1.はじめに

秋月電子のキットは極めて多種で、電子工作が趣味なら一度はお世話になった事があると思います。この中でも、極めて地味なキットの一つが「トライアック万能調光器」です。これはAC100Vの通過する角度をコントロールする事によって、消費電力の調整をするものです。地味で安価ですが、応用範囲の広いキットです。

写真1 タカチのプラスチックケースに入れたトライアック。

2.本機について

一般にはトライアックとか調光器とかいわれ、住宅の中でも照明用白熱電球の明るさのコントロールに使われています。交流の通過する角度をコントロールしますので、決して電力をロスしているのではありません。(多少はあるでしょうが)このように、ロスなく交流電流をコントロールするのがトライアックです。ちなみに大電力真空管のフィラメント電流も、トライアックでコントロールし、除々に電流を増加させます。いきなり大電流を流すような事はしません。普通の電球にしても、電流を少しずつ増やせば寿命は延びるのでしょう。

私の場合は、AC100Vのミニドリルのコントロールに使っています。ミニドリルとはいえ、基板はもちろん、アルミや黄銅に1mm程度の穴を精度良く開ける事のできるドリルです。これをAC100Vでそのまま使っても良いのですが、ほとんどの場合はゆっくりと慎重に開けたいものです。そこでこのトライアック電源を使ってスピードをコントロールし、穴あけを行っています。

写真2 普段は机の横に貼り付けている。

私の購入したキットは12Aタイプで600円のものです。最近ラインナップが変更になっているようで、この他に20A~40Aタイプがあります。ほとんど値段も変わらないので40Aでも良かったのですが、どうもQRPの方向に行くようです。40Aでは一般家庭の全電力をコントロールするようなものですから・・。

3.回路と作成

キット付属の回路図には注意点などがたくさん書かれていますので、一読してから作って下さい。立派なトライアック通になれそうな回路図です。このキットは白熱電球やハンダゴテのコントロールであれば、簡単に完成できるでしょう。しかしモーターなどのコイルが負荷の場合は、使用目的によってトラブル対策を考えなければなりません。実験のテーマをたくさん与えられたような気がする回路図ですから、あまり考えずに作ってしまいたい方には不向きかもしれません。実は私もそうなのですが、とりあえず回路図どおりに組んでみました。

部品も多くありませんし、基板もシルク印刷の専用基板です。(ジャノメタイプですが)入出力にはACコードとプラグ、ソケットをつけてもすぐに完成します。もちろんAC100Vを扱う事を念頭において、配線してケースに入れました。ケースはタカチのプラスチックケースのSW-100です。

さて、とりあえず完成しましたが、実はこれからが大変でした。実際にAC100Vのミニドリルをコントロールしてみると、ある程度までは、スムースに回転を下げられましたが、そのうちにゴツゴツという感じになってしまいました。これも気持ち悪いので、対策としてスナバ回路を入れてみました。スナバ回路と聞いて、幼稚園の砂場を思い出す方、私と同じです。実はノイズをCRで吸収する回路で、入れてみましたが、「ゴツゴツ感」は全く消えません。ZNRも試しましたが全く消えません。

写真3 左側の青く見えるのがスナバ回路。

CTは0.1μFでしたので、これを0.047μFとしてみましたが同じでした。ほとんど諦め、試しにモーターと電球を同時にコントロールしてみたところ、これが調子良くコントロールできました。電球は50Wでしたが、これを5Wのナツメ球にしても同じでした。そこで調子に乗って、モーターに抵抗をパラに入れてみました。1/4Wの抵抗ですので、当然無茶な値は入れられません。180kΩでは全くNG。68kΩでもNG。20kΩで少し良くなる感じになってきました。これ以上は燃えそうなので止めました。そこで、ドリルを使う時には専用のテーブルタップにナツメ球を同時に点灯させる事としました。

写真4 テーブルタップでミニライトと同時にコントロールすると、モーターも安定した。

この原因については、添付されているコピーに説明されています。ただオシロで確認しようにも、普通のプローブでは波形を見る事ができず、状態が確認できません。 一応スナバ回路は入れておく事にしました。よって最終的には図1の回路となりました。

図1 最終的に、このようになりました。

4.使用感

AC100Vのミニドリルでは、10本300円の超硬ドリル刃を使っていますが、少し下手な事をすると刃が砕け散ってしまいます。それが嫌で回転を下げているのですが、十分に目的を達成しています。

モータ以外の、ハンダゴテや電球では全く問題はありません。もっともハンダゴテの場合は、温度のコントロールではなくコテ自体を変えてしまう方が良いと思いますが・・。

5.おわりに

600円にしては作りがい、実験のしがいのあるキットです。ただ、AC100Vを扱う事、回路的にアース側がない事(オシロでの測定時に危険)を踏まえて実験して下さい。説明書はトライアックを壊す事も念頭に入れた説明になっています。