[35年のハムライフ]

関森さんは、「私が仕事とハムを両立しつつ過ごしてきた35年間と少年時代からのSWLは、楽しいものだったが厳しくもあった。その間、電波の世界、ハムの世界の様相は大きな変化を遂げた。キング・オブ・ホビーと言われた昨今のセレブご用達の趣味も普遍化し、我々でも楽しめるようになったのは一大進歩だった。」と語る。「その中で、自分がHF帯よりUHF帯まで運用、楽しさを広く体験し、各々の特徴を掴めた事は大きな収穫であった。さらに常置場所、陸上、海上、上空、衛星と幅広く運用できたことは幸せの一言に尽きる。これもご協力いただいた方々のお陰である。」と個人局開局後の35年間を振り返る。

関森さんは現在、144MHzのSSBモードをメインにしながら、HF帯も毎日運用している。「144MHzSSBは入門者から熟練者までハム社会に広く認知されて発展し、運用人口も多いのは心強い次第です。」「かつて島伊三冶(JA3AA)さんが、1994年に開催されたITU京都全権委員会議の会場で、展示されていた2mのリグについて来場した外国の役員に説明し、144MHzSSBのハード、ソフト両面の発展は日本独特のものでありルーツであり文化であると、返答された。これは日本の技術力の高さ表す誇りそのものであり、その言葉を守るのも我々の責任と感じる。」と話す。

[おいでやす・なにわ大会を成功させたい]

そんな中、関森さんの今年の課題は、「おいでやす・なにわ大会」を成功させることである。これは、1973年に第1回西日本大会が大阪府吹田市で開催され、その後全国大会に統合されて今年で第42回を迎える「全国2mSSB愛好者の集い」の愛称である。関森さん達にとっては今回で3回目の主催となり、今年は大阪市で9月6日に開催されることが決まっている。「この大会の由緒ある伝統を受け継ぎ、全国の愛好者の親睦を益々深め、ひいてはアマチュア無線の活性化に繋いで行きたい。」との熱い思いを語る。

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おいでやす・なにわ大会のQSLカード。

毎年、全国各地で持ち回り開催される「全国2mSSB愛好者の集い」は、ここ数年、ハム人口の減少もあって、参加者数が200名前後に落ち着いており、全盛時とは比較すべくもないのは事実。しかし、昨年2007年の広島大会では、開催地のPRや実行委員会の努力によって、参加者数が280余名まで増加した。毎年、この大会に参加する原昌三(JA1AN)JARL会長も「これほど144MHzSSBが活況とは驚いた。」と話したという。「本年の大会の実行委員会メンバーは、島伊三冶大会委員長を中心に、一生懸命努力しています。私も副大会委員長を仰せつかり、現在全国に呼びかけて、是非多くの方にご参加をいただき、盛会にしたいと思います。」と関森さんは話す。

[2mの今後のありかた]

144MHz帯は「2m」とも言われ、固定局にモービル局に長い間慣れ慕われてきた。過去には「入門、初心者向き」と言われる時代があり、メジャーなバンドでなかったこともあった。また、FMモードにおける一部の局のマナーや、チャンネルの争いもあって、必ずしも評判が良くなかった時代もあったが、今日のSSBの運用では様相は徐々に変わってきている。SSBにおいても初めの頃は、アワードハントに熱中した一部の移動局のQSLカードの発行に誤った運用もあったが、それらも時代と共に淘汰されて、現在は「そのままHF帯のQSOに通用する立派な運用がされている。」と関森さんは自信を持って語る。

「さらに、最近は50W出力で快適に運用すべく3アマを取得する局が増えたこと、また逆にQRP運用を楽しむ局がいるのも好ましい現象である。加えてCWやSSTV等、各種モードにトライするとさらに興味がわくため、総じてアマチュア無線の活性化に向かえば幸いである。」と関森さんは述べる。

[アンテナの思い出話]

144MHzでは八木アンテナを使った場合、同じ程度の430MHz用八木アンテナと比べると、フロントゲインは少ないものの、ビームパターンがシャープでないため使いやすい。「受信感度の不足分は、ローノイズプリアンプの使用により感度向上が期待できる。」と関森さんは言う。

また、「10m程度の高さに上げた2段GP(グラウンドプレーン)アンテナと10W出力で約50kmの到達距離があることも144MHzのメリットである。なお、最近の5/8ラムダのGPアンテナには6〜8dBの利得があって、設置した地上高にもよるが、到達距離は飛躍的に伸びるのでお勧め。このアンテナを設置する局も増えている。」と話す。

関森さんは「アンテナには忘れられない苦い思い出がある。」と続ける。それはマンションの屋上に設置した関森さんのアンテナが、近くの寺院や淀川の堤防をねぐらにする椋鳥やひよ鳥の一時集合する格好な止まり木にされてしまった。そのため付近が汚染してマンションの入居者や、周辺の住民からクレームが出たため、やむなくアンテナを撤去する羽目になったことである。

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椋鳥の止まり木にされた関森さんのアンテナ。

「これらは我々ハムの天敵である。野鳥にはあらゆる駆除方法を試したが効果はなく、お手上げで対策はあきらめた。」と話す。「最近の住宅事情からアパマン・ハムが増えているが、こんな事例もあるので、電波障害を含めて他の入居者に迷惑をかけないよう注意して、友好関係を保つべきである。」と関森さんはアドバイスする。

「最近の2mリグ」

「2mの運用に使用するリグは、1台で3台分の役割を果たすトリプルバンダー機がお勧めである。中でもアイコムIC-910Dは、今まで使ったリグと比較すると総てにおいて優れていた。それでも、このリグといえどもオプションの高安定水晶の内蔵は必須である。また、移動運用時には、自分の経験からして、外付けのキャビティ型フィルターなどを使って混信抑圧対策を行うことも必要である。」と関森さんは話す。

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144/430/1200MHzマルチバンド 50Wトランシーバー IC-910D。

[2mの交信距離]

「2mマンにとって、通常の交信に使用するのに理想といえるアンテナは、八木アンテナを地上高15m程度に設置し、360度直読コントローラーで回転するものが、現在の住宅事情を考慮すると最高のものであると思う。」「フロントゲインが18〜20dB程度あれば、ビームの威力は素晴らしく、関西からでは、Eスポが出なくても50Wで北海道南部や奄美大島と交信が可能である。」と関森さんは言う。

「VHF帯の八木は、エレメント数が増えると利得は上がるが、その分ビームパターンがシャープになって、数度のズレが問題となるほど方向調整が微妙になる。また多段スタックにした大型アンテナの設置は近隣に威圧感と危険を感じさせることと、受風面積が大きいので、台風時には60ミリパイプも曲げられる自然の猛威を実感した。」と関森さんは実際に大型アンテナを使っていた実体験に基づいて語る。

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関森さんが使用していた9エレ八木の4列2段スタック(下段)。赤いバルーンは鳥よけ。

「年に数回しか体験できないが、Eスポに巡り会えばアンテナの大小はあまり関係なく、円偏波状態で飛び込んできて、RS59++の交信が体験できる。」「Eスポはミニパワーでも交信可能ではあるが、テクニック、パワー、それにアンテナが優れていた方が、より長い時間交信が可能なので、交信を少しでも長く続けるためには、まずは交信テクニックを身に付けること、次にパワーアップをお勧めする。」とアドバイスする。

「他のバンドとリグ」

これまでの関わり合いで144MHzSSBが話しの中心となったが、関森さんは、HF帯も含めて他のバンドでも幅広く運用している。「最近入手したIC-7700はお世辞を抜きにして待つこと久しい200W機であり、デュアルワッチさえ必要なければ、機能、性能は最高である。」と感想を述べている。「今後は、できるだけオールバンドでワールドワイドな交信を楽しみたいと思うし、これは自分にとって最後のリグになると思うので大事に使用したい。いくら良い設備を持っていても、電波を出す、すなわちアクティブに運用しなければ、それは死蔵である。」と関森さんは感想を述べている。

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関森さんのシャックで活躍するIC-7700。

「最近のハムの高齢化に対策を」

現在、日本は高齢化社会を迎えている、アマチュア無線家も例外ではない。「これら高齢者の方々のための配慮は大切と思う。アマチュア無線の運用は老化防止、病後のリハビリテーションに向いていると思う。」「もちろん専門医のアドバイスも必要ですが、大切なのは本人の「自覚」です。かたやハード面では高齢者に操作し易いリグの開発や、ソフト面では年齢別ハンデを加味した参加しやすいアワード、コンテストのルール改正を要望したい。」と語る。

さらに、「年齢がコンテストナンバーであるJARL主催オールアジアコンテスト等で、90歳を超える様な交信相手の年齢を耳にすると、自分はまだまだがんばらないといけないと思う。」と関森さんは続ける。「また、高齢者と言えどもパソコンに取り組み、インターネットやメールの操作をできる様になって欲しい。」「有資源である周波数使用を許された我々は有効、適切にこの特権を活用しなければならない。」最後に、「まだまだ言い足りないことは多いが、癒され、優しく、温かい交信を行うキング・オビ・ホビーであるアマチュア無線は、永遠に不滅であり、生涯の友としたい。」と関森さんは結ぶ。 (完)