1.はじめに

最近のニッカド電池は、単3程度の大きさの高性能型が普通になって来ました。しかし、これまで紹介しましたPIC/AVR開発用ボードや早押しゲームには、ボタン型のニッカド電池を使っています。このニッカド電池は、容量が単3型などと比べて少なくなります。また、高性能型とは違って急速充電ができません。少ない電流で充電する必要があります。

このようなニッカド電池の充電器は、売られていません。そこで「無いものは作る」という精神で、小容量のニッカド電池を普通充電する充電器を紹介します。

写真1 全体の写真です。電源にはジャンクのACアダプタを使っています。

2.充電電流について

AVRテストボードに使ったボタン型のニッカドは、秋月電子で購入した170mAhのものです。末尾のhは時間を表します。ニッカド電池の定格容量の放電条件はJISで0.2C5A(5時間率)と規定されていますので、170mAhの電池なら、34mAの電流を5時間流せると言うことになります。なお、電流を半分に減らせば約2倍、10分の1なら約10倍の時間使える計算になりますが、種類によってばらつきがあります。また早押しゲームでは、東京ラジオデパートの3階で購入した50mAhのボタン型ニッカドを使っています。これからも、このような電池は頻繁に登場する予定です。ジャンクの古いニッカド電池ですから、当然目減りはしていますので、規定時間充電しても計算どおりには使えない事もあります。

ニッカド電池は、容量の1/10の電流で15時間充電するのが、普通充電です。最近は急速充電が多く、普通充電を忘れてしまいそうですが、170mAhの電池は17mAを10時間、いや50%増しの15時間、50mAhの電池は5mAを15時間充電するのが普通充電という事になります。従って、17mAと5mAで充電する目標にします。少ない電流でも、充電時間を長くすれば完全に充電できますし、また充電電流を変更する事も簡単です。ただし、容量の大きな電池は時間ばかりかかってしまいますので、急速充電を使うのが良いと思います。

なお、急速充電の場合には安全対策として、充電時間と端子電圧の管理を行う必要があります。普通充電の場合は一般的に対策は行われないようですが、15時間でストップせずに放置した場合は過充電になる事に変わりはなく、ニッカド電池を傷める事となりますので注意は必要です。

3.回路

一般的に、このような充電には定電流回路を使います。定電圧で充電した場合には、電池の端子電圧の変化で充電電流が変化してしまい、正しい充電ができなくなるからです。

3端子レギュレータを用いた5Vの定電圧回路を応用で、図1の回路の場合、5VのレギュレータICは常に5Vを出力しようとし、Rに1kΩを使った場合に電流は、I=V/Rから5mAとなります。つまりこの場合、負荷に電池があっても5mA流そうとする事になり、定電流での充電回路となるわけです。このRを調整する事で定電流値、つまり充電電流を変える事ができます。

図1 定電流回路としての原理です。Rに1kΩを使った場合には、常に5mAを流す定電流回路になります。ニッカド電池を5mAで充電する回路です。

図2が実際に作成した回路になります。3端子レギュレータは100mAタイプの78L05を使いました。ボタン型ニッカドですので、100mA以上流す事は考えられません。5mA流す場合には同時にLEDを点灯させました。LEDでのドロップが1.7V程度ありますので、R=V/I=3.3/0.005=660Ωとなります。そこで680Ωで試しましたが、7.1mAも流れてしまいました。これは3端子レギュレータのコモンに流れる電流を、考慮してなかった事だと思います。そこで抵抗を調整したところ、1.2kΩでちょうど5mAとなりました。そこで2.4kΩのパラにしてあります。パラにしたのは、1.2kΩの手持ちが切れていたためですので、1.2kΩを使う方が良いでしょう。

図2 作成した回路になります。基本的に図1と同じで、ニッカド電池の書く位置を変えただけです。異なる電流で設計する場合には、2.4kΩと820Ωの値を調整します。

R=V/I=5/0.012=416.666・・Ωとなります。ここは820Ωをパラにしました。これは計算どおりに17mAとなりました。

入力する電源に必要な電圧について、図3に示します。3端子レギュレータの入出力間には2Vの電圧差が必要です。それにレギュレータの5Vと逆流防止用のダイオードが0.6Vとなります。ボタン型ニッカドは4.8Vですが、満充電が近づくと端子電圧が上昇しますので、1セル当たり1.5Vとして6Vと考えます。合計すると13.6Vとなり、これ以上の電圧を出力する電源が必要となります。電流は充電電流を流せれば良いので、この場合は17mAとなりますが、逆に少な過ぎて作り難い電流値です。

図3 各部の電圧配分はこのようになります。13.6V以上の電源電圧が必要となります。5V以外のレギュレータでも使えますが、入力の電圧を高くする必要が出てきます。低めのレギュレータの方が使いやすいという事になります。

4.作成

写真2のように、小型のジャノメ基板上に作成しました。例によって、基板のウラにはゴムのシールを貼って保護しています。この場合、基板の裏側が剥き出しのままでは線クズなどでACアダプタの出力がショート状態になる事も考えられますので、何らかの対策をすべきです。もちろん、ケースに入れる方法もあります。

写真2 ウラ面には絶縁用のゴムシートを貼っています。トグルスイッチは1回路で良いのですが、機械的な強度を考えて2回路の基板用を使っています。ACアダプタの入力と、クリップの出力の各々のワイヤーは、しっかりと基板に縛ります。このようにしないと、あっけなく切断されてしまいます。

充電電流からRの値を計算し、実際に試します。少々の誤差は気にする事はありませんので、普通は計算どおりでも十分です。ただ、一桁間違う等のミスが無いように、一度充電電流は確認する方が安心でしょう。

電源トランスは使用せず、ACアダプタを使っています(中にはトランスがありますが)。シャックには出所不明のACアダプタがゴロゴロとありますので、電流と電圧の折り合いの付くものがあれば、それを使った方が簡単です。もし、ACアダプタを購入するのであれば、何Vで何A流すかで決まります。17mAで4.8Vの充電を行うのでしたら、上記のように13.6V 17mA程度以上のものであれば大丈夫です。トランスを購入するよりも、簡単で安価に作る事が可能です。充電電流とACアダプタの電圧、ニッカド電池の電圧、の関係で3端子レギュレーターを0.5Aや1Aにしたり、ヒートシンクが必要となる場合もあります。図2の回路では12VのACアダプタを使っていますが、200mA流した時に12Vになるようですので、この程度の電流なら十分な電圧がありました。

5.使用方法

ボタン型のニッカド電池は、基板上に取付けていては取り外しは不可能です。単3型などであれば、普通は電池ホルダーを用いるのですが、ボタン型ではそのように行きません。そこで早押しゲームなどの基板上には充電用の端子を設けました。但し端子があるという事は、周りにハリガネや線クズがあってショートすると危険という事です。ボタン型で容量が少ないとはいえ、危険な事に変わりはありません。十分に注意して取り扱う必要があります。

写真3 前月で紹介した早押しゲームの充電を行っているところです。クリップで充電端子に接続します。

ニッカド電池の充電端子にクリップでチャージャーをつなげて15時間放置するだけで充電は完了です。正しく15時間を測れば理想です。

ニッカドさえ無ければ本機のクリップをショ-トしても17mAとか5mAしか流れませんので、危険はありませんが良い事ではありません。極性を逆に接続すると放電器になってしまいますので注意して下さい。長く逆接を続けると、過放電で電池を傷めてしまいます。

6.おわりに

ボタン型ニッカド電池は、機器に組み込んでメモリーのバックアップ等に、多く使われていました。自然とフローティング充電を使うケースが多かったようです。最近ではリチウム電池などに押されているようですが、ミニ作品にはピッタリの電池ですので、無くならないで欲しいです。