道路交通法の一部改正から早くも1年が経過し、携帯電話に関係する交通事故が減少傾向にあるといわれていますが、携帯電話に起因する事故の多発は変わらないと報告されています。改正された法律の要点は、「運転者は車の操作に専念し、ひたすら前方を注視する」ところにあると理解して、私なりに取り組んだモービル局のささやかな改善策について、ここに紹介させていただきます。

ハンズフリー装置というよりは、手作りのモービルマイクと言いかえた方が聞こえがよいかもしれません。ダッシュボードのくぼみにセットしたパソコン用の小型マイクで音声を拾う簡単な仕組みです。開発のコンセプトは「口元から50センチ以上離れていても明瞭な交信が楽しめるハンズフリーマイクロホン」を目指しました。その上、①簡単なマイクアンプ、②パソコン用マイクの流用、などの仕様を仲良しのH氏に示して作っていただきました。パーツ代は千円以内のローコストが自慢です。

装置が完成したらモニターしながら200ΩのVRを調整します。使用に際しては窓を締め切ることと、車内が静かであることが条件となります。スポーツカーのようにエンジン音を楽しむ車には、このシステムが適さないのは当然で、もしノイズの中で使うとすればマイクつきのヘッドセットや咽頭マイク、耳マイクなどの採用が必要となります。胸元につけるピンマイクははじめ候補に上がったものの、車の乗り降りの際に取り外しが面倒なところから除外しました。ただし、ピンマイクは口元に近くなりますのでノイズにも強く、取り扱いも簡単で市販の製品に捨てがたい魅力があり、一時的にはワイヤレスマイクの使用を模索しましたが、やはり装置自体の複雑化は避けられず、当初の設計仕様を守れば、これも自然に除外されました。

モービル運用の勧め

試作したハンズフリー装置をICOMのIC-706MKⅡGMトランシーバと組み合わせました。(ICOMのモービル機のマイクコネクタはすべてモジュラーですから、自作の場合はモジューラーから8ピンへの変換コードなどが必要です。)車は少し大きめのNISSANセフィーロ25 Excimoです。これにIC-706MKⅡGMのフロントパネルを本体から外してセンターコンソールに取り付けました。本体とアンテナチューナーAT-180は助手席の下に配置してあり、これ一台でHFから430MHz帯までオールモードで運用できますので、スマートなモービルシャックを作ることができました。お気に入りのIC-706MKⅡGMにはオプションの高安定度基準発振水晶ユニット(CR-282)と受信DSPユニット(UT-106)、CWナローフィルター(FL-232)を装備しました。

アンテナはリアフェンダーに装着した14/21/28MHzの3バンドタイプで、聞こえる信号なら出力50ワットの電力でコールすればたいてい応答があります。海外の顔見知りとドライブしながらの交信する味はまた格別で、昭和40年ごろから始めたモービル運用を飽きることなくいまだに続けています。IC-706MKⅡGMとアンテナをバッグに入れてオーストラリアを訪問した際、シドニーから首都キャンベラに向かうルートでニュージーランドの局と21MHz帯でおしゃべりができましたし、バンドを変えて7MHz帯で北海道の局と交信した思い出があります。ノイズリダクション機能を使ったら受信は快適で明瞭、大げさな言い方をお許しいただければ、信号は浮き上がってよく聞こえてきます。

実際の操作は小箱に仕込んだPTTのスイッチをオンにしてしゃべりますが、マイクに向かってというよりは、前方を向いたままの姿勢で通話するのですから、同乗者と話を交わすのと変わらないところがミソになります。交差点等でおまわりさんと目が合ってもとがめられる恐れがありません。ここで発想の転換です。モービルトランシーバのフロントパネルにマイクを埋め込むというアイデアはいかがでしょうか。「モービルトランシーバに内蔵マイクがあってもいいな」と書いたら、何をバカなことを!と技術陣から一蹴されるのがオチでしょうね。

道路交通法一部改正の要点

自動車の運転者は、「停止しているときを除いて、携帯電話等の無線通話装置を通話のために使用してはならない」(道路交通法第71条5の5)し、「自動車に取り付けられた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと」と規定されています。

「無線通話装置」とは、その全部または一部を手で保持しなければ送信および受信のいずれをも行うことができないものと規定され、携帯電話やハンディ型のトランシーバがこれに当たります。また「画像表示用装置」とはカーナビやカーテレビ、無線機の液晶ディスプレイ等がこれに当たるとされています。

携帯電話等を走行中に使用する場合でも、ハンズフリー装置を使用しているときや、据え置き型のモービル用無線機については規制されませんが、走行中のQSOや無線機の操作に気をとられ、交通事故を起すと安全運転義務違反(法第70条)となります。「画像を注視しないこと」の注視は何秒以上を指すのでしょうか。答えは2秒です。時速40キロでカーナビの画面を2秒注視しますと、車は20メートル進む計算になり危険なことがわかります。
v携帯電話とカーナビに関する規定に罰則や違反点数はありませんが、違反行為の結果、道路における交通の危険を生じさせた者には、罰則(道路交通法第119条:3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金)が適用されます。行政処分の付加点数は2点、反則金は普通車で9千円、大型車で1万2千円になります。

【ご参考】
(1)ICOMオプションに「モービル機用アームつきマイクロホン」HS-62があります。
(2)回りこみにはフェライトコアなどで対策します。
(3)「JPHC霞ヶ関ニュース」MH1999年8月号p.94~95