"QST"2017年10月号表紙にデジタル機能「Shark RF openSPOT Hotspot」(54-57頁)が紹介されました。ヨーロッパで主流となりつつあるリフレクタ(インターネット上の仮想レピーター)の「ホットスポット」が取り上げられました。この仮想レピーターにアクセスすると、リフレクタはアクセスした局に音声を中継してくれるため、リフレクタに参加しているすべての局の交信を聴くことができるほか、呼び出して交信することもできます。昨今のリフレクタ人気は、インターネットに接続できる世界のアマチュア局が国境を越えて交信できる特徴に加えて、明瞭な音声通信が好まれた点も見逃せません。

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2017年QST 10月号の表紙左下(DIGITAL FEATURE)に注目。(※クリックすると画像が拡大します。)

ホットスポットとは

一般的にアクセスポイントから受信できる場所を、無線LANスポット、Wi-Fiスポット、フリースポット、ホットスポットなどと呼びます。因みに「ホットスポット」は、NTTコミュニケーションズが提供するサービスの名称として商標登録されていますが、一般名称としても使用されているため、同社では「一般名称として使用することに制限を加える意図は無い」と表明しています。アマチュア無線界のホットスポットはリフレクタの出入り口、すなわち自分専用の小規模なレピータ(中継局)の意味で使われています。

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ICOM ID-31トランシーバーとSharkRF openSPOTによるホットスポット

SharkRF openSPOT

openSPOTはDMR、D-STAR、C4FM、Fusionの各モードに対応しますが、ここではD-STARに的を絞り、他のモードの変更(届)を後回しとしました。パッケージには本体とAC/DC電源アダプタ、イーサーケーブル、アンテナ、ユーザーマニュアルのURLを記したカードが同梱されています。

https://www.sharkrf.com/products/openspot/

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パッケージに同梱されていたカード

openSPOTの注文

注文はSharkRFのWebサイトの[Shop]をクリックします。値段は182.5ユーロ、送料26.3ユーロの合計208.8EUR(28,314円)をクレジットカード(VISA)で決済しましたが、より安全と言われるPayPalの利用もお勧めです。DHLの配送業者から受け取りの際に3,180円を求められました。内訳は輸入時の消費税2,100円とDHLの立替納税手数料1,080円でした。配送は生産国のエストニア→ドイツ→中国→成田空港を経由してわずか5日間で届きました。

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openSPOTの動作状況。STATUSの緑色LED点灯がリフレクタへの接続を示す。

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リアパネルにEthernet端子(左)とUSBポート(右)

最初のステップ

openSPOTの設定はノートPCとWebブラウザが必要です。

1.アンテナをねじ込む。

2.USBケーブルをノートPCのUSBポートに接続する。

3.EthernetケーブルでopenSPOTをローカルエリアネットワークに接続する。

4.ブラウザでhttp://openspot.localまたはhttp://openspot/を開く。

5.デフォルトのパスワードopenspotでLoginする。

次にD-STAR/DCS/XLXの設定を示します。

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パスワードの初期設定はopenspot(※クリックすると画像が拡大します。)

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Status画面(※クリックすると画像が拡大します。)

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Connectorsの設定画面(※クリックすると画像が拡大します。)

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Connectorの拡大画面 Active connector、Edit connectorの右側、▼をクリックして

D-STAR DCS/XLXを選択してSwitch to selectedを押す。(※クリックすると画像が拡大します。)

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Connectorの拡大画面 D-STAR/DCS/XLX設定画面 設定を変えた時はSaveを押す。

CCS port以下の設定を変えた時もAdd serverを押す。(※クリックすると画像が拡大します。)

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FrequencyはVoIPの周波数(430.70-431.00MHz)に設定する。

Modem settingsとCWID、Calibration、Other settingsは初期値のまま。(※クリックすると画像が拡大します。)

Settingsは初期値のままとしました。他のDMR、C4FMの記入例はユーザーマニュアルをご覧ください。

https://www.sharkrf.com/products/openspot/manual/

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ホットスポットの配置図(※クリックすると画像が拡大します。)

技術基準適合の保証書

日本仕様(430MHz~440MHz)のopenSPOTを購入しましたが、技適機ではありませんので、関東総合通信局へ変更(届)を出す前にJARD(財団法人日本アマチュア無線振興協会)に技術基準適合の保証書を申請しなくてはなりません。

openSPOTを固定局の第4送信機として増設するために、電子申請Liteにより変更(届)を作成(PDF)し、「送信機系統図並びに諸元」を添付してJARDの保証事業センターに技術基準適合の保証書(変更)を申請しました。一度、JARDから問い合わせがあり、申請書を補正して再提出しました。その後、審査を終えて保証料の振り込み要請があり、郵便局の口座振替で3,000円を振り込むと、ほどなく保証書(PDF)がメール添付で送られてきました。申請から受領までの期間は約一週間でした。

※ 送信機系統図

https://www.sharkrf.com/wp-content/uploads/2016/06/sharkrf-openspot-datasheet-2017032501.pdf

[諸元]

7L1RLL若鳥陸夫氏の「openSPOTとID-31無線機とによるD-STARホットスポットの実験」工事設計書(p.19)の諸元(JF1CXH岡野俊郎氏)。

www1.u-netsurf.ne.jp__7l1rll_D-STAR_openSPOT

電波法では一つの局免許でアクセスポイントを開設し、同一局免許でアクセスポイントにアクセスする場合を認めていません。いわゆる「自局アクセスポイントへのアクセス」は受け付けられません。そのため、ホットスポットは固定局の第4送信機としました。これにアクセスするのは、移動局のD-STARトランシーバーのID-31としました。

[送信機系統図]

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送信機系統図(※クリックすると画像が拡大します。)

D-STAR諸元

電波型式F7W
変調方式GMSK(2FSK)リアクタンス変調
変調速度4800bps
最大周波数偏移±1200Hz
音声符号化方式D-STAR DV標準方式(音声+データ)
音声通信速度2400bps(FEC付符号 3600bps)
周波数帯域幅6.25kHz
簡易データ通信速度960bps

変更申請(届)

JARDから技術基準保証書を取得した後、関東総合通信局へ技術基準保証書(PDF)と送信機系統図・D-STAR諸元表(PDF)を添付して変更(届)を出しました。その後、一度の補正を経て「審査終了」に漕ぎつけました。

リフレクタ

openSPOTの購入動機がリフレクタDCS022Cへのデビューにありましたから、変更(届)が[審査終了]になるのを見届けてID-31のPTTを押して、x-NET Dashboardに自局のコールサインが登載されるところから始めました。

※ x-NET Dashboard (http://xreflector.net/neu3/)で見ることができます。

DCSサーバーはDCS001~033の各部屋があり、中でもDCS021(休止中)とDCS022は7J3TJZ安田 聖(やすださとし)氏が立ち上げたサーバーであると聞いています。DCS022A(World Wide)、DCS022B(Asia)、DCS022C(Japan)のようにA~Zの各部屋に分かれています。次いでD:IWATE、F:FUKUOKA、G:GIFU、K:KAWARAMACHI KYOTO、N:NAGOYA、S:SENDAI、T:TOKAI、X:ARISS Audio Feed、Y:Emergency Communications、Z:Echo Functionとなっています。

最新ファームウェア

openSPOTのファームウェアは2018年3月28日が最新です。旧いバージョンのまま使っている方を見受けますが、新しくしておかれることをお勧めします。ファームウェアを最新にする方法はユーザーマニュアルの中に説明がありますし、ビデオでも詳細を教えてくれます。srf-osp-1.1-0138.bin (2017-11-06 14:01 UTC)

おわりに

ID-31に小型イヤホンマイク(HM-166LS)を装着して居間や庭に出るときも携帯してホットスポットへアクセスしています。ハンディ機の交信相手が距離に関係なく遠隔地や遠い外国局と会話ができるのもインターネットのおかげに違いありません。しかし、「インターネット経由の交信はアマチュア無線でない」という意見もありますが、ホットスポットとID-31を使っている限り、これもアマチュア無線と言ってはばかりません。

参考資料:

「openSPOTユーザーマニュアル」

https://www.sharkrf.com/products/openspot/manual/

「ユーザーマニュアル」

https://www.sharkrf.com/wp-content/uploads/2016/06/sharkrf-openspot-datasheet-2017032501.pdf