1.はじめに

No.199でマイクロV電圧計を作製しました。作製というよりも実験で、250mVまでの電圧を7.8μVステップで測定します。概ね上手く動くのですが、1μVの変化を測るためには、やはりアンプが必要になります。絶対的な1μVのA測定は無理としても、1μVの変化を見ることができればマイクロワットメータとしてレンジが広げられるはずです。

このように考えて実験の続きを行い、写真1のようなDCアンプを作ってみました。取りあえずは、マイクロV発生器であるNo.198と、マイクロV電圧計である No.199の中間に入れての実験になります。もちろん可能であれば何にでも使ってしまおうという考えで、それが最終的な目標になります。

写真1 このように作った測定用のDCアンプ

2.回路

No.199のマイクロV電圧計を使ってダイオードで検波した出力を測ってみると、どうしたわけか上手く測れなくなりました。ノイズが多くなるのです。No.198のマイクロV発生器では出力インピーダンスが低く、問題なく測れました。そこでインピーダンスに問題があるのかと考え、多少、増幅をしながらインピーダンスを低くするようにしてみました。ここで使ったのが計装アンプです。マイナス側の領域まで増幅する必要はありませんので、プラス側の単電源で済むAD623を使ってみました。ここは何もせずにマイナス側も測れるNo.199とは、考え方が異なります。

使った計装アンプのAD623ANZは、秋月電子で入手しました。560円ですので少々高いICになります。このICを使ってブレッドボード上で写真2のように実験しました。No.198No.199を組み合わせて、トータルとしてどのように動くかを試しました。

写真2 ブレッドボードでの実験

それで試したところ5ピンのリファレンスをアースに落としていると、入力した微小なプラス側の値がブラックアウトしてしまいました。出力に変化が出てきません。そこで100kΩと100Ωを使って5Vの1/1000の5mVのバイアスをかけました。これで出力を少しだけ持ち上げると、変化が出るようになりました。しかし、出力にノイズレベルとDCバイアス成分が出てしまいます。そこで、これらをデジタル的にキャンセルするようにしました。これがNo.199に遡ります、18ピンに入るVRです。AVRの10ビットのA/Dコンバータで変換した0~1023を、手動で設定できる事になります。16ビットでA/D変換した値からノイズ+DCバイアス成分として引き算をして、信号成分だけを取り出します。こんな方法で良いのかは良く解りません。

このように考え図1のような回路としてみました。1ピンと8ピン間の抵抗でゲインが調整できます。ゲインを大きくするよりも、インピーダンス変換のつもりで×2としました。そして多少は増幅してみようと×11にも切り替えられる設定にしました。これで7.8μVステップも計算上は0.71μVステップになります。実はこれが一番怪しいところでもあります。

図1 回路図

3.作製

図2のような実装図を作製し、ハンダ付けを開始しました。使用したのは、秋月電子のC基板と呼ばれるサイズのユニバーサル基板です。一般的なタイプ。図3がハンダ面のレイヤーです。特に面倒な部分もありませんので、簡単に完成すると思います。写真3がハンダ付けした後の部品面の様子です。目的からしてどうかと思ったのが、今回入力端子に使用したコネクタです。もちろん入出力にはクリップなど使用せずに、ネジ止めする方が良いはずです。ICソケット、スライドスイッチ等の、接触部分のあるような部品は排除すべきなのでしょう。理想的な作り方は可能ですが、その効果の検証が私には困難そうです。このような実験目的ですが、写真4が出来上がったハンダ面の様子です。今後、様々な使用目的が出て来るかと思います。仕上げに写真5のように、C基板用のアクリル板をネジ止めしておきました。
 

図2 実装図

図3 実装図のハンダ面

写真3 ハンダ付けした後

写真4 ハンダ面

写真5 アクリル板をネジ止め

4.使用感

初めて計装アンプを使ってみました。普通のオペアンプだと、どうだったのかとも思います。特にコモンモードのノイズがあるという事もありませんでしたので、オペアンプでも使えるはずです。まあ計装アンプを使ってみたかったというのが本当のところです。これを写真6のようにNo.198No.199の中間に入れています。
 

写真6 実験の様子

このような実験を行うと不思議な事が多く、うまく表現できない状態が多々あります。電圧を微小にした時に起こるのですが、全体の足し算や掛け算のつじつまが合いません。ノイズも不思議な増減をします。もちろん、電圧が多少でも高ければ全く問題なく動作します。

ダイオードで検波した直流電圧を本器で増幅し、No.199で測ってみました。ノイズが大敵なのですが、アンプを入れても全体的には大差がない感じでした。ゲインが×2でも×11でも同様です。当分は悩みが解決する事は無さそうです。