エレクトロニクス工作室
No.208 簡易マイナス電源
1.はじめに
ブレッドボードを使った実験をしていると、マイナス側の電源を使いたい時があります。このような時にはAC100Vから作る電源よりも、ジャンプワイヤーだけで接続したくなります。私は横着なので、面倒な事は避けます。そのために別のものを作るという、良く解らない事を繰り返して・・。
良くあるパターンですが、実験が重なると写真1のように山のようなブレッドボードになってしまいます。この最中に多少の整理をしたいと考え、先に写真2のような「簡易マイナス電源」を作製しました。この回路はNo.189のGPSDOでも使っています。そのような意味では、今更切り出しをしても仕方ないのですが・・
2. 回路
図1のような回路になります。12VをDC用ジャックあるいはジャンパーピンで入力し、都合の良いレギュレータICで5Vとか9Vのプラス電源を作ります。ICL7660を使って同じ値のマイナス電圧を作るという回路になります。ICL7660は1.5~10Vですので、レギュレータの電圧には注意が必要です。特に珍しい回路ではありません。電圧を確認できるように、プラス側にもマイナス側にもLEDを入れています。2Vでは無理ですが、3.3Vまで点灯を確認しました。9Vでも大丈夫です。このような使い方では入れておくべきでしょう。但し、点灯する電圧と明るさを考えたとき、プラス側の赤LEDとマイナス側の黄LEDは抵抗を含めて逆にするべきでした。5~9Vでは良かったのですが、4V以下になると明るさがアンバランスになりました。もちろん使用するLEDでも変わると思いますので、ベストの組み合わせは使う部品で試すのが一番です。
回路としては入力にレギュレータICを使っていますが、ジャンプワイヤーでの接続もできます。レギュレータICを外して入力する事もできます。便利に作ろうとすると接続ミスをする可能性が高くなりますが、そこは難しいところです。
また、ICL7660は古くからの定番ICのためセカンドソースが多く、データシートを見ると若干の相違もあるようです。もちろん、全てのセカンドソースを調べるのは不可能です。ほとんどのICで6.5V以下では図2で使えるようになっていますが、6.5V以上では図3のようにするICもあります。セカンドソースによっては3.5V以下では6ピンをアースするICもあるようですが、使うのは3.9Vまでと考えて止めました。
本機としては曖昧な使い方ですので、何Vで使うのか解りません。どのICを使うのかも良く解りませんので、図3のように最初からダイオードを入れた標準的な回路としています。ダイオードのためマイナス側の電圧は多少低めになります。
逆にジャンパーピンを使って全回路を構成できるようにする考え方もあります。そうなるとICのテストになり回路のテストではない気もしますが、両方できると考えればそれでも良さそうです。
3.作製
図4のような実装図を作ってから作製をしました。ハンダ面が図5になります。使ったのは秋月C基板です。充分に余裕がありますので更に小型の基板でも入ります。ある程度のサイズがある方が使いやすいでしょう。
使ったICL7660は写真3のようなタイプです。これは「お買い物メモ」によりますと、2005年6月に秋月電子で100個の袋入りを800円で購入したとあります。これを写真3左側の連結ソケットを利用し、写真4のようにしてDIPタイプに変換して使っています。普通のDIPタイプと同じ接続にしていますので、そのまま写真5も使用可能できます。写真3のICは安いのですが、両端オスピンの連結ソケットを使っていますので逆にコストがかかってしまいました。このような使い方では直接基板にハンダ付けせず、ICソケットを使ってトラブル時に交換が容易にできるのが良いと思います。
最近では写真5のようなDIPタイプのTJ7660も安価に入手できます。セカンドソースのようですが、秋月電子で60円でした。連結ソケットを使うとセカンドソースの方が安い事になってしまいます。実は、No.213(予定)の「レベル比較器」を作製中に写真4を使おうとしたところ、高さ制限で使えませんでした。仕方なく新たに購入したものです。もちろん今なら最初から写真5を使うのが普通と思います。
入出力はジャンパーピンを使う事を前提として作っています。写真6が基板の完成した様子です。そのハンダ面が写真7になります。もちろんですが、この時点で動作確認を行っています。仕上げに秋月C基板に合ったアクリル板を写真8のようにネジ止めして完成としました。もちろん、最終確認も怠りなく行います。
4.動作確認
全く簡単です。使用したいプラス電圧のレギュレータを入れます。もちろん5Vであれば78L05になります。入力に電圧を入れた時、まず両方のLEDが点灯する事を確認します。点灯しない場合は直ぐに入力をOFFし、不良個所を探します。次に正しい電圧が出力している事を確認します。プラス側はピッタリに5Vとなりましたが、マイナス側は-4.06Vでした。少々低いので、ダイオードの影響があるのかと考えました。ダイオードを仮にショートしてみたところ、-4.7Vになりました。レギュレータを78L09にすると、プラス側は8.84Vでマイナス側は-7.65Vとなりました。この場合、ダイオードのショートはできません。まあ、こんなものなのでしょう。
注意しなくてはならないのが、ICL7660の入力電圧が10Vまでという制限だけです。これはICのデータシートを良く確認しておくべきです。セカンドソースも多く、13Vまでのものもあるようです。全部のデータシートを確認したわけではありませんので、使用するICは御自分で確認して下さい。
5.使用感
ノイズを嫌うようなシビアな用途には全く不向きです。しかし、簡単にマイナスの電源を使いたい時には便利です。電圧を変えられるのも便利です。安易といえば安易な気もしますが、簡単に使えるのが一番という場合もあります。本格的な電源ではありませんが、ブレッドボードでの実験用に良いと思います。もう少し本格的なマイナス電源については、No.22でも作っていますので参考にして下さい。
いずれにしても、本機のマイナス電源はせいぜい20mA程度しか流せません。実用になるのは数mAと考えておく方が良さそうです。消費電流の多い実験にも、ノイズを嫌うような回路にも使えません。もっと本格的な電源を使う必要があります。