1.はじめに

2016年にQRPクラブの60周年行事として、21MHz用のDSBトランシーバがクラブ内で頒布されました。局発に21.25MHzのクリスタルを使うVXOですので、どうしても可変範囲が限られてしまいます。もちろん作りやすくする構成ですので間違いではありませんが、外部VFOも・・と思ってしまいます。

そこで写真1のように専用のDDS VFOを作ってみました。DDSには写真2のような中国製のAD9850のユニットを使用し、安価にまとめてみました。21MHz用ですが、アンプのユニットを交換し、ソフトを書き換える事でどのバンドにも対応できるように作っています。7MHz用のユニットも作製してみました。但しダイレクトコンバージョン用のVFOですので、このままではスーパーには使用できません。つまりLCDに表示する周波数と発振する周波数が常にイコールになります。ソフトの書き換えができれば、スーパー用にするのは容易です。

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写真1 このようなDDS VFOです。

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写真2 中華製のDDSユニットを使いました。

2.回路

中国製DDSユニットをAVRのATmega168Pで制御するという、図1のような回路です。今まで何回か作っていますが、これらのDDSと基本的には何も変わりません。なお、このDDSユニットには「いわく」があり、表面実装のインダクタを交換したり、200Ωの抵抗を外したりする方がレベル的には有利になります。ただ、それでもレベルは低くアンプは必要になりますので、DDSの改造はしない事としました。レベル的には出力アンプに依存する方法です。その方が作りやすいと考えたからです。

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図1 回路になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

DDSの出力を21MHzで測定すると-11dBm程度でした。JP60の外部VFO入力レベルが+6dBmなので、出力のアンプはこれを17dB増幅します。入力のVRを調整する事でレベルを合わせられるようにしていますので、幅広い出力の調整ができます。

他バンド用として7MHz用のアンプも作っていますが、回路は図2のようになります。基本的には同じ回路で、コイルとコンデンサ以外は何も変わりません。

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図2 7MHz用のアンプになります。(※クリックすると画像が拡大します。)

3.作成

ロータリーエンコーダは秋月電子で購入した写真3で、メカニカル式の一回転24パルスでクリック付きです。この内部を開けてクリックを外したものを2個使っています。この工作は行ってみたところ実に容易でした。写真4が内部を開けたところで、クリックを作るスプリングをニッパで切断するだけです。これで一回転24×4=96ステップの4倍モードが使えるようになります。kHz用と10Hz用の2個を工作しましたが、10Hz用といっても、実際には25Hzステップで動かしています。トータルのバランスとして10Hzでは使い難い感じでした。少々中途半端なので20Hzでも良いかもしれません。最近ではクリックなしのロータリーエンコーダの方が安く入手できますので、わざわざ余計な工作をする必要はありません。

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写真3 クリックの付いたロータリーエンコーダです。

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写真4 このように簡単に中が開けられ、改造する事ができます。

メインの基板は図3の実装図を作成してから作っています。今まで同じようなDDSを何台も作っていますが、基本的には全く同じです。写真5のようにLCDやロータリーエンコーダに接続して動作チェックをしました。LCDは16文字×2行ですが、パネルのレイアウトを考えて小型のものを使っています。写真6のように、アルミのL型アングルでケースに固定するようにしました。パネル面にネジ穴が出ないようにするためです。

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図3 メイン基板の実装図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

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写真5 バラックで動作チェックをしました。

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写真6 LCDはこのようにアルミLアングルで固定しました。

写真7が出力のアンプユニットです。図4の実装図を作成してからハンダ付けをしています。7MHz用は同じですが図5になります。写真8のように交換できるようになっています。アンプユニットは、BNCコネクタに直付けしています。基板の電源コネクタを外し、BNCコネクタのネジを外すことでアンプごと交換できるようにしています。このように、7MHzのトランシーバ用に簡単に変更できるわけです。もちろん他のバンドでも可能です。

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図4 21MHz用の出力アンプの実装図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

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図5 7MHz用の出力アンプの実装図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

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写真7 交換可能な出力アンプのユニットです。

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写真8 このように固定していますので、交換が容易です。

ケースにはタカチのYM-150を使いました。JP60本体と同じシリーズですので、上に乗せても違和感がありません。容積的にはもっと小型でも入るのですが、LCD表示やTUNEのツマミを考えるとちょうど良い程度と思います。ケースにはLCD表示用の穴を空けます。私はケースの内側に線を描き、ハンドニブラで外から開けています。このケースは黒のつや消し塗装ですので、穴あけ後にヤスリで仕上げても写真9のようにアルミの地肌が目立ってしまいます。そこで、隠すために写真10のPOSCAを使用します。極細のものが使いやすいでしょう。実は一番上のを使っていたのですが、JN3DMJさんに「極細もある」と言われ揃えたものです。ケースの内側から補修し、最後に外側からも仕上げると写真11のように、同じような質感になります。普通の油性マジックではテカリが出てしまい、違った質感になってしまいます。このようにして写真12のようにケースを加工しました。全く関係ありませんが、赤のPOSCAはラジケータの針に塗るのに便利です。

内部に基板等をネジ止めし、ハンダ付けをしようとしているのが写真13です。ケースのキズが付きやすいところには養生用のテープを貼っています。完成した内部は写真14のようになります。

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写真9 LCDの穴あけ後、このようにアルミの地肌が出てしまいます。

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写真10 黒のPOSCAを使って補修します。

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写真11 パネル面と同じような質感でできます。

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写真12 ケースの加工が終わったところです。

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写真13 基板間の配線を行うところです。

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写真14 完成した内部の様子です。

12Vを電源に使うと5Vのレギュレータがかなり発熱します。クリスタルオシレータにかなりの電流が流れるためです。そこで、念のためクールスタッフを用いてケースに熱を伝えるようにしました。写真15のようにベタベタ貼っていますが、もう少し貼り方を考えるべきでしょう。今はシールの付いた放熱器など、手軽に使えるものがあります。実装と発熱の状況を見て工夫してみて下さい。最初からクリスタルオシレータを交換してしまう方法もあります。

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写真15 少々熱を持つので、念のため放熱をしています。

4.ソフト

BASCOM AVRで作ったもので、以下のようなソフトです。決して上手なソフトではありません。ソフトでスタート周波数とMAX周波数、MIN周波数を設定しています。ここを変える事で、簡単に他のバンドに変更する事ができます。

ソフトダウンロード

なお、PCの環境はWINDOWS XPで、BASCOM AVRの製品版 VER.1.11.9.8を使ってコンパイルしています。書き込みはAVR ISPmkII ですが、基板のISP端子との接続には自作の変換ケーブルを使っています。これ以外の環境についての確認はしていません。

5.使用感

JP60に使用したところ、とりあえず受信だけですが問題は全くありません。JP60は写真16のようにジャンパーピンを設定し、外部VFOを使えるようにします。写真17のような感じになります。やはり周波数が直読できるのは、とても使いやすく感じます。ツマミ2個で同調をとるのは初めての試みでしたが、使い勝手もフィーリングもなかなか良いと思います。何しろ1個200円程度のロータリーエンコーダですので、2個使っても全く問題ありません。ステップを切り替える手法よりも使い勝手は良いでしょう。同調には小型のツマミを使いましたが、大き過ぎずちょうど良い感じです。

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写真16 JP60で使う場合は、ジャンパーピンの設定をこのようにします。

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写真17 JP60の上に乗せているところです。

DDSは125MHzの基準で動作します。しかし、この発振器が熱を持つために、多少のQRHズレもあります。ソフトで調整する事は可能ですが、QRH対策は発振器を交換した方が良いのかもしれません。