1.はじめに

トランシーバ等のキットを頒布をされているJL1KRA中島さんですが、それ以外に写真1のようなチョコレート基板の頒布もされています。板チョコのようにパキパキと分割できるので、このように呼ばれるようです。ハンダ面は写真2のようになります。この基板をこのまま使う事もできますし、12枚に分割して使う事もできます。ひとつの基板内に4個の7Sコイルを載せる事ができるのが、大きな特長です。また、同調用のコンデンサ等の実装もしやすいように考えられています。従ってRFアンプや発振器などを、回路ユニットとして作るのにとても便利な基板です。WEB(http://www.geocities.jp/mx6s/chocolate.html)で入手する事ができますので、実験とかツールの作製をされる方は試してみてください。

photo

写真1 一枚の基板の中に、12枚の小型基板が入っています。

photo

写真2 裏からみたところです。

早速に入手し、写真3の50MHzアンプと写真4のVFO用アンプを作ってみました。目的が違うだけで、基本的には全く変わりません。

photo

写真3 実験用の50MHzアンプです。

photo

写真4 VFOの出力用アンプです。

2.50MHzアンプの作製

まず、図1のような50MHzのアンプです。目的が普通のアンプを簡単に作る事になりますので、2SK241を使ったオーソドックスな回路で作ってみました。コイルにはFCZコイルに準じた、手巻きのモドキコイルを使っています。もちろんコイルとコンデンサを交換すれば、HF~50MHzのどの周波数にも転用可能です。

photo

図1 50MHzアンプの回路図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

作製はチョコ基板をはじめにカットします。イメージ的にはパキパキと折りたいのですが、実際にはカッターナイフで両方から切れ目を入れ、慎重に分割しています。少なくとも、板チョコのように折ろうとはしないでください。分割すると写真5のような小型基板になります。ハンダ面が写真6です。

photo

写真5 1/12に分割したところです。

photo

写真6 そのハンダ面です。

7Sタイプのコイルがそのまま使えますので、実装図を作るほどでもありません。しかし今後の事もありますので、図2のように実装図を作ってデータ化しておきました。これで他の周波数で作る時も、そのままコピーできます。電源入力にはユニバーサル基板に合うというDCジャックを使い、このピンが無理なく使える位置にしました。

photo

図2 50MHzアンプの実装図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

実装図に従って基板のハンダ付けを行い、写真7のようなエッジタイプのSMAコネクタを使って、入出力にしてみました。このコネクタは、普通は両面基板を挟む使い方をします。今回の基板は片面ですが周囲がアースに囲まれています。ですから、センターをハンダ面に持ってくると地絡する事になります。そこでコネクタのセンターを部品面側にして、写真8のようにジャンパー線でコイルに接続しました。アース側はメッキ線で基板をスルーさせて、両面でガッチリとハンダ付けしています。これならコネクタの抜き差しでテンションが加わっても、銅箔が剥がれるような事はないでしょう。完成したところが写真9です。ハンダ面が写真10です。コネクタは結構ガッチリと固まっています。

photo

写真7 エッジタイプのSMAコネクタを使いました。

photo

写真8 SMAコネクタの接続方法です。

photo

写真9 完成した50MHzアンプです。

photo

写真10 そのハンダ面です。

3.VFO用アンプの作製

図3の回路は、ローカル発振器用のアンプです。これはNo.163で作った21MHzのDDS-VFO用に使うのが目的ですので、回路は基本的に変えていません。No.163では全体の都合で信号の流れが右から左で、少々見難かったと思います。今回は通常どおりに左から右に書いています。周波数は同じ21MHzですが、IFを12.8MHzにしていますので出力周波数は37.2MHzとなります。No.163と同じように入力に半固VRを入れて、レベルの調整をしています。

photo

図3 VFO用アンプの回路図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

このアンプは、図4の実装図を作りました。写真11のように基板側でBNCコネクタのハンダ付けをするため、形状に合うように多少基板を削っています。そしてハンダ付け用のスズメッキ線を予め用意しておきます。そして写真12のようにBNCコネクタを直付けしました。このようにコネクタを直結する場合、両面基板だとハンダ付けがやりやすいし機械的にも丈夫に作れます。片面基板ですので、写真13のようにハンダ面でもスズメッキ線を基板の穴を通してハンダ付けしておきます。これを表裏で4カ所ずつ行っていますので、しっかりと固定できますしコネクタのGND側の配線も済みます。このハンダ付けには60W程度のコテで、さっと行うのがコツです。写真14が完成したところです。電源入力はVFOの本体に合わせて、JSTのEHシリーズのコネクタを使っています。

photo

図4 VFO用アンプの実装図です。(※クリックすると画像が拡大します。)

photo

写真11 BNCコネクタに合わせて多少基板を削りました。

photo

写真12 BNCコネクタを直付けしたところです。

photo

写真13 裏表で直付けしました。

photo

写真14 完成したところです。

4.測定

VFO用アンプは入力にVRが入っていますので、50MHzアンプだけ測定してみました。基本的には同じです。測定用のケーブルは基本的にBNCコネクタを使っていますので、写真15のようにSMAとBNCの変換コネクタを使って測りました。その結果は測定結果1のように、ピークで26.28dBのゲインとなりました。

photo

写真15 変換コネクタをつかって測定しました。

photo

測定結果1 50MHzアンプの特性です。(※クリックすると画像が拡大します。)

5.使用感

この場合は、アンプの使用感というよりも、基板の使用感でしょう。このように7Sのコイルを使ってアンプが気楽に作れると、実験を積み重ねるような時に便利です。また機器に内蔵し、たまに交換するような事も可能です。もちろん発振器にも使えるでしょう。コイルが4個入れられますので、もう少し複雑な回路も可能かもしれません。ただコイルが並んでいますので、2段アンプにしてゲインを上げるのは難しいでしょう。両方向のアンプは作れるかもしれません。切り離さずにワンボードのトランシーバに仕上げる事も可能でしょう。これから少しずつ改良を重ねて進化しそうな基板です。アンプとしても十分に50MHzで使う事ができました。また、DDS-VFOの出力アンプとして十分な実験ができました。

少し使い難い点は、ハンダ面のレジストが少々邪魔です。アース用にループが作られているのですが、つながり方が見難く思います。せっかく部品面には接続の様子が表示されているので、これはもったいないです。中島さんも十分に承知されているようですから、次のバージョンでは変わっているかもしれません。

数年もすると、良く使うバンド毎にアンプが揃ってしまうかもしれません。3~4MHz、7~9MHz、9~12MHz・・・のように、コイルの調整で合わせられる幅を明確にしておくと便利そうです。とりあえず写真16のように、袋にシリカゲルと一緒に保管しています。メッキ部分の劣化を防ぐため、最近では極力このようにしています。

photo

写真16 シリカゲルと一緒に袋に保存しています。

私はこのような使い方をしましたが、これが基板を作られた方の発想と同じなのかは分かりません。