エレクトロニクス工作室
No.202 20MHz~1GHzアンプモジュール
1.はじめに
このような広帯域のアンプには一般的にMMICが使われています。探してみると、キットや完成品が沢山見つかります。今回は秋月電子の「20MHz~1GHz高周波アンプモジュール」というキットを作ってみました。キットと言っても、ハンダ付けするのはSMAと電源のコネクタだけです。仕上げ程度の感覚しかありません。
実験用に、このようなアンプを持っていると便利な事があります。そのような考えで、かなり地味になりますが写真1のように作製してみました。使えるかは不明なのですが、この先に考えているSGの出力用に・・という計画もあります。
2.回路
このキットでは、MMICにアナログデバイセズ社のADL5535を使っています。20MHz~1GHzでゲインが14~16dB回路的にはどのMMICも同じような使い方になりますが、データシートでは図1のような回路が例としてありました。このキットもほぼ同じというのか、実は全く同じ回路となっています。
使っているADL5535は5Vで使用しますが、キットにはレギュレータICがありません。接続時には注意が必要です。
3.作製
写真2が購入したキットの様子です。基板と部品は写真3のようになります。基板の裏面が写真4になります。残っているのは僅かなハンダ付けですので、ハンダコテが温まれば直ぐに終わります。私は23Wの普通のコテを使ってハンダ付けしました。
写真5のように完成となります。SMAコネクタのアース側は4か所をハンダ付けしないと、脱着の繰り返しで銅箔が剥がれる事もありそうです。写真6のように裏側もしっかりとハンダ付けし、コネクタが動いたりしないようにしました。もちろん高周波的にも、この方が良いはずです。
電源コネクタについては、2.54mm間隔の一般的な端子になっています。取りあえずキットに付属していた端子をハンダ付けしました。もちろん自分の都合の良いもので充分ですし、ケーブルの直付けでも良いと思います。電圧を間違えると破損しますので、電圧の表記程度はしておくべきでしょう。基板には極性の表記しかありません。
このようなアンプですので、無理にケースにいれたりしていません。入れようとすると、SMAコネクタの処理で大変になってしまいます。基板だけで完成としていますが、もしケースに入れて基板外に追加するならレギュレータICでしょう。使い方によってジャンパー等で切り替えられると良いと思います。
4.測定
ICの仕様的には20MHz~1GHzとなっていますが、多少の無理は承知で0~1.5GHzのスパンで周波数特性を測ってみました。これが測定結果1になります。これが中国リゴル製のTG付きスペアナで測れる限界になります。多少ゲインが波打つ感じがありますが、測定系に由来するものかは良く解りません。僅かに右肩下がりに推移しますが、1GHzまでは15~16dBのゲインがあります。このあたりはMMICの仕様どおりです。
私が実際に使用するのは100MHz以下が中心ですから、0~100MHzを測定してみたのが測定結果2になります。MMICの仕様では下限が20MHzまでとなっていますが、測ってみると10MHzまでゲインはほとんど下がっていません。10MHz以下では急激に低下します。個人的には10MHz以下でも使いたいのですが、これは当然の結果です。
仕様はともかく、10MHz以下でも工夫する事は可能でしょう。出力に付いているコイルが0.47μHですので、10MHzでは29.5Ωのインピーダンスしかありません。これではゲインが下がるのも当然です。もちろん、コイルを大きくすれば良いというものではありません。考えられる対策ではありますが、No.156のように抵抗を使う方法もあると思います。もちろん基板付きのキットですので、これを無理に改造するような考えはありません。このまま作るのが良いと思います。
5.使用感
このようなアンプを無線機関係に使う事は、あまり無いと思います。普通は実験用、あるいは測定用に常備しておくのでしょう。自作好きとしては常備品にして、貯めておけば良いと思います。という事で、常備品として充分のユニットなのです。各種の自作をしていると、このようなアンプのキットも少しずつ増えて行きます。いろいろな意味で、引き出しが増えるのは良い事です。「増えるだけで安心した」が、取りあえずの使用感です。