2016年11月25日~30日、ベトナム社会主義共和国を6日間の日程で縦断の旅に出かけました。ベトナム(XV、3W)は南北1,650km、東西600km、最も狭い部分でわずか 50kmの細長いS字に似た国土が特徴です。北を中国、西にラオスとカンボジアに国境を接し、人口約9千270万人(2016年外務省HPより)。中国に1,000年、フランスに80年間支配されたのち、南北に分裂。南北戦争が1976年7月2日に終結し統一するに至りました。

南北大縦断

ベトナムは南北統一後、いつかは行ってみたい外国の一つでしたが、その機会が突如巡ってきました。JTB配布の旅行案内誌をめくっていると「まるごとベトナム大縦断6日間」の見出しが目につきました。成田空港からベトナム航空でホーチミンへ直行便があること、国内便を2回乗り継いで首都のハノイへ移動する行程も気に入りました。旅行料金が手頃なところもあって、即座に申し込みを済ませて出発の日を待ちました。

photo

ベトナムとまわりの国々

11月25日

成田発9時30分、ベトナム航空VN301エアバスA350-900に搭乗してホーチミンへ向かいました。所要6時間、13時50分タン・ソン・ニャット国際空港に到着しました。1989年12月27日、ホーチミン市からXV2Aを運用したのがJA3UB 三好二郎さんら5人でした。この時のDXサービスに思いを馳せながらベトナムへ入国しました。なお、IATAコードは「SGN」で、同市の旧名サイゴンが由来です。市街中心部より北西約8kmの位置にあり、かつてはサイゴン国際空港とも呼ばれていました。

統一会堂

タン・ソン・ニャット国際空港に到着後、バスに乗車してホーチミン市内観光に出かけました。車窓から見る初めての市街地の光景はプチパリと呼ばれたフランス建築と近代的な高層ビル、小さな商店などが混ざり合い、道路を埋め尽くすバイクの群れに圧倒されました。バイクに2人、3人乗りが常態化しているばかりでなく、大型の荷物運搬にも使われていました。

観光始めに統一会堂(とういつかいどう)を見学しました。元ベトナム共和国の大統領府及び官邸だった由緒ある施設で、3代の大統領が使用しました。1975年4月30日、北ベトナム軍の戦車がこの建物のフェンスを破り突入して、南ベトナムの首都サイゴンが陥落した映像が世界に配信されました。ソ連製の戦車は今も前庭に展示されていて当時の記憶がよみがえります。

photo

統一会堂(元ベトナム共和国の大統領府及び官邸)

1階は講堂、内閣会議室、2階に大統領執務室、作戦室、応接室、大統領寝室などがありました。3階に大統領夫人室など私的なエリアとして映写室、ヘリポート(屋上に実機を展示)、4階にダンスルームとバーが配置されていました。地下階には緊急用の作戦指令室があり、地方別に何十台ものテレタイプマシンが並んでいましたし、別室に軍用の無線設備(短波帯送受信機など)が並び通信本部だったことを彷彿とさせます。携帯型軍用トランシーバーAN/PRC-77などが山積みに展示されていて、手に取ってみたい衝動にかられました。

この後、フランス統治時代の建造物であるサイゴン教会、中央郵便局、200軒以上の店を収容したペンタイン市場、繁華街のドンコイ通りを散策して夕刻にはユニバース セントラルホテルに入りました。夕食はベトナム料理(フォーと呼ばれる麺を含む)でした。

26日 ジャングル・クルーズ

朝、バスにてホーチミンの南西約70km(約1時間30分)のミトーへ。メコン川の船着場からエンジン付き木造船に乗り、中州の一つトイソン島へ向かいました。トイソン島へ上陸し、バイクが行きかう細い道を進んだところにある養蜂園で蜂蜜茶がふるまわれました。次に果樹園に移動して南国のフルーツをいただき、落ち着く間もなく、本日のお楽しみ"ジャングル・クルーズ"です。ニッパヤシが生い茂る細い水路を二人の漕ぎ手が無言で漕いで行くと、静寂を破って南国特有の鳥の鳴き声が響くという20分間のクルーズでした。

photo

トイソン島のジャングル・クルーズ

photo

トイソン島に自生する南国のフルーツ

エレファント・フィッシュ

昼食は市内のレストランでミトー名物"エレファント・フィッシュ(象耳魚)の唐揚げ"を食しました。白身をほぐして香草と一緒にライスペーパーに巻いて食べます。ほかにエビや麺(フォー)などボリューム満点のベトナム料理に大満足。この後、クチのベトコン地下基地の見学が予定されていましたが急きょ中止になり、ホーチミン空港へ直行となりました。15時15分発の国内便VN1376便にてフエへ向かい16時40分フエ着、ズウイタン・ホテルへ入りました。

photo

エレファント・フィッシュ(象耳魚)の唐揚げ

27日 古都フエ

1945年まで続いたベトナム最後の王朝、阮(グエン)朝の都が置かれ、歴代の王が築いた王宮など(1993年世界遺産に登録)やティエンムー寺、カイディン帝廟などを見学しました。中国の紫禁城を模したという王宮内部は豪華さと裏腹に天井から滴る雨漏りが各所に見られ、貴重な文化財の行方が気になります。観光を終えてバスでホイアンへ。途中、日本政府の経済援助と日本の建設会社の工事で完成した6.3kmのトンネルを通り抜けました。

photo

古都フエのグエン王宮

ホイアンで灯篭流し

フエからバスで150km、3時間30分かけてホイアンへ。16世紀には日本人町があったというホイアンを訪ねました。1593年、この地に居住する日本人によって架けられたという屋根付きの橋、来遠橋が見どころです。ほかに海のシルクロード博物館、福建会館を見学しました。古い町並みが残る通りに夕刻から無数のランタンが灯り、日本人にはお盆の雰囲気が感じられます。日が暮れてからは通りの先の川岸で灯篭流しに興じました。

photo

ホイアンの旧市街地のランタンが灯る町並み

28日 ミーソン

ホイアンからバスで約50km、約1時間15分かけてミーソンへ。ミーソン遺跡群は、ベトナム中部クアンナム省にある古代チャンパ王国の遺跡です。1999年、ユネスコの世界遺産(世界文化遺産)に登録されました。同遺跡は4~13世紀にわたり造営されましたが、チャンパ王国の滅亡後は忘れ去られ、1898年にフランス人M.C.Parisにより、密林の中で偶然発見されました。入り口近くに設けられた休憩所でチャム族による民族舞踊を見て古代に思いを馳せました。観光後、ダナンへ(約50km、約1時間15分)。

photo

古代チャンパ王国のミーソン遺跡

ダナン

ベトナム中部最大の商業都市ダナンはかつてチャンパ王国の拠点として栄え、ベトナム戦争当時は米軍最大の基地が置かれていました。ダナンの海沿いはリゾート地として人気が高く、中部の世界遺産を巡る拠点として観光客でにぎわっています。フランス統治時代の1923年に建てられたダナン大聖堂を見学しました。建物は黄色、天頂の鶏から「鶏教会」とも呼ばれています。次に チャム彫刻博物館を見学しました。ここはミーソン遺跡から出土(7世紀~15世紀頃)したチャンパ王国の彫刻を展示しています。

photo

チャム彫刻博物館の彫刻

ダナン空港から17時30分発VN180にて首都ハノイへ移動、18時50分ハノイ空港着。到着後バスに乗車してハロンへ180km 、約4時間の道のりを走破してアセアン・ハロン・ホテルに入りました。

29日 ハロン

午前、世界遺産ハロン湾クルーズ(約3時間)に出発。ベトナムの桂林と称される大小の奇岩が林立するハロン湾のクルージングを楽しみ、途中ティエンクン洞窟に立ち寄り、400段の階段を上り鍾乳洞を見学しました。この後、バスに乗車して約180km、約4時間 ハノイへ移動しました。

photo

世界遺産ハロン湾クルーズ

photo

ティエンクン洞窟の鍾乳洞

首都ハノイ

ハノイでは世界遺産のタンロン遺跡を見学しました。通りを挟んで西側が遺跡、東側が城跡で14世紀まで3代にわたり王が居住していた地域。ここから徒歩15分、ホーチミン廟へ。

廟のデザインはベトナム人建築家の案を基にソ連(当時)の技術者の意見を取り入れて、建設から2年後の1975年に完成しました。遺体の防腐処理は、ホーチミン廟のモデルにあたるレーニン廟を建てたソ連が支援しました。故ホーチミン国家主席の遺体を冷凍保存していて、ベトナム国民の神聖で大切な場所として儀仗兵により守られていました。1月~3月の開館は8時~11時のため、午後の入場がかなわず外からの見学となりました。

次に学問の神として名高い最古の大学跡である文廟へ。1070年に建立の大学跡地。因みに文廟の門の一つが10万ドン紙幣 (約507.0円)裏面の絵柄になっています。続いて"一柱寺"へ。池の上に一本の巨大な柱で鎮座する"一柱寺"は11世紀半ばの建立といわれ、子宝祈願のパワースポットとして参拝者でにぎわっていました。この後、お楽しみのタンロン水上人形劇場へ移動しました。水上人形劇は1000年以上前の人形や演目、音楽等を継承しており、言葉がわからなくても人形劇のストーリーは十分に理解できました。

photo

ホーチミン廟

photo

タンロン水上人形劇場

人形劇を約50分間鑑賞して余韻に浸る間もなく、劇場前からバスに乗りハノイ空港へ急ぎました。ここで日付が変わり11月30日、0時25分発、成田空港行きVN310に搭乗して同日午前7時、6日間の旅を終えて成田空港に戻りました。

参考資料:るるぶ情報版 ベトナム(JTBパブリッシング)