パシフィコ横浜で開かれた「ハムフェア2001」の記念局8J1HAMの運用で、JA1AYC松本さんが初めてPSK31モードの電波を出して注目されました。一般的に文字通信といえばRTTYあるいはパケット通信を連想されますが、最近はこれらのモードと共にPSK31が注目されています。というのもSSTVのアダプタがそのままPSK31に転用できるために、SSTVの愛好者が一斉に運用を始めた事情があるといわれています。14.070MHz付近をUSBモードで聞いてみてください。笛を吹くような連続信号を聴くことができるでしょう。笛といっても単一信号ではなくて口笛のように音域がわずかながら変化しています。この音の正体がPSK31と呼ばれる文字通信ということになります。

ハードウェアは、HF帯の無線機とペンティアム以上のCPUで、サウンドカードを備えたパソコンがあれば十分です。無線機のデータ入出力端子(ACC)とサウンドカードを接続し、入出力のレベル合わせとPTTを制御するのための簡単なアダプタを挿入します。これだけでパソコンのキーボードから文字通信を楽しむことができます。難関があるとすればタイピングと英語でしょうか。10本の指を使う本格的なタイピングでなくても構いません。2~3本ずつの指使いでもオペレートが十分に可能ですし、通信文に自信がもてない方でもアマチュア用語を並べるだけでOKです。それにPSK31は2バイトの文字も送受できるので、国内QSOはひらがな/カタカナ/漢字で行われることもよくあります。ワープロに慣れ親しんだ方には、もってこいの文字通信かも知れませんね。

PSK31は20~50Wの電力でDX交信ができると言われています。本格運用を前にして、トランシーバーの送信電力を最小に絞って「TEST DE JA1×××」とキーボードを叩いていましたら、HL1の知人がコールしてきました。5W程度の出力に応答してきたわけですから、「PSK31は少ない電力で交信できる」を体験して、すっかり味をしめてしまいました。送信電力が少なくてもDX交信を楽しめるということは、住宅密集地でHF帯の運用を躊躇されている方には朗報でしょう。DXペディションでもPSK31の運用が多くなってきましたし、PSK31だけでエンティティの獲得を楽しまれる方もおられます。RTTYからPSK31に参入する方も増えてきました。ニューモードに敏感な方は、ほどなく14.070MHzや21.070MHz付近に全員集合ですね。

8J1HAMでPSK31を運用中のJA1AYC

PSK31のソフトウェアとシステム

PSK31を始めるには、HF帯のトランシーバーが必要です。ICOMの新鋭機IC-756PROIIや間もなく発売の新型 IC-7400ならPSK31/SSTV/RTTYの運用に最高です。特にIC-756PROIIとIC-7400は、SSBのフィルターを50Hzまで絞り込むことができるので、PSK31の運用に最適です。他社機では、ここまでフィルターを狭くすることはできません。もちろんお手持ちのHFトランシーバーでもそのまま使えます。トランシーバーの背面パネルにACCソケットがありますので、アダプタを介してパソコンのサウンドカードを接続します。ソフトウェアはフリーウェアのLoggerを用意します。

PSKGNR V1.34(http://www.al-williams.com/wd5gnr/pskgnr.htm) も有名ですが、ここでは使い勝手の良いLoggerを中心にお話を進めます。ただし、Loggerは日本語(ひらがな/カタカナ/漢字)に対応していませんので、日本語QSOに対応したソフト、PSK31SBWもお勧めです。注1
vアダプタは実体図解のとおり、簡単な回路構成となっています。回路には小型のトランスを挿入してインピーダンスの整合とアイソレーション(isolation 隔離、遮断)をとることで、送信時の回りこみを防いでいます。受信のAFレベルの調整ができ、PTT回路を設けてイージーオペレーションを実現しました。トランシーバーとアダプタ、パソコンの接続は、小型HF帯トランシーバーIC-706MKIIGを例にしますと、後面パネルのACCソケットに13ピンプラグで接続します。13ピンプラグの配線は次のようになります。

[12] AF(AFツマミに関係しない受信検波の出力端子-----パソコンのLINE INまたはMIC IN
[11] 変調回路への入力端子-----パソコンのSP OUT
[ 3] 本機と外部機器を連動して送信状態にする入出力端子-----パソコンのRS-232C(RTS/GND DB25 pin4/7 DB9 pin7/5)

アダプタの実体配線図

Loggerのダウンロード

K4CYが開発したフリーウェアのLoggerをW5BBRのホームページからダウンロードします。Loggerをクリックしますとメイン画面でConfiguration(要素・部分の相関位置、配置)が展開されます。また、微妙な操作が要求されるPSK31のチューニングは、スペクトラム表示により目的の信号に簡単にあわせることができると教えてくれます。

Loggerのダウンロードはhttp://www.w5bbr.com/LogBook.html にアクセスして、 初めての方はLogger Ver.7.07B- full Ver.をクリックします。注2すでにLogger Ver.6xxを使っている方は7.07B- up date onlyを選択します。インストールの際に上書きを要求されても「いいえ」で先に進みます。もし「はい」または「すべて上書きする」を選びますと、開発者のコールサインがConfig画面に現れて削除、変更ができませんので注意が必要です。

首尾よく、PC画面にLoggerが展開されて送受信ができるようになりましたら、いよいよ交信です。CQは「CQ CQ CQ de JA1××× JA1××× JA1××× K」、誰かを呼び出すには「J○3××× de JA1××× PSE K」、呼び出しの応答は「J○3××× de JA1××× Thank you for the call very glad to see you.」注3で始まり、RST、QTH、名前の紹介などが続きます。通信文はCWのような略語も使われますが、普通語で綴るのも読みやすくてよろしいかと思われます。特にPSK31はミスタイプをバックスペースで直せますので、正しいスペルと簡潔な文章を心がけますと読みやすくなります。
 

注1
日本語による国内QSOは、ほとんどが10MHz帯(10.140-10.150MHz)で行われています。PSK31SBWというソフトで日本語QSOに対応しています。これは、下記からダウンロードできます。http://bipt106.bi.ehu.es/psk31.html
注2
Ver.8.07は下記のWebサイトからダウンロードできます。
http://www.qsl.net/kc4elo/ フルパックはVer.7.09で、それからVer.8.07にアップデートする必要があります。
注3
JA1AYC 松本正雄「文字通信に欠かせないタイピング」モービルハム2000年2月号 p.74~77が参考になります。