Onlineとーきんぐ
No.201 「R820T SDR & DVB-Tドングルの放熱対策」
ドングルレシーバーと呼ばれるR820T SDR & DVB-Tは、通電してすぐにIC(集積回路)チップの発熱により受信周波数がずれる、受信感度などの性能低下が指摘されており、改善のための様々なアイデアが発表されています。ここではリン青銅板を加工したオリジナルのヒートシンクにより、放熱に成功した話を披露します。
スマホにR820T SDR & DVB-TをつないでFM補完放送を受信中
SDRラジオについてはOnlineとーきんぐNo.153 「超かんたんSDR (ソフトウエアラジオ) 入門」、同No.168 「スマホにSDR TOUCH+ドングル」を参照ください。またNo.200ではICチップの表面温度が、簡単なヒートシンクの効果により56℃から29℃に下がったと報告しました。
リン青銅板ヒートシンクとアルミチップ
ドングルはケースの合わせ目に爪を入れると容易に開けることができます。
ケースを開けたR820T SDR & DVB-T
左側の大きなICチップが一番発熱(56℃)するので、放熱対策にリン青銅板を写真のように切り抜いて、USBプラグに半田付けしました。ICチップの発熱はリン青銅板を通してUSBプラグの金属部に逃す効果が期待できます。
加工したリン青銅板とアルミチップ
さらにリン青銅板の弾性を利用してICに押し付ける形にします。半田付けを終えたところでリン青銅板とICチップの間に瞬間接着剤を少量流します。ケースと基板の間はぴったりして余裕がないので、リン青銅板が基板からわずかでもはみ出すと、ケースが閉まらないためヤスリで削り微調整しました。アルミチップはICチップに両面接着テープで貼り付けました。
リン青銅板製のヒートシンクを取り付けた様子
USB(micro B to A)変換ケーブルに接続
白色のUSB-Cタイプ変換アダプタ(左)をスマホにつなぐ
ドングルとスマホ(Huawei P9)の接続はUSB(micro B to A)変換ケーブルとUSB-Cタイプの変換アダプタが必要です。
ICチップにアルミ片を載せて改造を終える
ICチップの表面温度を測定しました。改造前の56℃からヒートシンクの効果により約26℃に下がりました。
赤外線をヒートシンクに照射して表面温度を測定
ICチップの表面温度はINFRARED THERMOMETER(BENETECH GM320という赤外線放射温度計を用いて測ります。対象物に赤外線を照射するとディスプレイに摂氏または華氏にて温度を表示します。写真の赤い点はリン青銅板に赤外線が当たっているところです。測定範囲は-50~380℃(‐58~716F)、Amazonから1,500円で購入しました。
赤外線放射温度計 GM320の外観
小型ヒートシンク(1)
秋月電子通商からRaspberry Pi B+用ヒートシンクセット(120円)2組と、40×40mm熱伝導テープ(100円)を購入しました。大事なのはヒートシンクの位置決めです。ケースの内部の突起を避けてうまく収まる位置を探さなくてはなりません。それができたところで放熱器をICチップの上に貼り付けて仮組の状態で放熱効果を測定しました。
熱伝導テープ(左)とRaspberry Pi B+用ヒートシンクセット(右下)
ICチップにヒートシンクを載せた様子
小型ヒートシンク(2)
秋葉原のaitendoからテープ付きヒートシンク(60円)を5個、購入しました。ヒートシンクの寸法は14 × 7 ×14 (mm)、材質はアルミ、黒です。表面積が広い分、放熱効果が期待できそうです。
テープ付きヒートシンク(下)
ICチップのサイズに合わせてヒートシンクを選び、両面テープで貼り付けます。この時も仮組の状態でケースに基板がスムーズに入ることを確認します。内部の突起に当たる場合は、高さに合わせてヒートシンクの加工が必要になります。
ドングルにヒートシンクを載せた様子
基板の側面を見るとわかるように、ケースにスムーズに入るように高さを揃えてあります。ヒートシンクを載せて表面温度を測定すると、いずれの箇所も30℃以内に収まっていて一定の放熱効果を確認できました。
ドングルの側面
スペクトラム + ウォーターフォール
SDR Touchの画面を示します。スマホ(HUAWEI P9)にインストールしたSDR Touchのスペクトラムとウォーターフォールです。
(FM補完放送の93.0MHzニッポン放送を受信)
SDR#の画面を示します。最新のRTL-SDR#(SDR# rev 1573)は以下のサイト( http://airspy.com/ )の「Download」から入手できます。
64ビットWindowsにも対応しています。
最新のRTL-SDR#のスペクトラムとウォーターフォール
あとがき
ドングルの放熱対策は友人たち(JA1CVF、JF1GUQ)の創意工夫から生まれました。ネット通販にSDR専用チューナー専用放熱プレー+小型ヒートシンク搭載キット(1,480円)などが見られますが、ここではリン青銅板を加工した材料費のかからないオリジナルのヒートシンクを紹介しました。この後、RTL2832U+E4000ドングル+HFコンバーター、簡易スペクトラムアナライザーなどの実験に取り組みたいと考えています。