いつのまにかパソコンが1台また1台とシャックに入り込み、無線機とパソコンが仲良く同居するようになりました。無線機のACC端子(あるいはマイクとスピーカ端子)とパソコンのRS-232Cあるいはサウンドカードとケーブルでつながっていて床の上を配線が縦横に走り、見学に来られた方から「よくまあ障害が起きないものですね」とご心配をいただくほど無線機とパソコンが各種ケーブルでしっかり接続されています。これはSSTVやPSK31、RTTYを運用するために、配線が1本また1本と増えていったからにほかなりません。その上、USBケーブルとRS-232CケーブルがISDNのターミナルアダプタを経由してインターネットにつながっているのですからシャックの床は配線の束が行き交い足の踏み場もありません。今回は配線が増える元となりましたSSTV(スロースキャン・テレビジョン)に的を絞り、美しいカラー画像が送信・受信のできる設備をご紹介し、あわせて魅力的なSSTVの世界をご紹介いたしましょう。

ノートパソコンでSSTVの運用が簡単に

スロースキャン・テレビジョンをSSTVの略称で呼ばれています。SSTVはアマチュアバンドでカラー画像を送信・受信するもので短波帯なら地球規模の遠距離交信が楽しめ、DXペディションにも欠かせないモードとなりました。CWやSSBに混じりSSTVやPSK31が運用されるようになった理由として、SSTV愛好者からのリクエストに加えて機材が手軽になったことがあげられています。TFT液晶ディスプレイの16,777,216色の表示とサウンドカードを標準装備したノートパソコンの普及と同時に、Windows95,98(SE、ME)に対応したSSTVソフトが次々に発表されて手軽に扱える環境が整ったことが、普及の原動力になったと考えられます。

SSTVの運用に際しては、簡易なアダプタを挿入して高周波の回り込みを対策するなど若干のノウハウがありますが、画像にコールサインとRSV(通常のRSに加えてVidual、1~5評価を加えます)を素早く貼り付け、時には受信した相手の画像を張り込んで送信するテクニックを身に付ける楽しみもあります。相手画像の貼り付けは、「こちらにこのように届いていますよ」というメッセージの一つでRSVレポートに勝る利点があります。一方ではSSTVによるDX交信もスリリングで興味をそそられるものがあります。ヨーロッパとの交信を一度経験されますと、病み付きになるような側面があります。信号が弱くてもぼうっと浮かび上がる画像に目を細めて自分のコールサインを確認したときの興奮は忘れられるものではありません。

モービル局も楽しめるSSTV

V/UHF帯の近距離交信でしたら10~20ワットの電力でも十分にSSTVの運用が楽しめます。できれば早い機会にHFバンドの運用を始められたらよろしいと思います。SSTVの運用周波数は7.030MHz、14.230MHz 、21.340MHz、28.680MHzでピロピロ音が聞こえますので、ダイヤルを合わせて聞いてみてください。HF帯で運用する場合は50~100Wの電力が欲しいところですが、中には10Wの電力で楽しんでいる方もおられます。筆者の場合、車に搭載したHF~430MHz帯オールモードトランシーバーIC-706MKIIGMと短縮型のホイップアンテナの組み合わせでSSTVを運用しますが、移動局の50Wはかなりの実力があると見ています。どのバンドであれ国内QSOに不自由は感じません。ここで注意しなければならないのは、SSTVの電波は何分かの連続送信になります。無線機の方は問題ありませんが、モービルアンテナの短縮コイル(ローディングコイル)がSSBで耐入力が100W超のモービルアンテナでもSSTVなら20~30Wが限界となります。50Wをフルに出すためにはコイルの強化などの対策をしなければなりません。

SSTVのソフトウェア

これまでSSTVのソフトウェアは外国で開発されたものがほとんどで、
WinPix 32(K0HEO)、JV-comm32(DK8JV)、W95SSTV(N7CXI)、Hiscan(OZ2LW)、EZSSTV(WB2OSZ)、ChromaPix(N7CXI)、MSCAN(PA3GPY)などが日本で普及しており、それぞれを支持する愛好者が普及に努めておられます。最近になりMMSSTV(JE3HHT)が多くの支持を得て普及の兆しが見えてきました。日本発のMMSSTVがヨーロッパでも使われ始めたといううれしい話が聞かれるようになり、ソフト開発に弾みがつくのではないかと期待が高まります。

筆者が愛用するWinPix32は、Windows98に対応していて、インストールは簡単で操作性も気に入っています。パソコンと無線機の接続はサウンドカードのLine in(あるいはMic in)を無線機のSP端子に接続、同じくSP outを無線機のマイク端子につなぎます。トランシーバーのACCソケットの利用もお勧めです。ケーブルの接続が完了しましたらPC画面右下のスピーカーのアイコンをダブルクリックしてミキサーを呼び出し入・出力を調整します。送信画像には相手と自局のコールサイン、それにRSV、名前などの文字を挿入しますが、それらの機能はほとんどのソフトが対応しており、受信画像を送信画像の一部にコピー&ペーストして送信する方法が多用されています。本格的な画像処理を目指すようでしたらPhotoshopなどを使いこなす必要も出てきましょう。紙焼き写真をスキャナーで取り込みメモリーに残すのも一つの方法ですが、デジタルカメラのスマートメディアからあるいはダイレクトにパソコンに取り込む方法がより簡単で使いやすいのでお勧めです。今年もJASTA主催の「アクティビティコンテスト」が8月1日から31日まで実施されますので、この機会にSSTVに挑戦してはいかがでしょう。