1.はじめに

2019年10月13日に、名古屋で「東海ハムの祭典」が行われました。私も栃木県から行く準備をし、切符もホテルの予約も万全の体制でした。ところが、上陸前に915hPaというスーパー台風になった19号が静岡~神奈川付近を目指して北上し、前日の12日には東海道新幹線も計画運休という事になってしまいました。これではキャンセルするしかありません。「東海ハムの祭典」は無事に開催されたようですが、その様子は全く知りません。その後、19号は関東から東北の太平洋側を中心に甚大な被害をもたらしました。もう半年近く過ぎてしまいましたが、被害を受けられた方にはお見舞いを申し上げます。

名古屋行きをキャンセルしている頃に考えたのが、どの程度の気圧でいま住んでいる「ここ」に来るのだろうかという事でした。915hPaという事はないにしても、こんな事ばかりを・・。早速探してみると、秋月電子に「デジタル気圧計キット」がありました。台風の通過後に店頭に行って購入し、写真1のように作ってみました。
 

写真1 このようにアルミ板上にまとめた、デジタル気圧計です。
2.このキットについて

 秋月電子のホームページから「組み立てキット」→「測定器キット」で出て来る、トライステート社のキットです。「センサーキット」で探せても良さそうなのですが、ここにはありません。今回は店頭で購入したのですが、いくら探しても見つかりませんでした。仕方なく店員さんに尋ねると、倉庫から出てきました。このように売れ筋から外れた、マイナーなキットのようです。逆にマイナーなキットの方が楽しいかも・・という考えもあります。

 写真2のようなキットです。内部の部品は写真3のようになっています。気圧をhPa(もちろんヘクトパスカルですね)、インチ水銀柱(in)、mm水銀柱(mmHg)で表示するというものです。私としてはhPaだけで充分で、他の表示では全くピンと来ません。組み立ててから標高も表示する事に気が付きました。ただ気圧から計算しますので、標準気圧になった時にしか正確に表示しません。
 

写真2 このようなキットです。
 

写真3 キットの中身です。

3.作製

写真4の基板が入っていました。多くの部品にはSMDが使われており、既に実装されています。裏面が写真5になります。つまりキットと言っても、ハンダ付けをするのはコネクタ類や電解コンデンサ程度しかありません。注意するのが写真6の気圧センサーです。このユニットに足を付けて基板にハンダ付けしますが、方向を間違えると修正が面倒です。全てのハンダ付けは30分程でしょうか。写真7がハンダ付けの終了したところです。このように、作りがいとしては拍子抜けする位にありません。
 

写真4基板には、既にSMD部品が取り付けられていました。
 

写真5 その裏面です。
 

写真6 肝心な気圧センサーです。
 

写真7 ハンダ付けの終了した基板です。
 

ハンダ付けの終了後、まず配線をよく確認して電源を入れます。取説では電流を監視しながら電源を入れ、120mA以上流れた時には即OFFするようにとあります。まあ、それはそうでしょう。そのように電源をONすると120mA流れる事もなく、一応うまく立ち上がりました。しかし、写真8のように980hPaと表示します。一瞬「ん?台風か?」と思い、しばらく経過を見ていましたが多少変化する程度です。ここで「気圧とは」と考えて、標高が関係する事に気が付きました。私の住む那須塩原市の東原付近は標高が371mあります。山の裾野になりますので、ロケーションが良いという事ではありません。早速ネットで調べると、温度も関係しますが標高が上がると気圧は下がると知りました。大気の層が薄くなるのですから、それはそうでしょう。表や計算式がたくさん出てきましたが、私の家では967hPa程度が標準の気圧になります。普段から台風の中に居るような数値ですが、980hPaは高めという事でした。
 

写真8 最初に電源を入れると、980hPaと・・。一瞬台風が来ているのかと思いました。
 

動作はOKのようですので、次にハード的にまとめる事を考えます。基板キットですので、ケースはありません。そこで写真9のようにアルミ板をカットしました。これに基板をカラーで固定し、写真10のようにまとめてみました。
 

写真9 基板に合わせて、アルミ板をカットしました。
 

写真10 アルミ板上に固定し、ハード的には完成としました。
4.調整

カタログにもありますが、基本的には無調整です。ところが、前述のように普通の気象状態でも965~980hPa程度となってしまいました。もちろん、その他にも気温の影響やセンサーの誤差がありますので、単純ではありません。

そこでトライステート社のHPにある方法で、オフセットを試してみる事にしました。専用のアプリを使う方法と、ハイパーターミナルを使う方法が紹介されています。紆余曲折がありましたが、何とか古いXPのパソコンに専用のアプリを入れる事ができました。最初は標高の補正という事で46を足していたのですが、まだ合いません。ネットで検索すると、宇都宮地方気象台が1時間毎に気圧を発表している事に気が付きました。「地方気象台」で検索すると、各地方の気象台が見つかると思います。ここで発表された気圧は標高を補正し、海抜0mにしています。すると補正値は+43となりました。これでいつ測っても、発表値と同じ程度に表示するようになりました。もう少し時間をかけて、小数点の桁まで合わせたいと思います。海抜を考えて補正するよりも、気象台の発表値に合わせる方がセンサーの誤差もまとめて補正できます。この方法が早いと思います。

気圧は海抜0mに補正して発表されるのが、一般的のようです。少々面倒ですが補正をしておかないと、一般的な値と剥離を生じてしまいます。特に多少標高の高いところに住んでいると、常に台風の中にいるような値になってしまいます。富士山頂などの値は、特別な意味があって補正をしていないのでしょう。気象台の発表値に合致するというのは気持ちが良いです。

5.使用感

このように気圧が測れるようになりました。もちろん、台風が来るときは来るのです。この自然の摂理が変わるはずはありません。しかし、No.84でGALメータを作ったのと同じで、このようなものは防災意識向上の第一歩になると思っています。次は雨量計になるのか、風速計になるのかは私にも解りません。

少し動かしていて、気圧によって表示の変わる標高に何の意味があるのかと思ってしまいました。センサーの誤差補正と標高補正の2段階にしておけば、その標高での実際の気圧と0m補正気圧が同時に表示できると思います。ロータリーエンコーダを使って、1mステップで標高を変えるのも面白いでしょう。