲みに行く予定が、それぞれ奥様同伴の4人で温泉に行って一晩泊まって楽しんできた」と言う。

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オークションで落札したKWM-2

松ヶ谷さんは、各局の出品を見ていると欲しいものが時々出品されており、自分の不要品を売却する傍ら、自らもオークションに参加して、競り落としたものも多かった。「トータルすると結局は赤字になる」と笑う。コリンズのKWM2もオークションで購入したが、この機械はそれまでに、友人のものを10台ほど修理した経験があり、機器の回路、構成は熟知していた。しかし、自分のセットをまだ持っていなかったため、落札したものだった。

その他、松ヶ谷さんの落札品は測定器類が多かった。最近では、またスペクトラムアナライザーを落札した。これはアドバンテスト社の4172というモデルでトラッキングジェネレーター付きで重量は60kgもある。しかし「この測定器には重宝している」と微笑む。「無線関係の他にはカメラのレンズなど時々見る。最近のインターネットはオークションの閲覧がメインになっている」と言う。

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スペクトラムアナライザー・4172

[パソコン教室]

松ヶ谷さんは、友人のグループなどから「定年で暇になったのでパソコンを教えてくれ」という依頼を時々受けるという。松ヶ谷さん自身は、昔からパソコンに関わっているので、パソコンの使用に関しては全く問題がないが、「インターネットがおもしろそうだ」等と、リタイアしてからいきなりパソコンを初めてもなかなか頭に入ってくれないので、習得は容易ではない。「キーボードになじむのがまず難しい」と言う。

一度、「ちょっとトイレに行ってきます」と、生徒がパソコンの電源を強制的に落としてしまい、パソコンが壊れてしまったことがあった。その生徒には、「電気製品を使わないときには電源は切るものだ」、という固定概念があり、パソコンの電源もこの例外ではなく、落としてしまったのだった。

ある日、松ヶ谷さんが、どこかのホームページでを眺めていたところ、定年後の余暇で挑戦したいものの第一位がパソコン、第二位が英会話、第三位がピアノだという記事を見つけた。それぞれの習得にかかる時間は、パソコンが100時間、英会話が1,000時間、ピアノに至っては10,000時間とのことだった。これを読み、リタイア後にパソコンを始めたい人がいかに多いかが分かったと言う。かくいう松ヶ谷さんは、現在ピアノに挑戦している真っ最中である。