1.はじめに

  6~8回目に紹介しましたFRMSは便利な測定器です。自作愛好家の中ではベストセラーといえる測定器ではないでしょうか。アンテナアナライザにもなってしまう事を紹介しましたが、唯一の欠点は周波数が20MHzまでしか計れない事です。この周波数を高くする事ができれば、大幅に出番が増えてきます。FREXはFrequency Expanderの略で、FRMSを組合わせて周波数を150MHz(最高200MHz)までに広げる、写真1のような測定器です。

写真1 これがFREXです。

FREXは(FRMSもですが)、JE1AHW内田さんとJF3HZB上保さんのコラボレーションで企画されています。

2.構成

FREXは、図1のような構成になっています。中心となるPLCCタイプのICは、上保さん手作りのTCL2001です。FRMSからの9.309~15.559MHzを基準として、VCOをPLLで制御し、297.891MHz~497.891MHzを発振させます。この出力は使いませんが、これを使って後々に試したい事もあります。信号の一部はプリスケーラのTD6127に入り1/64にされ、4.6545~7.7795MHzとなります。これとFRMSからの信号を1/2したものと比較し、LPFのTL081を通してVCOのPOS535を制御します。

図1 FREXの構成図

他方12.8MHzを基準として297.891MHzを発振させるループがあります。この2つの周波数をDBMのTUF-1でミックスし0~200MHzを作ります。この出力にアンプとLPFを接続し、FREXの出力とします。ここに被測定物を通して、FRMSの入力に戻す事で周波数レスポンスを測定します。

FRMSのソフトにはFREXを選択するボックスがありますので、横軸の周波数表示は自動的に0~200MHzに計算された、正しい値で表示されます。

3.回路

図2に示します。ミニサーキット社の部品を多用しています。電源に12Vを使用し、そのままの場合には150MHzまでとなりますが、メイン発振器のPOS535の電源を15Vとする事で200MHzまで使用する事が可能です。この対策をしない場合でも、パソコンでは200MHzまで異常なく表示しますが、実際には150MHzまでで頭打ちになってしまいます。

図2 FREXの回路図

150~200MHzが測定できる方が良い事はもちろんですが、別電源としてまでの利用価値が考えられず、私は150MHzまでとしています。144MHzでの自作に使用するのであれば、余裕を見て200MHzまで測定できる方が良いと思います。実際に試したところ、私の作ったものでは160MHzまで発振していました。

4.作成

チップ部品、ジャンパー線、ICソケットの順に部品をハンダ付けして行きます。このFREXには調整箇所がありません。入力をFRMSとつなぐ事でそのまま動作します。但し、200MHzまで動作させるためには、LPFを調整する必要があります。この調整はFRMSの画面を見ながら、0~200MHzが平坦になるようLを加減するものです。私は行っていませんが、それほど難しいものではありませんし、シビアな調整でもありません。

FRMSと同じタカチのYM-180に収容し、写真2のように同じ雰囲気に仕上げています。内部の様子は、写真3のように作っています。これは作り方ですので、FRMSと一緒に収容してしまう方もおられるようです。信号の切換えを上手に処理できれば、コネクタのつなぎ換えの煩わしさから解放されます。それも面白い方法です。

写真2 FREXはFRMSと同じ雰囲気に仕上げました。

写真3 FREX内部の様子。

5.使用方法

周波数の変換が入りますので、出力のスプリアスはFRMSに比較して、どうしても増えてしまいます。FRMS側では周波数の選択性がないため、フィルターの測定ではダイナミックレンジが狭くなります。また、FRMSでは1Hzステップで周波数を設定できるのですが、32ステップとなりますので、細かい測定をする場合には注意が必要です。

FRMSと組合わせて使用しますが、フィルター等の測定時の接続は図3のように行います。測定結果1は、50MHzのT型BPFの特性を測ったものです。本来150MHz付近ではもう少し減衰しているはずですが、スプリアスの影響が出ているようです。ここがFREXの弱点となるのでしょう。

図3 FRMS+FREXでの測定方法

測定結果1 T型BPFを測定した結果で、スプリアスのため若干クセのあるカーブに見えています。

SWRの測定は図4のように行う事ができます。写真4は50MHzのアンテナを測定しているところで、測定結果2のような特性となりました。SWRの測定には40dBもあればSWRが1.02まで計れる事となりますので、50MHzや144MHzのアンテナアナライザとしての測定には十分です。144MHzについては、200MHzまで発振した方が測定しやすい事はあると思います。SWRの測定については、第8回目も参照して下さい。

図4 SWRの測定を方法で、リターンロスブリッジを使っていますが、方結も使う事ができます。

測定結果2 リターンロスブリッジを使って50MHzのアンテナのSWRを測定しました。

写真4 FRMSとFREXにリターンロスブリッジを使って50MHzのアンテナを測定している様子。

6.おわりに

FREXはFRMSほど登場する機会はないかもしれませんし、スプリアスを増やしてしまう事も事実ですが、それでも周波数を伸ばせるというメリットは大きいものです。完全にFRMSと同じように使えるのではありませんが、特性を理解し上手に使いこなす事が肝心で、とても役に立つ事は間違いありません。