2019年2月22日~27日の日程でインド(VU)の首都デリーとジャイプール、アグラを結ぶ三都市を訪ねるツアーに参加しました。中でも白亜のドーム"タージ・マハル"が最も行ってみたい世界遺産の一つでした。当初はお金持ちの館か宮殿をイメージしていましたが、調べると、皇帝シャー・ジャハーンが若くして亡くなった妃のムムターズのために22年の歳月をかけて建てた総大理石の霊廟と知り、インドという国に興味が湧いてきました。

世界第2位の人口を持つインド

インドは13億5千万人の人口と日本の8倍の国土を持ち、ヒンドゥー教徒80.5%、イスラム教徒13.4%、キリスト教徒2.3%、スィク教徒1.9%、仏教徒0.8%、ジャイアナ教徒0.4%、そのほかの宗教0.7%、多様な民族と言語、宗教が根付いたインド、識字率74.04%(2011年国勢調査)、総人口は2020年代に中華人民共和国を抜いて世界最大になると予測されています。

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インドと周辺国の地図(※クリックすると画像が拡大します。)

1日目:デリー着

成田空港からJL749 (ボーイング787-9B)に乗って10時間20分デリー空港へ到着しました。デリー空港では入国審査が先で荷物の受け取りはその後になるので、入国してしまうと預けた荷物が受け取れなくなると心配になりました。税関を抜けて出口を出たところに、ツーリストの小旗を持った現地ガイドが待っていました。ガイドに誘導されて専用バスへ乗車し、インドの簡単な知識を授けられました。道路へ出ると想像を絶する大渋滞とクラクションの喧騒が待っており。通常20分で行ける距離を2時間かけて走行する苦行に見舞われました。窓を閉めていても排気ガスの匂いが車内に漂い、インドに来たことを後悔したほどです。ようやく今夜の宿泊場所"ITCウエルカムホテル"に到着。ホテルの入り口でいきなり宿泊者の手荷物検査がはじまり、治安が悪い国に来た印象を強くしました。

2日目:ジャイプールへ

07:30 専用バスにてラージャスターンの州都ジャイプールへ。所要時間は約6時間/260km。車窓から見る限りSUZUKIの小型車の独壇場、インドに深く根付いていることがうかがえます。注意深く見るとHONDAとTOYOTAのエンブレムも認められました。ほかにオートリクシャーと呼ばれる三輪タクシーがみずすましのように走り回っています。

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リクシャの由来は日本の人力車から。

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野良ネコならぬ野良牛が人と共生している!

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象も乗馬と同じ交通手段の一つ

クルマの行き交う道路に野良牛が棲みついていますが、インド人は決して牛を追いやることはしません。法律で牛を食べることを禁止しているのも「牛の体内に神様が3.3億存在する」と信じられていて、人口の8割のヒンドゥー教徒が牛を聖なるものとして食べないため、街のあちこちに野良牛が棲み着いていて、珍しいというより異様な光景です。

※ 3.3億は森羅万象の機能をつかさどる神様の数を表す。

アンベール城(世界遺産)

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世界遺産・アンベール城

ジャイプール市内から北東へ11km、バスに乗って行くと丘の上に巨大なアンベール城がみえてきました。麓を少し上ったあたりでバスから降りて幌付きのジープに乗り換えました。急坂の登坂には四輪駆動のジープが適しているのでしょう。アンベール城の入り口まで観光客を乗せて往復しています。ジープの後席に4人が腰かけて石畳をがたがた揺られながら上って行きます。16世紀の築城当時は象に乗って通ったとのこと、象のためのごつごつした石畳を少し歩いてみましたが、人の歩行に適しません。

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アンベール城の庭園

入り口の獅子門をくぐると一般謁見の間(Diwan-i-Am)、勝利の間(Jai Mandir)へと続きます。壁面の幾何学的な模様と鏡を埋め込んだ鏡の間の装飾がみごとです。

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幾何学模様の壁面が美しい。

ジャンタル・マンタル巨大天文台(世界遺産)

ジャイプールの町を築いたマハーラージャ、ジャイ・スイン2世は、インド各地に天体観測儀を集めた天文台を作りました。ジャイプル(1728)はその一つで、ここに16の観測儀があり、太陽の影の形によって2秒単位まで時間が計れ、インド最大の日時計や曜日、星座を計れるものがあります。1901年修復され2010年世界遺産に登録されました。

※ 大王の意味。後には皇帝に服属する、単なる地方領主の称号となる。

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ジャンタル・マンタルの観測儀の一つ

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大理石で造った精巧な観測儀に驚かされる

風の宮殿

バザールの大通りに面した"風の宮殿"を訪ねました。かつて宮廷の女性たちが、ここのテラスから町を見下ろしていたといいます。この建物は間口が広いわりに奥行きが非常に浅い不思議な建造物として有名です。

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ピンク・シティの"風の宮殿"

シティ・パレス

ビチョーラー湖に面したシティ・パレスに旧市街を見下ろす御影石と大理石で造られたマハーラーナーの壮大な宮殿です。現在は4つのパートに分けて管理されていて、かつての本殿がシティ・パレスとして一般公開されています。写真の屋上に旗が上がっている建物は現在もマハーラーナーの住まいとして使われており、入場禁止です。

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シティ・パレス

3日目:アパネリの巨大階段井戸(世界遺産)

アグラへ向かう途中、アパネリの巨大階段井戸"チャンド・パーオリー"を見学しました。8~9世紀にこの一帯を治めた王が公共の井戸を建造しました。一辺35mの四角形、30mを超える深さがあり、傍らに水辺で涼むための宮殿が造られました。底に水たまりを確認できますが降りて行くことはできません。完成は9世紀、1000年以上も前からこの村に恵みを与えてきました。階段の総数は3500段。

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ピラミッドを逆さにしたような階段井戸

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水辺で涼むための宮殿が造られている

インド料理

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ホテルビュッフェのさまざまな料理。いずれもカレー味

ファテープル・シークリー(世界遺産)

わずか14年で放棄された束の間の都として有名なアグラの中心部にあるアクパル帝の城跡。1571年、約5年かけて首都を建設、3km×1.5kmの土地を城壁で囲み、中央の丘に赤砂岩で宮殿やモスクを築いたが、水不足が原因で14年後に放棄されました。1986年世界遺産。

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ファテープル・シークリー城跡

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赤砂岩で築いた壮麗な宮殿

「タージ・マハル物語ショー」を観劇

夕刻、専用バスでKalakriti劇場へ「タージ・マハル物語ショー」を観に行きました。マハル(宮殿)と呼ばれているので、王妃のための宮殿と思われがちですが、ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャーハン(1628-1658)のムムターズ・マハル妃の霊廟です。若くして病死した妃のために世界各地から貴石と職人を集めて22年の歳月をかけて1653年にタージ・マハルが完成したと伝えられます。ショーは皇帝と妃の愛の物語を音楽と舞踊で構成しています。2階席の最前列、日本語ナレーションのヘッドフォン付、チケットは送迎込み一人5千円、撮影禁止。

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「タージ・マハル物語ショー」の絵葉書

4日目:タージ・マハル(世界遺産)

ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャーハン(1628-1658)のムムターズ・マハル妃の霊廟。1631年、若くして亡くなった妃のためにムガル帝国の国力を傾けてタージ・マハルを建設したが、実際に国力が傾き自分の息子に幽閉されて殺害され、妃の隣に葬られました。

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どこから眺めても美しいタージ・マハル(※クリックすると画像が拡大します。)

インドの定食"ターリー"

数種類のカレー味のおかずが丸い容器に盛られたターリー(Thali)はライスやナン、豆で作った薄焼きせんべいがついて、お代わりできるのでおなかが満腹になります。生水が飲用に適さないのでもっぱらミネラルウォーターを飲みます。1リッターのボトルで約20ルピー(約30円)。国民的な飲み物(チャーイ)はミルクと砂糖が入って一杯10~20ルピー(約16~30円)。ほかにコーラやスプライト、ビールも一般的に飲まれています。

※ 1ルピー(Rupee=Rs)は1.5876円

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1565年築城のアグラ城(世界遺産)

1565年に築かれたムガル帝国の権力の象徴"アグラ城"。アマル・スィン門をくぐると現れるジャンハーンギール宮殿。一般謁見の間の玉座背面の壁に宝石がはめ込まれていたが、英国の統治時代にすべて持ち去られたと聞いた。

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アグラ城のジャンハーンギール宮殿

あとがき

インドは仏教国のイメージを抱いていましたが、実際はヒンドゥー教徒が80.5%イスラム教徒13.4%、キリスト教徒、そして仏教徒が0.8%、ジャイアナ教徒、その他の宗教0.7%で構成されていて、ヒンドゥー教徒がインドの主な宗教と知りました。その上、トルコ、イラン、インド・アーリヤ、スキト等々多様な人種で混沌としており、ヒンディー語が公用語、英語が補助公用のせいでホテルやレストラン、土産物店で英語が通じます。

街のいたるところに野良牛や野良犬、ヒツジが気ままに棲みついているのが奇妙で、公園の隅にはトタン屋根のバラック建ての小屋が軒を連ねて生活する人々、バザールの近くに「10枚千円!」と叫ぶ売り子や物乞い、高速道路の料金所での慢性的な大渋滞、排気ガスによる空気汚染、格差社会と貧困、カースト制度が残る大国インドを垣間見る旅となりました。インドにはアマチュア無線組織ARSI(Amateur Radio Society of India)がありますが、今回はアマチュア無線と触れ合う機会は全くありませんでした。2月26日、デリー空港20:20、発JL0740便(ボーイング787-9B)にて7時間20分かけて飛び、同27日、07:10成田空港へ戻ってきました。

参考資料

「ゴールデントライアングル・インド6日間」旅のしおり クラブツーリズム株式会社

地球の歩き方「インド」2018~2019 株式会社ダイヤモンド・ビッグ社