1.はじめに

No.144ではRTL-SDRを紹介し、No.146では0~30MHzを100~130MHzにするRTL-SDR用のコンバータを紹介しました。無線で一番使いたい周波数が受信できないためでした。今回はもうひとつの方法「ダイレクトサンプリング」を用い、USBドングルで直接0~14.5MHzを受信する方法を試してみました。

ブームは過ぎ去っている感もありますが、3台目のドングル末弟を紹介します。同じスタイルとして、写真1のようにまとめてみました。

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写真1 このように小型ケースに入れてまとめました。

2.回路

私が紹介するよりも、WEBで検索すると様々な情報が得られます。今回紹介するのも前回と同じ写真2のUSBドングルで、RTL2832Uを使用しているものです。

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写真2 使用したUSBドングルです。

ダイレクトサンプリングの場合は、直接ICに信号を入力するという改造をします。図1は回路というよりも改造の概念図になります。RTL2832Uの入力にダイレクトにアンテナを接続するという改造で、C33とC34がその入力になります。入力のトランスはFB801のトリファイラ巻きを使用しています。これはICの入力インピーダンスが高くマッチングのためですが、このトランスだけでは補正には足りないようです。また、不平衡から平衡への変換も行っています。トリファイラにする必要もないので、10:1とかの巻き方にした方が良いかもしれません。

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図1 概念図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

入力には50Ωで計算した、14.5MHzのLPFを付けました。14.5MHz以上は受信できないようですのでLPFを入れましたが、あまり意味はないようです。

3.改造

「SDR ドングル ダイレクトサンプリング」のようにして検索すると、沢山の改造例が出てきます。私も参考にさせて頂きました。

まず、マイナスドライバーでこじると、写真3のように簡単にケースが開きます。基板を取り出し、写真4のようにICの入力部分をカッター等でカットします。これでIC入力がチューナICから切り離されます。そして写真5のようにC33,C34にFB801によるトリファイラコイルを取り付けます。このコンデンサにコイルを付けるのが結構トラブルになるようです。コンデンサが小さいためハンダこてを少し当てただけで外れてしまうのです。実は2台試して2台共に外してしまいました。同じ値のチップコンデンサを探して付けましたが、実はどちらかにコンデンサが残っていれば片方はショートでも構いません。図1からすると当然なのですが、後から気が付きました。それどころか、2個共にスルーしても大丈夫なのかもしれません。これに写真6のようにLPFを付けました。コイルはSMDタイプで、基板の裏側にあります。

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写真3 簡単にケースを開ける事ができます。

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写真4 中央のやや上がカットしたパターンです。ここがICの入力になります。

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写真5 C33,C34の手前側にコイルをハンダ付けします。スズメッキ線が目立ちますが、中継に使おうとしていたものです。最終的にはありません。

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写真6 LPFを取り付けたところです。FB801トリファイラのアース側は黄色の塗装を剥がしてハンダ付けしています。

本機は周辺機器になりますので、USB-Bを使うのが自然です。USB-Bのメスコネクタを購入し、写真7のようにカラーを少々強引にハンダ付けしてケースに固定できるようにしました。USBドングルからはUSB-Aコネクタを外します。コネクタをキレイに外して再利用などと考えず、まずニッパで部品面からコネクタの足を切ってしまいます。残りはシールド部分の2箇所ですのでハンダコテで簡単に外せます。ケースの大きさに余裕があれば、コネクタを外す必要はないのかもしれません。

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写真7 USB-Bコネクタにカラーをハンダ付けしました。

今までの2台と同様にクールスタッフで放熱をしていますが、ダイレクトサンプリングの場合には消費電流は150mA程度です。どうして少ないのか良く解りませんが、今までよりも控えめな貼り付け状態となっています。

写真8がタカチ電機工業のYM-90に穴あけをしたところです。内部の配線が完成したところが写真9になります。USB-Bコネクタの配線が写真10になります。これはNo.144と全く同じです。写真11のようにシールを作り貼り付けました。

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写真8 タカチのYM-90に穴あけです。

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写真9 内部の様子になります。

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写真10 USB-Bコネクタの配線です。黒い帯は放熱用のクールスタッフです。

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写真11 パソコンで作ったシールです。

ところで、写真12のミニサーキットのTC4-1TG2+を用い、写真13のように取り付けてUSBドングルのままとしたバージョンも作ってみました。LPFはありませんが、ほぼ同じ性能です。

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写真12 ミニサーキットの「TC4-1TG2+」です。

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写真13 USBドングルの中にまとめたバージョンです。

4.ソフト

ソフトは以前からHDSDRを使っています。ダイレクトサンプリングをする時には、ソフトのインストールの他にExtIO_RTL.dllを同じホルダーに入れておく必要があります。そして、HDSDRを立ち上げる時に選択するようにします。ダイレクトサンプリングはExtIO_RTL.dllで、他はExtIO_RTL2832.dllです。これらソフトは検索して探したもので、場所のメモがありません。検索ですぐに見つかるはずです。

また、HDSDRを立ち上げた時に「ExtIO」をクリックし、IまたはQに設定します。どちらか受信のできる方にしますが、この場合は「I」になるはずです。この作業をしないと、ソフトは動いているように見えても全く受信できません。

5.使用感

No.146のコンバータ方式に比べて感度は40dB程度低くなりました。7MHzでは特に不便もないのですが、入力にRFアンプを入れても良いのかもしれません。試しにNo.146と同様に入力に7MHzのBPFを入れてみたところ、ピークを捉えることができませんでした。入力インピーダンスが50Ωよりも相当高いようです。試しに測ってみたのですが、リターンロスブリッジでは全く測れませんでした。LPFは50Ωで設計せずに、インピーダンス変換を兼ねて作るべきかもしれません。