1.はじめに

最近数々のキットや部品で楽しませてくれるaitendoからは、各種のソフトウェアラジオがキットとして売られています。この中で一番高級機能なものを選び、数年前に購入していました。ようやく最近になって組み立てようとしたところ、該当キットの図面がサイトから消えている事に気が付きました。もちろん保存しておかなかった私がいけないのですが、図面の付いていないキットは注意が必要と思い知りました。これは困ったと思ったのですが、後継機と思われるキットもあり、この取説や回路と実体図を印刷し、比較しながら作ったのが写真1の中波、短波、FMのSDRラジオです。SDR=Software Defined Radio とかDSP=Digital Signal Processingラジオとか呼ばれています。

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写真1 このようにまとめたSDRです。

途中想像もしなかったトラブルがあり、大きくつまずきました。そのためモロモロの時間がかかってしまいました。

2.このキットについて

M6955(AKC6955)を使ったキットで、確か購入当時は「最強のDSPラジオ」と称していたと思います。写真2がキットに入っている全部品です。今でも似たようなキットがありリニューアルされているようですので、私のようなトラブルは多分無いと思います。この旧バージョンが、そのまま参考にはならないでしょう。しかし、どのように受信できるかは恐らく同じと思います。多分、最初に試作したような基板だったのでしょう。そのため、実は先に調べておくべき事がありました。

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写真2 入っていた全ての部品です。

私としては、周波数やバンドを表示するLCDを、基板の表示に従って取り付けただけでした。もちろん普通に見るような方向に付けるべき、という思い込みはあります。しかし、パラパラと意味のわからない表示をするだけなのです。これで悩み、相当な時間ストップしていましました。当然どこかでハンダ付けの失敗をしたと思っていました。ところが基板の作成ミスとしか思えないのですが、LCDは逆に取り付けるのが正解でした。

またソフト的には、中波は10kHzステップで周波数が変化するようになっています。しかし、日本では9kHz間隔で放送されていますので、ほぼ使う事ができません。これも後になって知った事でした。

今のキットは写真3のようなM6955のユニットを使っています。つまり基板の2階建てです。私の作ったキットは、直接本体の基板にハンダ付けするタイプで、これをまず自分でハンダ付けしました。

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写真3 今のバージョンでは、このようなM6955をハンダ付けしたユニットを使っています。

3.作製

このようにして、類似キットの回路図と見比べながら作ったものです。写真4がICのハンダ付けをしたところです。最初にSMDの部品をハンダ付けするのが鉄則です。他のハンダ付けを先にしてしまうと、基板の水平が保てずさらに難しくなってしまいます。このようにして、何とか全部の部品をハンダ付けしました。この時には回路図と実体図と全てつじつまが合っていると思っていましたので、何とか動くだろうと考えていました。ところが、前述のようにLCD表示が全くNGでした。受信はできるのですが、周波数どころかバンドもモードもわかりません。これでは不便で仕方がありません。どこかで間違えたと思い、さんざんチェックしましたが問題は見つかりませんでした。もちろんLCDのハンダ付けでブリッジでもしたかと、チェックも相当にしました。このピンの間隔が狭いので、疑うのは当然です。オシロで波形を見てみるとピンに信号は来ているように見えます。しかし、何かおかしいのです。そこでネットで調べてみると、同じように苦労された方が居られました。そして、LCDを反対にする事に気が付きました。しかし、これだけの足の数では、きれいに外す事はほぼ不可能です。仕方なくLCDの足をニッパで切断し、基板の部品面からハンダ付けしてしまいました。これはどうしようもありませんでした。その結果写真5のように、どうしようもないハンダ付けになってしまいました。苦労したのですが、これでようやく表示が出るようになりました。もちろん、普通はこんな不自然なLCDの取り付けはないでしょう。写真5の表示は上下反対ですので、17.81MHzと読み、ラジオジャパンを受信しているところです。

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写真4 最初に、ICのハンダ付けをしました。

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写真5 17.81MHzですが、表示が上下反対になっています。

バラックでテストしているところが写真6です。ぱらつく表示については、悩んでいた時のため写真が全て飛んでしまっています。本当は、うまく行かない時の状況こそ写しておくべきなのでしょう。しかし、実際にはトラブってしまうと余裕が無くなり写せません。

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写真6 基板の動作テスト中です。

基板だけでは電池などが固定されず不安定です。このままではワイヤーが切れてしまいそうです。そこでアルミ板の上に基板を固定し、写真7のようにまとめました。アンテナもイヤホンジャックでは使い難いので、BNCコネクタの入力としました。スピーカはダイソーで仕入れたケース入りのものを両面テープで貼っています。ちょうど良さそうな感じです。上下反対の表示だけはどうしようもありません。

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写真7 このようにアルミ板上に固定してまとめました。

4.使用感

このような経緯があり、試作段階の基板だったという印象は拭えません。中波は10kHzステップのため、ほとんど使用できません。短波ラジオとしては面白い感じです。LCDの表示が読めれば次の操作もわかります。SDRなのでチューニングする楽しみはないのですが、これでもかと言わんばかりに受信できます。もちろんLCDの表示が逆ですので、今ひとつの感じは否めません。このようなラジオなのですが、最新のバージョンであれば問題点も修正されているのでしょう。それであれば、面白いのではないでしょうか。

自分でソフトを作ってラジオを作るとか、無線機に応用するのも面白そうです。このICはI2Cですので、それ程難しい事ではなさそうです。今度試してみたいと思います。