1.はじめに

簡単なデジタル回路の試作用にブレッドボードなるものがあり、重宝しています。最近ではこのブレッドボードに、スイッチ、LEDや基本的なデジタル回路まで入れたものが売られています。これらはTTL回路の実験には便利なのですが、PICやAVR等のCPUを取り扱う場合には、ちょっと使い難いと感じていました。そこで「ないものは作る」という精神で、PIC/AVRの開発用ボードを作ってみました。

個人的な事で恐縮ですが、実は私はPICが苦手でして、コピー程度ならできるのですが、本格的な開発は全くできず、もっぱらAVRを使っています。従って、この開発用ボードもAVRで使っていますが、PICでは実際に試した事はありません。そこで、PICの場合も同様だとは思っているのですが、実際に微妙な間隔のズレがないとも限りません。この点は御了承下さい。ただ、世の中はPICの方が多そうですので、一応PICでも、とさせて頂いています。

このようなボードは、ソフトはもちろんですがハードの実験にも使えます。両方同時に進める場合や、先が良く見えない開発の場合に、ソフトとハードの修正を同時にできるというメリットがあります。

2.いろいろ作りました

AVRやPICはRISKマイコンと言われ、小規模な設備の制御に使われています。それまで良く使われて来たZ80等に比べて、PIO等の周辺のICを使う必要が無く、トータルでは安価に簡単な制御回路が構築できます。発展性や規模では劣る部分はありますが、安価に小型のシステムを構築するにはピッタリです。

一台目に作った、Z80でDDSを制御するための実験をしたボードです。ユニット間はハンダ付けで接続しました。LEDもスイッチ類もたくさん用意してありますが、こんなに使った事はありません。

2台目に作った、PICやAVRでDDSを制御するソフト開発のために作成したボードです。ジャンプワイヤーを使って接続するようにしました。

3台目に作った、DDSを取り外したミニ開発用のボードです。図1に回路を示します。電池ホルダーとジャノメ基板を、生基板上に固定しています。 ※1

4台目に作った、LCDも取り外したボードです。図2に回路を示します。基板裏には保護用のゴムシートを貼っています。※2

サンハヤトのCT-311でデジタル実験用に使うボードです。これにTTL ICを並べて、FMトランシーバのPLL制御を開発しました。

小型のブレッドボード。ICが2,3個のミニ開発に便利です。

このような開発用のボードは、Z80でDDSを制御する実験を始めたのがキッカケです。秋月電子のAKI80でDDSを動かすソフト開発用が最初でした。このときのボード上の配線は、基本的にハンダ付けとしました。このボードから多くのソフトを作りだしました。

2台目はAVRやPICでDDSの開発をするために、小型のブレッドボードも乗せて、簡単な追加回路を組めるようなものを作りました。ここからハンダ付けを止めて、ジャンプワイヤーで配線するように変更しました。ジャンプワイヤーはサンハヤトの製品で、ブレッドボードで使うように作られていますが、ソケットでも使う事ができます。実は今年のハムフェアの入賞作品、「シグナルジェネレータ」のソフトはこのボードで開発しました。DDSは別の自作ユニットを使っています。

配線に使っている、サンハヤトのジャンプワイヤーピンです。

3台目はミニ開発用に作ったもので、DDSはありません。4台目は3台目を使用中に、並行して開発を進める必要に迫られたために作りました。マイナーチェンジ版で、LCDを取り去りスイッチとLEDだけのボードです。LCDがないのではブレッドボードと変わらないのでは、と考えられるのですが、最初から電源、LED、スイッチがあると使いやすさが全く違います。LEDとスイッチだけで、CPU 1個のミニ作品にはピッタリの開発用ボードです。

3.回路

一応今回の中心は、3台目、4台目に作った簡単なタイプのボードとしました。回路といっても開発用ですので、特別なものはありません。しかし、図1,2のような基本的な配線をしておくと便利です。DDS付きにするとしても、回路は容易に想像できる事と思います。このようなものについては、使う人が使いやすいように作る事が一番ですので、いろいろ試して使いやすいようにアレンジして下さい。

図1 ※1に対応します。

図2  ※2に対応します。

外部操作用にはDIPスイッチ、タクトスイッチを用意しています。トグルスイッチやスライドスイッチの方がDIPスイッチより操作性は良いのですが、スペースの関係からDIPスイッチを使用しました。もし、一回り大き目のボードを使うのであれば、基板用トグルスイッチが使いやすいと思います。これらのスイッチは、ONでアースに落とすようにしていますが、場合によっては5V側に切り替えるようにする事も可能です。

TTLの回路の場合には、チャタリング防止のための回路や、プルアップ抵抗を付けるなどの処理が必要となります。AVRやPICではチャタリングをソフトで防止できますし、ソフトでプルアップをする事ができますので、スイッチに直結するだけで抵抗などの付加部品は不要となります。

LEDは、超小型タイプの抵抗を通してCPUに直結して点灯させるようにしています。2.54mm以内の幅であれば、ジャノメ基板にそのまま載せる事ができて実装が楽です。ICソケット上にピンを立てて配線すると、ソケットの方向を反対にして、更にコモン側の+-を変える事でロジックが変更できます。Z80バージョンでは、バッファにHC04を入れていました。Z80ではLEDを直接ドライブが出来なかったのですが、PICやAVRでは十分な電流が流せますので、自由度が大きく作りやすくなりました。

D/Aコンバーターを使った、オーディオ発振器を開発している様子です。D/AコンバータとOPアンプによるLPFも実験中です。本当は4台目のボードの方が適しているのですが……

4.作成

写真で解るように、全てジャノメ基板を使っています。138mm×95mmのベークとガラエポですが、特にガラエポにこだわる必要もないと思います。

ソケット間の配線にはサンハヤトのジャンプワイヤーを使います。図1,2の配線部分はジャノメ基板のハンダ面で、しっかりとハンダ付けします。

ICソケットには米ARIES社製のゼロプレッシャーソケットを使いました。ソケットにはダブル・ピンソケットを使っています。このソケットは思ったような数のソケットがありません。そこで長めのものを購入し、自分で切断して使っています。切断したいところでピンをハンダ側からラジオペンチで引き抜きます。その後はニッパでバキッと切るか、金ノコで両側から切れ目を入れて切断します。いずれにしても、切断面はヤスリで仕上げます。切断した場所のピンは無駄になるのですが、これで入手し難いピン数も自由に作る事ができます。ピンソケットは、2列を使っています。1列でもほとんどの場合は足りるのですが、全て2列であれば制約が少なく楽に実験ができますし、オシロなどに接続する事も簡単です。なお、ICソケットとダブル・ピンソケットは秋葉原の秋月電子で入手したものです。

このような実験用では、ケースに入れると不便で使いにくくなります。プリント基板に乗せたり、ゴムのシールを裏に貼っただけとしました。ボタン型ニッカド電池には、外部から充電できるように充電端子を設けています。

任意の数のダブル・ピンヘッダソケットを作る方法です。まず切断したい位置のピンをラジペンで抜きます。

次に金ノコで軽く切れ目を入れます。両側から同じように切れ目を入れます。


ポンと割って、ヤスリで仕上げると自在な数のソケットが完成です。

5.小物の作成

小物類として、12.8MHz発振器、10.0MHz発振器、その他セラロックを写真のようにして使いやすくしています。案外セラロックが使いにくく、発振器を多数用意する方が楽かもしれません。CPUによってクロック用のセラロックのピン位置が異なり、セラロックの位置がボード上で固定できません。また、3端子の中央をアースするという構造もネックになります。そこでセラロックをピンにマウントしましたが、これは今ひとつの感じです。別の取付けるアイデアもある事でしょう。

無線機を自作し、CPUでコントロールしようとする場合には、パネル面にタクトスイッチを出してCPUにつなげるような場合があります。このような規模の大きいソフトを開発する場合には、タクトスイッチ4個では不足しますので、外部のスイッチ用のボードを作ります。タクトスイッチやDIPスイッチをたくさん載せておくと便利です。

小物類です。手前の基板は12.8MHzと10.0MHzのオシレータで別の基板で作ってみました。12.8MHzのオシレータは中央のように、直接ワイヤーを接続したものもあります。左側の青いものは、セラロックをピンにハンダ付けしたものですが、ちょっと使い難い感じです。アース側のソケットをボード側に用意しておく必要がありますので、CPUによってこの位置が異なるのがネックです。

6.使用感

このようにテストが簡単になると、不思議に何か作ってみようと意欲が涌いてきます。逆に何か作れないか?と作るものを探したりしますので、使いもしない物を今までいくつか作ってしまいました。作る事が目的では本末転倒ですが、それはそれで趣味の世界としては楽しいものです。

次回に予定している「早押しゲーム」は、このボード上で開発したものです。