1.はじめに

発振器のレベルを測定する時や、ちょっとしたQRP送信機の出力を測りたい事があります。そのような時に、デジタルで表示するパワー計があると便利です。PO-10は、ワット(W)表示とdBm表示を切り換える事も可能な、写真1のようなデジタル表示のパワー計です。

写真1 このような外観のパワー計です。

2.本機について

普通のパワー計は、ダミーのRF電圧をダイオードで整流し、アナログのメータを振らせます。それに対しPO-10は、高周波電力をアッテネータに通した後、AD8307で対数圧縮して直流に変換し、PIC16F873でA/D変換してLEDにパワーを表示します。dBm表示では+30dBm~-40dBmまでを測定し、W(ワット)表示では1W~100mWを測定するという、広範囲で使用できるパワー計です。dBmとWはスイッチで切換えますが、レンジは切換える手間がありませんので快適に測定できます。

キットは写真2のように送られて来ます。他に必要なのはケースと20dBアッテネータ用抵抗とトグルスイッチです。なぜ20dBのアッテネータが必要かというと、開発された時にはdBm表示しか無かったようです。その後トグルスイッチでW表示ができるようになったため、そのときに入力レベルの調整がされました。このアッテネータがないと-60dBmまで測れる事にはなるのですが、それでは発振器の出力よりずっと低い値です。あまり使わない領域よりも、使う領域にシフトさせるために20dBアッテネータを後から追加したようです。なお、アッテネータを使う事を前提としてソフトが作られていますので、必ず用意する必要があります。

写真2 送付されてきたキットです。

3.製作

図1に回路を示します。dBmとWの切替えは、トグルスイッチで行います。dBm表示に固定してしまうのであれば、プルアップ抵抗とトグルスイッチを省きます。

図1 デジタルパワー計の全回路図となります。

基板はそれ程部品が多くもなく、簡単に作る事ができます。LED基板との配線は、直接本体の基板とハンダ付けできますので、めんどうがありません。ただ、この状態で誤って力を加えると、基板の銅箔が剥がれますので注意が必要です。この部分は丈夫になるように、ハンダを多めに盛ります。とはいっても、熱を加え過ぎるのは逆効果です。

マイナス表示のLEDは小型の丸型です。マイナス表示ですので、手持ちのマイナス型にしてしまおうと思ったのですが、明るさと色調が他のLEDと合わないので止めました。マイナスの方が、何となくリアリティーがあって良い気がします。

また、20dBアッテネータは、別の用途にも使えるように、取り外しが可能なように作りました。調整時にも取り外せると便利です。写真3がアッテネータを外したところです。必ずしもこのようにする必要はありませんが、調整時には便利です。

写真3 ATTを外したところで、簡単に直結モードにする事が可能です。

基板の作成を行った状態が写真4です。まだ20dBアッテネータは付けていませんが、バラックでの試験で動作確認を行いました。この後、ケースの穴あけを行って実装した様子が写真5になります。

写真4 基板が完成した状態で、仮に信号を入力して確認をしました。

写真5 ケース内の様子です。

ケースはタカチのCU-2(W160×H50×D150)を使いました。内部はガラガラですので、もっと小さいケースでも入れる事は可能です。個々の機器としてはそれでも良いのですが、写真6のように机上に並べた時を考えて、統一の規格としてCU-2を使いましたので、各々の事情で選んで下さい。

写真6 このように、他の機器との整合性を考えてCU-2を使っています。

4.調整

調整はAD8307のICピン間に外部から直流を加えて行うようになっています。ちょっと面倒と思い、SGを入力してしまいました。SGはdBμですのでdBmに変換する必要があります。+113dBμが0dBmになりますので、とりあえず簡単に合わせてしまいました。

この記事を書く段になって、「それではまずい!」と思い直し、取り説どおりに外部にトランジスターを接続して直流を加えて再調整しました。結果はほとんど変わりません。

試しに20dBアッテネータの特性を測定してみたところ、写真7のように19.6dBの減衰量となりました。周波数特性としては200MHz位までは十分に使用できそうです。2W入力という事で、大きめの抵抗を使っていますので、ある程度周波数特性が犠牲になる事は仕方ありません。

写真7 アッテネータの0~500MHzの特性で、200MHzを超えると誤差が多くなります。

5.使用感

実際に動かしてみると快適です。試しにSGを入力した第一印象は、「あっ、これ面白いじゃん!」でした。

他のアナログのパワー計よりも使い勝手は良いように思います。使うのに電気が必要なのは仕方ありませんが、広い範囲をレンジフリーで測定できるのは楽しいです。測定できる範囲もちょうど良い感じです。例えば、アッテネータを強化して100Wをフルスケールの位置にする事も可能です。その場合の測定可能な最低レベルも平行移動します。当然ソフトの修正も必要になりますが、このように発展させる事も考えられます。

6.おわりに

このような測定器は、アナログメータを使うものは今までもありましたが、デジタルメータはありませんでした。このメリットとしては、dBm表示の他にW表示も可能となる事と思います。

ダミーの電圧を直接ダイオードで検波するタイプのアナログの場合には、針の振れが少ない場合に誤差が大きくなる欠点がありました。このようなデジタル式の場合でも誤差はありますが、思いの他正確そうです。