1.はじめに

No.131では、夏の季節ものである「ペットボトルクーラー」を紹介しました。もう一つ、冬の季節ものである「COメータ」は、この時には未完成でした。やっと一応それらしき値が測れるようになりましたので、何年もかかった写真1のCOメータを紹介します。なお、ペットボトルクーラーは、会社で夜勤をする時の必須アイテムになっています。

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写真1 このようなCOメータです。

COメータですので、冬の暖房使用時にどの程度の一酸化炭素があるのかを測るのが目的です。しかし、いわば「お遊び」で作ったものですので、命にかかわるような使い方は厳禁です。参考程度とし、いつもと同じ換気をお願いします。CO中毒等のトラブルが起きましても、私としては一切の責任は取れません。

2.COセンサ

MQ-7という型番のCOセンサを使いました。タイミングもあるようですが、秋月電子でもaitendoでも購入できました。良く解りませんが写真2のように、同じ型番でダイダイの樹脂ケースと金属ケースのタイプがあるようです。どちらも同じように使えます。図1のような接続で、センサのヒータを60秒間5Vとし、次に90秒間1.4Vとして繰り返します。そして1.4Vから5Vに上げる直前の値を読みます。つまり150秒に一回しか測定できせんので、周波数カウンタなどに慣れているとダルく感じてしまいます。目的がCOですので仕方ないのでしょう。

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写真2 COセンサのMQ-7です。どちらでも使用できます。

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図1 センサはこのように使用します。(※クリックすると画像が拡大します。)

このセンサを使うのに長い時間がかかった理由があります。最初に入手したCOセンサは写真3のような基板付きで、図2のような回路でした。VCCは切り離されておらず共通ですので、センサのヒータ電圧を切り替えるとは、私には読めません。何をどう試しても、それらしい値は測れませんでした。この回路の固定概念から抜け出せず、長い時間足踏みをしてしまいました。センサのデータシートを読んでも気体用のセンサなど使った事も無いため、ほとんど理解不能でした。最近になり少しずつ解って先に進めるようになり、それらしき値も出せるようになりました。図2の回路は他のセンサと同一の回路なのでしょう。しかし、同じように疑問符の付くユニットは、何種類かあるようです。うまい具合に使う方法があるのかは分かりません。

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写真3 最初に入手したCOセンサのユニットです。

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図2 最初に入手したCOセンサの回路です。(※クリックすると画像が拡大します。)

3.回路

図3のような回路になります。LM317を使い、5Vと1.4Vのヒータ用電圧を作っています。タイマーと電圧のコントロールはAVRのソフトで行います。5Vにする直前にAVRのA/Dコンバータで電圧を測り、ppm値を算出してLCDに表示します。

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図3 回路図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

アラームを出すために、圧電ブザーを付けています。もちろんCOが一定値以上の場合に危険を知らせるのが目的です。

このような目的ですので、長時間というよりも常時動かしておくものと考え、9V1.3AのACアダプタから電源を取るようにしました。5Vを作るため9Vを入力としました。7.5Vでも8Vでも構いませんが、入手は難いと思います。明らかに電池では不都合ですし、自分で作った電源は最も危険と思っているため、ACアダプタになっています。

4.作製

センサであるMQ-7の足は写真4のように、円形で3本の2列です。これは7ピンMT管のソケットにピタリ一致します。そこで写真5のような基板用の7ピンソケットと、ブレッドボード変換用の基板をaitendoで探しました。不要なピンは写真6のように抜きましたが、抜く必要もありませんし、間違って入れてしまう心配もありません。センサの部分を組み立てると写真7のようになります。最近このようなセンサ用の基板も見られるようになりました。わざわざMT管用の基板を探す必要もなさそうです。もちろんセンサを交換する事がないのであれば、MT管ソケットも不要です。何個がセンサを入手してしまうと、試しに使うのにソケットが便利となります。

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写真4 COセンサの足はMT管と同じです。

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写真5 基板用のMT管ソケットと、変換基板です。

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写真6 ソケットで使用しないピンは抜いてしまいました。

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写真7 センサの部分を組み立てた様子です。

基板は図4の実装図を作成し、その後でハンダ付けしました。センサの変換基板は写真8の下側にあるピンソケットで受けます。センサ基板を入れて動かすと写真9のようになります。ハンダ面は写真10のようになりました。

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図4 実装図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

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写真8 この下側の2列のソケットでセンサを受けます。

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写真9 センサ基板を入れるとこのように測定できます。

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写真10 基板のハンダ面の様子です。

CPUを動作させた時に、センサのヒータ電圧がH表示で5V、L表示で1.4Vとなる事を確認します。センサのデータシートでは±0.1V以内となっていますので、これを外れる時は抵抗の値を調整します。次にストーブ等を使いながら動作チェックをします。もちろんですが、濃度の高い状態のテストは不可能です。

表面には基板と同じサイズのスモークのアクリル板をネジ止めし、表示を見やすくしました。センサの部分は丸穴を開けています。裏側にも同じサイズのアクリル板を入れ、ケースのように立体的にしています。最近はこのようなアクリル板が容易に入手できますのでとても助かります。写真11のように樹脂製のカラーで接続しています。

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写真11 このように組み立てています。

5.ソフト

ソフトはBASCOM AVRで書いています。センサの電圧値から濃度(ppm)を計算するのですが、データシートを見ても計算方法がなかなか解りませんでした。ここにたどり着くまで時間がかかりました。図5はMQ-7のデータシートにあるグラフです。このグラフをエクセルに移し、グラフを書き直します。この時に近似式を表示し、それを元に計算式を作りました。結果だけになりますが、

濃度(ppm)=98.561×(RS/RO)-1.513

となります。

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図5 MQ-7のデータシートにある濃度対RS/ROのグラフです。(※クリックすると画像が拡大します。)

センサの抵抗にはROとRSがあります。そして、100ppmの時の値がROとなります。任意の濃度の時がRSになりますので、RS/ROは100ppmでは1となります。本来はセンサを100ppmに入れてROを測定しなくてはなりません。普通はそんな環境はありませんので、2kΩとしています。この2kΩでどの程度の精度があるのかは良く解りませんし、異なると大きな誤差となります。そのような意味でも、前述のように測定値を信頼してはなりません。決して生命に係わるような使い方はしないで下さい。

アラームとしては20ppmで警報音を出すようにしています。これは環境基準として、連続する24時間における1時間の平均は10ppm以下であることとされ、連続する8時間における1時間の平均は20ppm以下であることとなっているためです。10ppmも試したのですが、少々アラームが出過ぎたため20ppmにしました。このあたりの設定については、何が良いのか解りません。アラームはリセットがないため、一定値より下がらないと止まりません。少し不便な気もしますが、基本的には危険な時には鳴りっぱなしで良いかと思います。

150秒に1回しか測定できませんが、作った本人としてはそれでは面白くありません。つまり退屈です。測定の様子が解るようにLCDにはL/Hの秒数と、その時点でのA/D変換値を表示しています。測定の状態がざっと把握できます。LCDには写真12のように表示します。Hつまり5V時の30秒で、A/D変換の結果が474です。この表示は1秒毎に更新します。計算の結果0.39ppmという結果ですが、これは150秒に一回の更新になります。A/D変換値に深い意味はありませんが、長い間の試行錯誤の結果となっています。

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写真12 このような表示をします。

ソフトについては、ここに置きます。BASCOM上で貼り付けるか、拡張子をTXTからbasに変えれば直接BASCOMのファイルとして読むことができます。

ソフトダウンロード

なお、PCの環境はWINDOWS XPで、BASCOM AVRの製品版 VER.1.11.9.8を使ってコンパイルしています。書き込みはAVR ISPmkII ですが、基板のISP端子との接続には自作の変換ケーブルを使っています。これ以外の環境についての確認はしていません。

6.使用感

暖房器具未使用では0.5ppm前後だったCOが、石油ファンヒータを使うと1ppm近くに上昇しました。更に少し離れた台所でガスコンロを使うと、2~3ppmまですぐに上昇する事が解りました。この後は自然に換気されるためか、急には上昇しませんでした。台所の換気扇を回すと、その効果が良く解る位に下がります。たぶん家の構造がスカスカで、床下から隙間風が良く入って来てくれるのでしょう。これほど離れた位置の換気扇で変化があるとは知りませんでした。アラームの出る20ppmまでは簡単には上がりませんが、COの増減が手に取るように解ります。もちろん今までと同じように換気を行う範囲の中で試しています。決して換気を疎かにしてはいけません。

10月末にもなると、那須方面では寒さが増します。そこで気が付いた事があります。年越しの灯油は使うなと良く言われます。この理由がピンと来なかったのですが、どうやら圧倒的にCOが増えるようです。春先の実験では前述のように石油ファンヒータでは1ppmには上昇しなかったのですが、秋になって最初の暖房では2~3ppmまで簡単に上昇してしまいました。そして不安定に上昇し10ppm以上まで上がってしまいました。古い灯油は不完全燃焼しやすいという事なのでしょう。しかも、この灯油はファンヒータに入れたままでした。このようなモッタイナイ精神は、決して良くないようです。使用が浅く解っていない事も多いのですが、このような気づきがCOメータを作った目的の一つでもあります。

他に正しい値を測れるCOメータがあれば、それに合うように調整ができますが、そのような環境はありません。従って校正どころか、それなりの値になっているのかも良く解っていません。もちろん最初から承知している事ですが、いろいろな意味で過信は禁物です。

少々困ったのが、CO以外にも反応する場合がある事です。身近にある写真13の発毛促進薬を使用すると、アラームが鳴る20ppmを軽くオーバーしてしまいます。何に使うのかは気にしないで下さい。この他にエタノールにも反応しますので、アラームのテストには使う事ができました。

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写真13 これを使うとアラームになってしまいます。

繰り返しになりますが、命を預かるような場面には絶対に使用しないで下さい。換気は今までと同様に行って下さい。

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