[2回目のハムベンション]

松ヶ谷さんは2005年に続けて2006年もデイトン・ハムベンションに参加した。2回目は、石黒さんに加え、松ヶ谷さんの奥様も参加し、3人でデイトンに向かった。この2回目も、コストが安かったため、ハムベンションへの参加のために企画されたツアーを利用したが、デイトンに入る前に奥様サービスとして、ニューヨークでの2泊をオプションで追加し観光を楽しんだ。あいにくニューヨークでは雨ばかりだったが、初めて経験したニューヨーク市の地下鉄に乗って、グラウンド・ゼロ(世界貿易センタービル跡地)、自然史博物館などに行ったと言う。

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再開発中の世界貿易センタービル跡地。

ニューヨーク観光を楽しんだ後、松ヶ谷さんら3人はデイトンに入った。2回目の参加のため、少し慣れてきて、買い物としては、真空管、QST誌などで紹介された製作記事のプリント基板、高圧コンデンサ、V/UHF用のパーツ類、インチサイズのコネクタ、その他、友人からの頼まれものなどを購入した。

[ノートパソコンを持参]

松ヶ谷さんは、2回目はノートパソコンを持参して、スカイプを使って米国から日本の友人と会話した。「現地デイトンのホテルは進んでおり、無線LAN経由で無料でネット接続が可能であった」と言う。そのため日本にいるときと全く同様にEメールのチェックができた。また、個人ツアーでデイトンを訪れ、別のホテルに滞在していた、同じクラブ(名古屋DXクラブ)の仲間ともスカイプで打ち合わせを行い、「ハムベンションの会場内で合流できた」と言う。

松ヶ谷さんがスカイプを導入したのは比較的早く、「これは便利だ」と無線仲間に次々に勧めた経験がある。デイトンに入る前に宿泊したニューヨークのホテルでも、有料ではあったがネット接続が可能で、ある日の午後、日本にいる友人をスカイプで呼んだところ、「こんな朝早くから何してるの?」と返ってきた。それもそのはず日本は朝の4時であった。「ごめんごめん、ココはニューヨークなんだ」と答えた。

[フリードリヒスハーフェン・ハムラジオ]

松ヶ谷さんは、2007年にも3年連続で、デイトンに行くつもりにしていたところ、残念ながら都合がつかなくなった。その代わりに、2007年は、毎年6月にドイツ・フリードリヒスハーフェンで、開催されているヨーロッパ最大のアマチュア無線の催事である「ハムラジオ」に行くことにした。

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ハムラジオの会場であるメッセ・フリードリヒスハーフェン。

メンバーは、石黒さん、松ヶ谷さんの奥様(JG2DXP)に加え、大垣博計(JA2AO)さん、船橋毅太郎(JA2AEV)さん、中井和繁(JA2OMM)さんの合計6名だった。格安ツアーが企画されているデイトンと異なり、フリードリヒスハーフェンに行く日本人はまずいないので旅行会社によるツアーはない。そのため、松ヶ谷さんらは、インターネットを使って自分たちでホテルや列車を予約したという。

[列車で移動]

空の足は廉価なエミュレーツ航空を予約した。ただし日本からドイツへの直行便ではなく、往路も復路もUAEのドバイ経由の便となった。まず、往路はドバイ経由でフランクフルトに飛び、フランクフルトからフリードリヒスハーフェンまでは鉄道の旅を選んだ。ちなみにフリードリヒスハーフェンはドイツ南端に位置し、スイスやオーストリアとの国境近くにある。途中アルムで乗り換え5、6時間の旅であった。

フランクフルトからアルムまでは、ドイツの新幹線であるICEに乗ったが、仕事で長い間スイスに住んでいた経験があり現地の事情に詳しい船橋さんが交渉して、追金なしで2等車から1等車の個室にチケットを換えてもらった。車内ではビールまでサービスで出てきたと言う。

フリードリヒスハーフェンのホテルはネットでは良いところが見つけられず、主催者に頼んで予約を入れてもらったと言う。ペンションのような小さなホテルだったが何ら問題はなかった。お目当てのハムラジオはデイトン・ハムベンションと同様、金土日の3日間開催で、松ヶ谷さんらは金曜、土曜はフル参加した。デイトンではジャンクを積み重ねて、見た目無造作に展示してあるブースが多かったが、フリードリヒスハーフェンではジャンクを扱うブースでも品物を整然とならべてあり、「米独の人間性の違いを感じた」と言う。

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会場内のアイコムブース。

[買い物]

ハムラジオで松ヶ谷さんが購入したのは、精密なピンセットや鉗子などの工具類、LCメーター、書籍、高圧コンデンサに、日本では滅多に手に入らないノイズダイオードであった。「特にV/UHF用のパーツや測定器類に関しては、デイトンよりフリードリヒスハーフェンの方が種類も量も豊富にあった」と言う。

松ヶ谷さんらは、3日目の日曜日に会場を後にし、次の訪問地であるスイスに向かい、国境のボーデン湖を船で渡ってスイスに入国した。湖畔の税関での入国審査は簡素で、米国への入国時とは大きな違いがあった。スイスでは、ルツェルン湖のほとりの高台にあるホテルで2泊した。「話には聞いていたが、アルプスを北側から眺めるここの絶景には圧倒された」と言う。このホテルも、松ヶ谷さんらがネットで探して予約を入れたところだった。

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宿泊したホテルの窓から見た、ルツェルン湖とアルプス。

復路の航空機はチューリッヒから搭乗した。途中、乗り換えのUAEで18時間ほど時間があったので、ちょっとした砂漠観光を行ってから日本行きの便に搭乗した。「ドバイは近代化が進んだ大都会であったが、一歩郊外に出ると、砂漠と道路と電柱しかない風景が延々と続いていた」と説明する。

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UAEでの自由時間に参加した砂漠ツアーの一コマ。(JA2DJH石黒さん撮影)

[留守宅]

ハムラジオにも、松ヶ谷さんはノートパソコンを携えて行ったが、Eメールのチェックやスカイプ以外に、もう1つ大きな目的があった。それは、自宅の玄関先に設置した監視カメラで、来訪者の様子をインターネット経由で監視することだった。もろちん、四六時中の監視はできないので、画像に変化があるとシャッターが切れ、静止画で保存する仕組みを作った。その保存された静止画を毎日、旅先でチェックした。画像には、「郵便物を配達してきた郵便局員や、訪問販売員などが写っていた。また日々の津市の天気も分かった」と話す。

こうして合計9日間の旅を楽しんだ。松ヶ谷さんは、「来年もまたデイトンに行きたいが、フリードリヒスハーフェンにも行きたい」と抱負を語る。加えて、「一度海外に出ると癖になるが、この歳になってもまだまだ新しい道が開けるんだ。リタイア後でも積極的に出てみるべきだ。」と熱く語る。