エレクトロニクス工作室
No.206 3端子レギュレータ用チェッカ
1. はじめに
このようなチェッカを作ろうと思ったのは、3端子レギュレータの3本足にはいろいろな接続があるためです。普段から使っている78シリーズだけなら良いのですが、最近では異なるものを使う事も多くなりました。私も時々間違えて慌てる事があります。図1は私が持っているものを調べただけで、ほんの一部という事になります。このように異なった接続が多く、これでは覚えられません。思いもよらぬ間違いを起こす事もあります。間違った接続で実装図を作り、ハンダ付けした後で気が付くと相当にショックが大きくなります。思い出したくもありませんが、実際にやってしまいました。「私、失敗しないので・・」と言ってみたいです。
間違い防止のためには端子をデータシートで確認するのはもちろんですが、更に冶具でチェックするのが良いと思います。そこで、このようなチェッカを写真1のように作ってみました。これで完璧でしょう。
入力には別の可変電圧の電源を使い、このチェッカだけでは使用できません。私はNo.123で作成した電源を使っています。
2. 失敗作
実はこの前に写真2のような初代を作っていました。これは対象を78XXと78LXXのタイプに限って作ってみたものです。図1を見ても解るように、裏表を変えるだけという発想でした。ところが一瞬のミスで電源の逆接をしてしまい、発振防止用のタンタルコンデンサをショートモードで壊してしまいました。
壊した時はコンデンサだけ交換すれば良いかと、少々迷いました。どう考えても逆接をしやすい使い方ですので、ショートモードで壊れやすいタンタルはまずかったと思います。しかし、それ以外にも「何か使いにくい」という感覚がありました。図面等では入力を左側にするのを基本としているのですが、この作り方では右側が入力になってしまいます。もちろん入力がどちらであっても、電源の逆接に直接の関係はありません。しかし、何となく全体のレイアウトに引っ掛かりがあったのでしょう。そこで、この失敗を機会に作り直す事にしました。
3. 回路
このような失敗があり、図2のような回路の超簡単なチェッカとしました。3端子レギュレータによって決まった電圧にして、ラジケで読むというだけの回路です。ジャンパーピンを多用し、3端子がどのようなパターンになっても接続が可能にしました。発振防止用のコンデンサは無極性の積層セラミックを用い、正電圧でも負電圧でも使えるようにしました。入力には接続ミスをした時に電流が制限されるように、50mAのポリスイッチを入れました。手持ちにあった50mAを使っただけで、もっと少ない方が安全なのでしょう。50mA以下は見かけませんので、下限なのかもしれません。50mAというのは使用できる保持電流で、トリップ電流は100mA程度になるようです。周囲の温度によって変化しますが、本機の場合は全くシビアな使い方ではありません。
4. 作製
実装図を図3のように作製しました。図4がハンダ面とジャンパーになります。一般的なタイプの秋月C基板を使用しています。回路は簡単なのですが、構造上ピン付近のジャンパー線が避けられません。ジャンパーピンがスペースを使うようになったため、上側が入力になってしまいました。左側には違いありませんので、まあ良いと思います。
まず秋月C基板に切り込みを入れ、ラジケの電圧計が収まるような加工をします。これはハンドニブラを使いました。ハンダ付けも少なく、すぐに基板は出来ると思います。動作の確認後に、C基板用のアクリル板をネジ止めしました。
入力にはターミナルではなく、クリップを直付けしました。ターミナルでも良いのですが、使う時にクリップが必要になってしまいます。面倒な事は極力避けるというポリシーです。普通は赤クリップにはプラス電源で黒クリップがグランドですが、この場合は黒クリップがグランドで赤クリップはプラスあるいはマイナスの電源と考えれば良いと思います。いずれにしても、負電圧用の79XXシリーズの時には注意が必要でしょう。良く見ると解りますが、黒クリップの在庫が無く青クリップを使用しています。
実際に作ってみると、発振防止用の割にはコンデンサとレギュレータとの距離が作られてしまいました。コンデンサの使い方としては上手くありませんが、用途が用途ですので仕方ないでしょう。
電圧計はaitendoで見つけた電圧表示のラジケを使っています。写真3のようなもので、20V以上まで測れますので電圧の範囲としては充分です。これは目盛だけではなく本当の電圧計ですので、抵抗を入れたりする細工は不要です。5Vの78L05を試しているのが写真4です。デジタルテスターで測ると5Vピッタリなのですが、3~4V程度と相当低めに表示するようです。良く見ると、読みようのない不思議な目盛です。写真5は7812を試している様子で、12V付近は比較的合っているようです。使い方としてはこれで充分なので、目盛の書き直しはしませんでした。ラジケですので誤差について云々しても仕方ありません。普通の電圧計を使うほどでもありません。
これを使用していて気が付いたのですが、1Aタイプでソケットに足が入らないものがありました。何故か入るものと入らないものがあるようです。これでは困りますので、ブレッドボード用のジャンプワイヤーを3本使用し、写真6のようなアダプタを作ってみました。ピン側ではなく受け側を使い、エポキシ系の接着剤で基板の切れ端上に固めたものです。これで写真7のように使用する事ができますが、ますます発振防止用のコンデンサとレギュレータが離れてしまいました。実際に発振はしていませんが・・。
作製後は写真8のように回路図をラミネートし、同じ袋に入れて保管しています。これで何年経過しても、ジャンパーピンの使い方を間違える事はないでしょう。
5. 使用感
これはケースに入れない方が、作りやすくて使いやすい代表のような作品でしょう。作り直してからは安心感が違います。何ならデータシートを見ないで、端子の確認までできそうです。もちろん基本的にはダメですが、データシートが見つからないような場合でも対応可能となります。確認方法としては、まず出力電圧が正しい事が第一です。そして入力電圧を変化させて、出力電圧が安定であれば大丈夫でしょう。もちろん、入力電圧が規定以下になると出力電圧も下がるという、3端子レギュレータの性能は理解して使います。
目的と異なった使い道もありました。SMD用のレギュレータを端子にハンダ付けして使いたいケースがありました。写真9のように組み立てたレギュレータです。この場合、アース端子がルーズだと負荷側に規定以上の電圧が加わってしまいます。目視では見えませんが、このようなテストを行わないと危なくて使用できません。安定して動く事が確認できましたので、安心して使用しました。
3端子レギュレータは接続が様々です。データシートを見ていても少々不安になる事があります。そこで、まずこのようにして試すのが良いのではないでしょうか。