1.はじめに

No.151では0~1kΩを測る、出力インピーダンスメータを紹介しました。使い勝手や精度は別として、このようなモノ作りをすると知識が向上するように思います。高周波では概ね50Ωを扱うのですが、前回の1kΩMAXでは「まあ50Ωくらいだろう」程度ならまだしも、「かなり低そうだ」しか解りません。これは大きな問題です。

そこで写真1のように、同じ回路で100Ωバージョンを作ってみました。VRの中央が50Ωになりますので、50Ωからどの程度ずれているのかをチェックできる事になります。つまり、高周波を扱う場合には使いやすい値です。もちろんjXを測るような高級な機能などありませんし、送信機の出力インピーダンスなど測れるはずもありません。まあ10mW程度であれば測れるかもしれません。

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写真1 このような新バージョンです。

写真2が2台並べて写したものです。左側が今回作ったものになります。

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写真2 前作と並べたところです。

2.回路

基本的にはNo.151の回路とほぼ同じです。図1の回路となっています。2SK241を使ったソースホロワで、トータルするとゲインは1以下です。増幅が目的ではなく、インピーダンス変換のために入れています。もちろん、VRは100Ωに変更しています。Bカーブを使う事で、目盛板に概ね合うようにしています。

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図1 回路図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

3.作製

作り方もケースもNo.151と同じです。写真3が、タカチ電機工業のYM-65に穴あけをしたところです。写真4が配線する直前の様子です。内部を比較しながら作っていますので、写真5のようにほとんど同じです。同じように貫通コンデンサを使って、電源のワイヤーを生基板上に固定しています。逆に言えば最初に作った時の反省点は特になく、理想的には程遠いとしてもほどほどの出来だったという事でしょう。一番気になるのが100ΩVRへの配線です。スイッチを含むルート的に、どうしても多少長くなってしまいます。これは当然インダクタンスになりますので、周波数が高くなると影響が出てきます。

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写真3 ケースの穴あけをした様子です。

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写真4 VRや生基板をセットし、これからハンダ付けをするところです。

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写真5 このように内部はほとんど同じです。

VRは写真6の右のような、1個50円の安価なローレット式を使っています。電流を流す使い方ではありません。写真6の左のような小型のVRを使う方法もあると思いましたが、それほどの違いはないようにも思えます。まあ、小さい方が高周波的に有利な事は間違いないでしょう。但し、回転角度の合う目盛板が市販にありませんし、1個50円であれば入力過大で焼いてしまっても打撃は少ないと思います。

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写真6 使ったのは右のVRですが、小さい左の方が有利です。

4.測定

もちろん前回と使用方法は同じです。測りたい発振器等を入力に接続し、出力にはレベルメータを接続します。押しボタンを押さずに出力のレベルを読みます。次に押しボタンを押しながらVRを調整し、先ほどよりも6dB下がるようにします。その時のVRの目盛が発振器の出力インピーダンスになります。目盛は0~100ですので、そのまま×1で読む事ができます。もちろん、0と100付近は誤差が大きくなります。

さて、SGの出力は50Ωですので、これに細工をしてインピーダンスを下げて試しました。写真7のような1:4のマッチング用のユニットや、50Ω⇔75ΩのマッチングPADを使って試したのが表1になります。完璧とは全く言えませんが、HF帯を中心にザックリと測る程度には十分なツールになっていると思います。周波数が1MHz以下で低く出てしまうのはツールの方に問題がありそうです。高くなると、どちら側に問題があるのか、あるいは両方に問題があるのか解りません。

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写真7 トロイダルコアを使ったマッチング用の冶具や50Ωと75Ωの変換PADです。

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表1 測ってみた結果です。(※クリックすると画像が拡大します。)

ところで、このままスイッチを押さなければ、超が付く簡易式のFETプローブにもなると気が付きました。そこで、ついでですが周波数特性をスペアナ+TGで測ってみました。測定結果1が0~500MHzを測ったもので、100MHz以上では難がありそうです。0~100MHzは測定結果2のように問題はなさそうです。低い方は0~100kHzが測定結果3です。10kHz以下は無理ですが、こんな周波数を測る事もないでしょう。ザックリ測る程度のプローブと考えれば十分に使えそうです。25MHzのSG出力を、本機を経由してスペアナで観測したところが測定結果4です。直接スペアナに入力したのが測定結果5ですので、スプリアスが増加する様子だけ把握しておけば、それなりには使えるかもしれません。入力レベルを上げると、更にスプリアスは増加します。もちろん十分とは言えない性能ですので、信号を追跡する程度でしょう。なお、スペアナには保護用のアッテネータを常時12dB入れています。

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測定結果1 0~500MHzの周波数特性です。(※クリックすると画像が拡大します。)

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測定結果2 0~100MHzの周波数特性です。(※クリックすると画像が拡大します。)

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測定結果3 0~100kHzの周波数特性です。(※クリックすると画像が拡大します。)

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測定結果4 25MHzのSG出力を本機を通して測ったところです。(※クリックすると画像が拡大します。)

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測定結果5 同じく、SGをスペアナに直結したところです。(※クリックすると画像が拡大します。)

5.使用感

これで50Ωと500Ωを中心として測る事ができるようになりました。このシリーズも完全に終了と思いますが、良い勉強になりました。出力インピーダンスを測る方法はいくつかありますが、このような方法を含めて引き出しを持っていると、役立つ事もあると思います。