山梨県南都留郡山中湖村は1000mの高地にあり、夏は避暑地としてにぎわい冬季は積雪があり、マイナス15℃を記録する厳しい環境にあります。山荘シャックは山中湖に近く11月には水道管の凍結防止に水抜きなどの冬支度を済ませて、翌年の4月下旬まで冬眠状態となります。

桜の開花と共に

「ALL JAコンテスト」にあわせて半年ぶりに山荘シャックに入りました。通称「キロワットクラブ」、あるいは「木こりクラブ」と呼ばれるQTCジャパンハムクラブ(JA1ZNG)のメンバーが、クランクアップタワーの18/24MHz帯HB9CVのエレメントが45度傾いて、トライバンドHB9CVに今にも触れそうな無残な光景に唖然としました。タワー頂部の4m単管パイプに設置した18/24MHz HB9CVの傾きを直すには、クランクダウンしたタワーに上ってもHB9CVに手が届かないため今回は修正作業を見送り、3.5/7MHzダイポールアンテナのメンテナンスに集中することにしました。

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18/24MHz HB9CVのエレメントが45度傾いている

謎の水漏れ

昨秋、室内に引き込んだ同軸ケーブルの一本のコネクターから床上に水たまりができていました。雨水が吹き込んだのかもしれないと軽く考えていましたが、実際はとんでもない状況にありました。雨水が給電部からコネクターを介して同軸ケーブルの外皮と編線の間を伝わりにじみ出てきたのです。それを裏付けるかのように同軸ケーブルの編線の黒ずみをご覧に入れます。編線に本来の銅の輝きはなくどこまで剥いても黒ずんでいました。

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同軸ケーブル(5D2V)に雨水がしみて編線が黒く変色した

5D2Vの交換

1月~3月の降雪が多く強風、零下の厳しい気候にアンテナ等に損傷を受けたものと思われます。特に3.5MHz帯/7MHz帯デュアルバンド・ダイポール、1.9MHz帯ダイポールアンテナのSWRが異常に高くなっていました。バランから浸水した水が同軸ケーブルに浸みた疑いから交換の必要が出てきました。このことは後述しますがバランの取り付け方に誤りがありました。事前にコメット5D2V 固定局ケーブルセット30m(HF-500MHz MP-MPコネクター、5,800円+送料540円)をアマゾン(山本無線扱い)に注文しておきました。

一方、10MHz/18MHz/24MHz帯マルチダイポールにも伸びた木の枝が絡み、SWRが高くなっていました。これは剪定により解決できるトラブルですが、これも高所作業車の到着を待つことにしました。メンバーの高齢化に伴い、危険な作業はなるだけ避けなくてはいけないと思っています。幸いなことに電柱タワーの50MHz帯と144MHz 帯八木アンテナ系は全くの無傷でした。

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ダイポールアンテナのメンテナンス作業

給電部から浸水

バラン(平衡―不平衡変換器)はクリエートのCB-3F/2Kを3.5MHz/7.0MHzダイポールアンテナに使っていました。滑車を下してバランの内部を観察すると細かな砂埃が浸入して絶縁が低下しているように見えました。次いでバランにつながる同軸コネクターを外すと泥で汚れていました。CB-3F/2Kは水平に設置するのが正しい使い方なのにうっかり垂直に使った結果、雨水が内部にたまり、給電部のコネクターから同軸ケーブルの編線を伝わり室内に導かれたと推測しました。

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バランを分解して浸水の原因を探る

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給電部のコネクターはひどく汚れていた

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バランを点検すると、細かな砂埃が視認できる

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バラン内部に砂埃がたまっている

CB-3F/2Kバランの内部を清掃して、バランを縦にして使えるように上部と横の穴をバスコークで塞ぎ、下部に新たな水抜き穴を開けました。バランの蓋と接する両面にバスコークを塗り接着しました。再生したバランは1.9MHz 帯ダイポールに転用することにして、3.5MHz/7.0MHzダイポールアンテナには新品のCB-3F/4Kを装着しました。同軸ケーブルは耐候性が高い(外皮・黒色)5D2V に取り替えてコネクター部をエフコテープ(自己融着性絶縁テープ)で手厚く巻いて防水処置としました。

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新品のバラン(CB-3F/4K) に取り替える

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3.5 MHz /7MHz ダイポールアンテナ

エアコンパテで防水

建物の外壁に同軸ケーブル、ローテーター制御ケーブルを室内に引き込むために3か所に直径8センチほどの穴を開けてあります。エアコン用の貫通スリーブや専用カバーをホームセンターで探しましたが簡単に見つけられないため、代替処置としてエアコンパテ(348円)で隙間を埋めて防水対策としました。

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同軸ケーブルの室内への引き込み口の様子

各バンドのVSWR

各アンテナのVSWRを測定しました。

3.5MHz/7MHz半波長ダイポール

周波数(MHz)VSWR周波数(MHz)VSWR
3.500
1.4
7.000
1.3
3.520
1.4
7.050
1.5
3.600
1.9
7.100
1.9

1.9MHz半波長ダイポール

周波数(MHz)VSWR
1.910
1.1

10/18/24 MHz3バンド半波長ダイポール

周波数(MHz)VSWR
10.13
1.4
18.1
2.9
24.9
2.3

エレメントに枝がからんでいる。

18/24 MHz HB9CV

周波数(MHz)VSWR周波数(MHz)VSWR
18.1
2.5
24.8
1.3
18.2
2.1
24.9
1.4

エレメントが45度傾きトライバンドHB9CVに接近してSWRが高くなった。

14/21/28MHz HB9CV

周波数(MHz)VSWR周波数(MHz)VSWR周波数(MHz)VSWR
14.1
2.2
21.0
3.2
28.0
1.5
14.2
2.4
21.2
1.3
28.1
1.4
14.3
3.2
21.3
1.4
28.4
1.1

18/24MHzHB9CVのエレメントが傾きトライバンドに接近してSWRが高くなった。

おわりに

半年ぶりに活動を再開した山荘シャックはアンテナのメンテナンスから始まりました。傍らレピーター管理団体による「山中湖430」D-STARレピーターの制御用パソコンのプログラム・バージョンアップを進める傍ら、ICOM ID-31ハンディ機により近くの局と交信してレピーターの動作状況を確認しました。シャックにIC‐7700とIC-7600を設置して第一シャック、第二シャックとしていますが、今回、第二シャックのパソコンをWindows10モデルに替えてデジタル通信系を強化しました。なお、今回の活動に参加したのは山荘に1kW固定局を持つJA1CVF、JA1KJW、JA1XVY、JF1GUQ、JA1FUYの5人でした。