OnlineとーきんぐNo.208「今さら聞けないルーターとパソコンの設定」ではID-31PLUSにより、Windows PC端末からターミナルモードにてインターネット回線に接続し、ゲートウェイ通信を構築したてん末を述べました。今回はその続きとしてID-31PLUSをアクセスポイントとし、クライアント機のID-31によりゲートウェイ通信を行うものです。因みにJARLのD-STARログイン(http://www.d-star.info/usr/usr_login_disp.php)から[運用ログの参照]を開くと、[使用レピータ欄]と[中継先レピータ]にアクセスポイントが目立つようになってきました。

ターミナルモードはデータ通信ケーブル(OPC-2530LU)により接続されたID-31PLUSを操作してゲートウェイ通信を行うもので、運用時はPCに接続したデータ通信ケーブル(OPC-2530LU 53cm+OPC-1637 150cm)の長さ約2mの範囲に限定され、ケーブルの耐用性を考慮して、アクセスポイントを構築してワイヤレスで操作したいと思うようになりました。ID-31を持って部屋の中を動き回り運用ができる利点があります。送信レベルを最小の0.1W に絞り家の外で運用してもゲートウェイ通信ができました。

機器情報の登録変更

すでにターミナルモードの構築時にD-STAR機の登録を済ませていますが、改めてその設定項目を例示しておきます。D-STARのメニューからコールサインの登録を行います。記入する項目はコールサイン、メールアドレス、登録携帯(社団・個人)、クラブ名あるいは氏名、連絡先(住所など)、電話番号、JARL会員(会員・非会員)、パスワードなどを記入して[登録]します。

機器情報の登録変更

D-STARのメニューから[機器情報の登録変更]を開いて必要事項を記入します。

私の場合を例示しますと、次のようになります。

 

  機器名 無線機名 IPアドレス 機器名の公開可否 公開メッセージ
1 なし ID-92 10.1.60.*** 公開  
2 A ID-31 10.1.60.*** 公開  
3 B ID-31PLUS 10.1.60.*** 公開  

(注)IPアドレスの一部を伏せました。

  公開メッセージ欄は空白のまま登録しました。

コールサインはJA1FUY AがID-31、JA1FUY BがID-31PLUSとしました。ID-31は移動する局、ID-31PLUSが200W移動しない局として免許されています。

アクセスポイントモードに必要な機材

前回に続いてD-STAR環境構築図を掲載しました。アクセスポイントモードに必要な機材が一目でわかりますので参考にされてください。アクセスポイント側のWindows10ノートPCは中古のHP EliteBook(i7)を使いました。

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D-STAR環境構築図(※クリックすると画像が拡大します。)

1.ID-31PLUS(アクセスポイント側無線機)

2.Windowsノート PC

3.Windows用ソフトウェアRS-MS3W

4.データ通信ケーブルOPC-2350LU

5.ID-31(クライアント側無線機)

ルーターとパソコンの設定はOnlineとーきんぐNo.208にて済ませていますので、ここではクライアント機(ID-31)とアクセスポイント側のID-31PLUSの設定を行います。詳しくはアイコムのWebサイトから「DVゲートウェイ機能について」(PDF)をダウンロードして「アクセスポイントモードで運用する」をご覧ください。

アクセスポイント側無線機(ID-31PLUS)の運用周波数

ID-31PLUSは[DVゲートウェイ]を選択し、次いでアクセスモードを選択、[DIAL]を回して運用周波数を設定します。

430MHz帯(周波数:MHz)バンドプラン

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バンドプラン(※クリックすると画像が拡大します。)

(注)430MHz帯抜粋(平成27年1月5日施行)432.10~440.00MHzを省略しました。

アクセスポイントの運用周波数は法令上のVoIP、または全電波型式に指定された周波数を使用します。ここでは430.850MHzに設定しました。VoIPは音声を圧縮してパケットに変換した上でインターネット接続網を介した通信(EchoLink、D-STAR等)を意味します。運用にあたっては、送信する前にその周波数を他局が使用していないか確認し、混信や妨害を与えないように注意するのは当然です。

アクセスポイントモード運用中の操作、DR機能でアクセスするレピータを設定する、宛先に(To)を設定し、送信する、等々については、「DVゲートウェイ機能について」に詳しい説明があります。そちらをご覧ください。

Windows用ソフトウェアRS-MS3W

ID-31PLUSのデータ端子とノートPCのUSBポートの間を別売品のデータ端子OPC-2350LUを接続します。そして、Windows用ソフトウェアRS-MS3WのダウンロードとPCへのインストール並びに設定はOnlineとーきんぐNo.208で述べたとおりです。COMポートはデバイスマネージャーからポート(COMとLPT)を開き、USB Serial Port(COM5)から確認できます。運用を始める時に[開始]ボタンをクリックし、終わるときに[停止]ボタンをクリックします。

Android端末用のアプリRS-MS3A

DVゲートウェイ機能を使用するためのAndroid端末用のアプリケーションです。Android端末(私の場合はHuawei P9)の「Playストア」をクリックして専用ソフトウェアをダウンロードします。設定は[ゲートウェイコールサイン]をJA1FUY Bにして、他の項目はデフォルト(初期値)のままです。運用を始めるときは[開始]ボタンをクリックします。

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RS-MS3Aアプリ

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RS-MS3Aのメイン画面

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RS-MS3A[管理サーバーアドレス]をクリックしたときの画面

携帯電話回線に接続する

スマホに専用ケーブルでID-31PLUSを接続します。USBケーブル(Android端末用)の一端はマイクロUSB BコネクタですからUSB Type-Cに変換アダプタを介してHuaweiP9のデータ端子に接続します。RS-MS3Aを起動して開始ボタンをクリックし、ダメもとで「ならやま自動応答」にアクセスしてみました。残念ながらおなじみの音声が聴こえません。こちらの信号が到達していても、戻りの信号を受け取れない状況にあります。つまりグローバルIPアドレスが割り当てられていないSIMを使っていることに原因があります。

グローバルIPアドレス(固定)SIMプラン

そこで、グローバルIPアドレスが使える格安SIMプランを探してみました。データ通信専用プランの月額(税込)1,080円~、SMS(ショートメッセージサービス)ありのデータ通信専用プランの月額(税込)1,231円~(SMSの受信は無料)です。SMSの送信は1通あたり3円~(文字数によって変動します)の送信料金が発生します。グローバルIPアドレスが付いて高速データ通信も選べます。ほかにインターリンクLTE (データ通信) 128kbps使い放題プラン 1,080円からというのもあります。

M2M用途IoTなど山間部など遠く離れた場所を監視する用途や、遠隔操作時に必要な固定グローバルIPアドレスが使える格安SIM会社に絞って調べてみました。固定IPアドレスのデータ通信専用SIMならインターリンクLTEが使い勝手が良いような印象です。1分あたり1Mbpsオーダーの通信を想定するなら、「128kbpsで使い放題プラン」があります。128 Kbpsなので、瞬間的なスピードが期待できませんが、上下最大128kbpsで使い放題が大きなメリットです。データ通信専用プランは月額(税込)1,080円からになります。インターリンクLTEは、すべてのプランに必ず1つの固定IPが付いています。

※Machine to Machine:個別に稼働している機器同士をネットワークでつなぎ、人が操作することなく、機器間で情報を収集したり機器を作動させたりするシステムを意味します。

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SIMカード/microSDカードスロットがあるHuaweiP9

ところで、世の中には「SIMデュアルスタンバイ」ができるスマホがあるらしいので、P9スマホのSIM/メモリスロットを引き出して観察してみました。スロットの左がメモリカード、右側にSIMが入っていました。メモリカードを外して2枚目のSIMが装着できるかと期待したのですが、スロットの縁に「SD ONLY」の文字があり、SIMカードの2枚挿しができません。別途SIMを交換する方法を考えてみたものの、楽天Mobile の契約は2年間の縛りがあり、満了日が2018年の8月までなので、それまで待たなくてはなりません。とりあえずグローバルIPアドレスの契約を一時見合わせることにしました。

あとがき

アクセスポイントモードを構築した後、「東京日本橋430レピータ」にアクセスしてゲートウェイ通信をおこない、CQを出すと友人のJF1GUQと交信することが出来ました。続いてD-STAR LOG inを開いて「レピータのアクセス状況」並びに「運用ログの参照」で自局のコールサインを確認できました。携帯電話回線のグローバルIPアドレスが使える格安SIMは、レピータがない場所でもゲートウェイ通信ができる便利さが魅力であっても、新たなSIMの契約に躊躇するものがあります。もし、3か月あるいは6か月の短期契約があるなら試してみたいと思います。

参考資料:ID-31PLUS簡易マニュアル、ID-31PLUS活用マニュアル(PDF)、DVゲートウェイ機能について、ID-31PLUS/ID-51PLUS2ターミナルモード/アクセスポイントモード対応ソフトウェアRS-MS3W操作説明書、データ通信ケーブルOPC-2350LU取扱説明書