1.はじめに

このようなワイドバンドのアンプは今までも何回か紹介していますが、ほとんどが実験に備えるためのツールでした。今回も実験には違いないのですが、次にまとめる予定があっての試作になります。No.202でも使用できるとは思うのですが、周波数がスペック外でした。そこで別のICを使って試す事にしました。
 

今回の最終的な目標はGPSの分配器です。これまでは写真1のようなカーナビ用のアンテナを窓際に並べていました。これを止めて本格的な屋外用のアンテナを設置し、シャック内で出力を分配して各装置に供給しようという考えです。分配するのですからレベルが下がります。その分だけ1.575GHzを増幅したかったのです。アンテナのゲインが大きいので、そのまま分配しても動作はします。しかし、減衰させるだけでは面白くありませんので、何とか分配する分はカバーしたいと考えました。

写真1 窓際にはカーナビ用のアンテナが台数分ありました

今回の場合は、普段使うようなHF帯や100MHz以下で使える必要はありません。もちろん別の目的に使う事も出て来る可能性はあります。このように考え、まずは実験として写真2のように作ってみたアンプです。これに併せて、GPSアンテナ側に電源を供給するユニットも作製しました。

写真2 実験用のアンプ

2.回路

このようなアンプにはMMICを使うのが一般的です。その流れでMMICの選択をし、実装がやりやすそうなBGA420を使う事にしました。秋月電子で75円とQRPな価格ですので実験しやすいMMICです。0~3GHzとなっていますが、データシートでは0.1~1.8GHzです。従って1.5GHzでも充分に使えるはずです。
 

基本的な回路はデータシートの図1になります。これにレギュレータIC等を付けて、図2の回路図で作製する事にしました。BGA420の標準的な電圧が5Vですので、5VのレギュレータICを用いました。

図1 データシートにあった回路

図2 このような回路で作製

なお図2では一般的な78L05としていますが、実際に使ったのはミツミのC157です。これは何かのキットに入っていたものかと思います。トランジスタのような名称ですがレギュレータICです。素性の良く解らないICが残ってしまうので、No.206で作った「3端子レギュレータチェッカ」を用いて端子を確認して使いました。もちろんデータシートも確認しています。このような普段使用しないようなレギュレータを使うのが、No.206のひとつの目的でもありました。

回路的にはレギュレータICの他に、出力に3dBのアッテネータを入れています。またGPSアンテナが使用できるように、電源出力のコネクタを付けました。これは5Vと12Vを出せるようにしています。屋外用のアンテナが12V規格だったためです。カーナビで使うようなアンテナは5Vですので、切り替えられると便利です。他はデータシートどおりに作りました。
 

この他にGPSアンテナ側に電源を供給するユニットは、図3のようにしました。内蔵しなかったのは、アンプ単体で特性を測りたかったためです。GPS以外の実験に使う目的があったのですが、ツールがやたらと増えてしまいました。
 

図3 GPSアンテナ側に電源を供給するユニットの回路

3.作製

図4のような実装図を作製してからハンダ付けをしました。入出力は「基板用エッジマウント」のSMA-Jコネクタを使用しました。基板は部品面にアースの付いた、秋月電子のD基板です。緑色の丸印が部品面でアースするポイントになります。この組み合わせだとチップ部品と共に、上手い具合に組み立てる事ができます。周波数が1.5GHzですので、部品面にアースが無ければとても無理でしょう。ハンダ面は図5になります。BGA420はチップ部品ですので足の間隔を考えてハンダ面に取り付けました。図4と図5は部品面からみたTOP VIEWなのですが、このICだけは下から見たBOTTOM VIEWになります。アースする2ピンは写真3のように基板の部品面でGNDに落としています。ハンダ面から見ると写真4の左上のピンで行き先がありませんが、実は基板の部品面でGNDにしています。

図4 作製した実装図

図5 ハンダ面

写真3 BGA420の2ピンは部品面でGNDにしています

写真4 ハンダ面から見ると、この左上がGND

なお、DCジャックには秋月電子のブレッドボード用変換基板を使っています。これはアース付きの基板のホールが狭く、直接DCジャックが使いにくかったからです。使えないという事ではありません。
 

基板全体の様子を写真5に示します。ハンダ面は写真6になります。前述のとおり、5Vのレギュレータは実装図と反対になっています。実装図の図4と写真5は78L05で書いていますので、これで間違いありません。

写真5 作製した基板

写真6 ハンダ面

基板の下側に、普通のD基板を写真7のようにネジ止めして完成としました。どうしてか、D基板には専用のアクリル板がありません。特に必要はないのですが、このようにしておくと安心する私です。

写真7 下側にD基板をネジ止め

なおGPSアンテナ側に電源を供給するユニットは、図6が実装図で図7がハンダ面となります。写真8のように作製しました。ハンダ面が写真9になります。アンプ側と同様に、入出力は「基板用エッジマウント」のSMA-J コネクタを使っています。このような作り方をすると、どちらが部品面かハンダ面か不明確になります。表側と裏側の方が良いのかもしれません。

図6 GPSアンテナ側に電源を供給するユニットの実装図

図7 ハンダ面

写真8 電源の供給ユニット

写真9 ハンダ面になります。部品はこちらに付いていますが・・

4.測定

私の今の環境では1.5GHzまでが測定できる限界です。1.575GHzは測れませんが、大きな差はないでしょう。測定結果1のように1.5GHzで7dB程度のゲインとなりました。アッテネータの3dBを引くと10dBとなりますが、データシート的にはゲインは13dBです。どこかでロスを発生させるような下手な部分があるのでしょう。出力側コネクタまでの距離が長い等の問題もありそうです。アッテネータを入れた事もありますが、もう少しゲインが欲しいところです。

測定結果1 0~1.5GHzの特性

5.使用感

GPSアンテナ側に電源を供給するユニットと接続した様子が写真10になります。SMA-PPの中継コネクタで接続しています。

写真10 アンプと電源の供給ユニットを接続して試している様子

これをこのまま使うのではありませんが、実験としてGPSアンテナを付けてGPSDOと周波数カウンタを動作させてみました。ゲインは大きくありませんが、効果はあるようです。パソコンで見た時の衛星からのレベルが上がっています。このレベルは常時変動しますので、正しくは解りません。
 

分配器を作るのが目的ですので、改めてまとめた時点で紹介しようと思っています。