1.はじめに
レシプロカル式の周波数カウンタは、周波数の測定時に周期でカウントし、逆数の周波数に変換するカウンタです。はじめから「Ⅰ」を付けているのは、次のステップとなる「Ⅱ」を作る計画があるからです。ちなみにNo.180で「Ⅲ」まで作った「ダイオード用カーブトレーサ」は、全くの無計画でした。

このカウンタでは、本格的なレシプロカル式の第一のステップとして考えています。取りあえずは、AFの周波数を速く細かく測る事を目的にしています。まだ半分は「おためし」という事もあり、写真1のようにボード上に組立てました。

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写真1 このようにボード上に組んだ、AF用のレシプロカル式の周波数カウンタです。

2.構成
普通のカウンタは図1のような構成で、基準を分周し0.1秒や1秒等のゲートタイムを作ります。しかし、これだと1秒のゲートタイムで1Hzの単位までしか測れません。10秒かけないと0.1Hzまで測る事ができません。いくら精度の高い基準を使ってもデジタルの±1の誤差は避けられませんので、精度を上げようとすると長時間かけて測らないと意味が無い事になります。特に周波数が低くなる、AFの場合はその傾向が大きくなります。

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図1 普通のカウンタの構成です。

そこで、レシプロカル式の本機では図2のように入力信号を分周し、ゲートタイムを作ります。例えば1kHzならばこれを1/1000として1秒の周期から0.5秒のゲートタイムを作ります。そして基準である信号をカウントします。ここでは3.58MHzを基準に使いました。もちろん正確には3.579545MHzです。するとゲートタイムが0.5秒ですので、1789772個のパルスをカウントしたとします。

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図2 レシプロカル式では入力信号を分周し、ゲートタイムを作ります。(※クリックすると画像が拡大します。)

周波数={(基準周波数 × 分周比 /2)} ÷ カウントした数
=1789772500 ÷ 1789772 = 1000.000279
と計算されます。1789772500の部分は、分周比によって決まる値です。固定値ですので、このように表現しています。

もちろん1カウント異なり1789773個のカウントとなる事もあります。
=1789772500 ÷ 1789773 = 999.9997206
となります。その差は0.00056Hzですので、およそ0.6mHzのステップで測れる事になります。周波数が低ければ低いほど「カウントした数」が増えますので、細かく測れる計算になります。普通のカウンタでは1秒で1Hzまでしか測れなかった事を考えると、これはもう雲泥の差です。しかも、この例では実質的には1秒かける事になりますが、0.5秒のゲートタイムで0.6mHzステップとなります。「おためし」なので基準には3.58MHzを使っていますが、当然高ければ高い方が細かく測れます。但し、今回はBASCOM AVRの計算をそのまま使っていますので、恐らく精度を上げるためにはアセンブラでサブルーチンを組む必要があると思います。

3.回路
前述のとおり実験的な意味合いもあります。図3の回路を見て解るとおり、今一つの感じと思います。やたらとロジックICが多く74HC00とか74HC14を使っているのですが、1回路しか使っていません。無駄とは思ったのですが、20円程度のICですので別の事を考えて泥沼に入るよりも、このまま使う事にしました。もちろん20円だから無駄に使っても良いとは思っていません。実は泥沼に入って、沈没するかと・・・。

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図3 回路図になります。(※クリックすると画像が拡大します。)

写真2のように、テスト用のボードとブレッドボードを組み合わせて実験を進めました。入力した信号を分周し、ロータリースイッチで1/100~1/10000を選ぶようにしました。そしてこれをゲートタイムとして基準の3.58MHzをカウントします。このように、入力した周波数によってゲートタイムを変えて基準の周波数をカウントします。ここではロータリースイッチを使って、最適な分周比を選ぶようにしています。もちろん、もっと上手い処理をする事も可能ですが、ここでは「Ⅱ」を頭に入れて簡単に済ませてしまいました。

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写真2 このように実験をして、回路とソフトを作りました。

レシプロカル式では、測定する周波数が高くなると自然にゲートタイムが短くなります。これが過ぎるとCPUがLCDの表示をしている間に、次のゲートが開いてしまいます。カウント値が低くなってしまい、カウンタとして使えなくなります。早くカウントできる限度がありますので、分周比は適正に設定する必要があります。もっとも読めないほど表示が早くなっても意味が無いので、普通はそんな設定にはしません。

4.作製
写真3のようなデジタル用と思われる基板を用いました。+5VとGNDのラインがICの下を通る構造です。20~30年ほど前は良くあった定番のパターンですが、最近では少なくなったように思います。TTLをたくさん並べるのに、とても使いやすい構造でした。これも時代の流れですが、ここで使わないと一生残りそうですのでモッタイナイ精神で使いました。どこで何のために入手したのかは全く覚えがありません。相当に古いものらしく、既に銅箔面には全くツヤが無くハンダが乗りそうもありません。そこで磨いてフラックスを塗り直し写真4のようにピカピカにしました。似たような基板でも、一般的なユニバーサル基板でも使う事ができると思います。もちろん普通のユニバーサル基板では、配線が少々面倒になります。写真3を見ると解りますが、磨く前にカッターを使って、不要な部分の銅箔をカットしています。このようなカットは、磨く前に行うのが良いと思います。部品面は写真5のような基板です。もう一枚ありますが、使い道があるのでしょうか。

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写真3 使用した基板です。TTLを並べるには便利な基板です。

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写真4 磨いてフラックスを塗って、このようにピカピカにしました。

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写真5 部品面はこのような基板です。

図4の実装図を作り、途中まで組み立てたところが写真6です。写真7が基板のハンダ付けが終わった様子です。基板のハンダ面が写真8になります。基板とLCDを直付けしていますので、ゴチャゴチャになってしまいました。この状態で入力と分周比の仮接続を行い、動作チェックを行っています。

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図4 実装図になります。普通のユニバーサル基板でも応用できると思います。(※クリックすると画像が拡大します。)

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写真6 途中までハンダ付けした様子です。

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写真7 基板のハンダ付けが終わったところです。

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写真8 ハンダ面の様子です。


なお、3.58MHzの発振器は、良くある正方形とか長方形のものではなく、3端子を使っています。秋月電子で見つけました。簡単に使えそうなので試してみたかっただけで、それ以上の意味はありません。実際に小型で使いやすいと思います。

次に、ゲートタイムを切り替えるロータリースイッチを別のプラスチックケースのSW-40に入れ、配線しているところが写真9です。このようなケースを使うのが、一番簡単にロータリースイッチを固定する工作と思います。アルミを曲げて金具を作るよりも、スマートでしょう。サイズ的にはギリギリでした。基板とこのプラスチックケースを生基板に固定したところが写真10です。ロータリースイッチの表示は分周比ではなく、測定できる周波数の限度を表示しています。この方が現実的と思います。

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写真9 ワイヤーの長さを合わせて、ロータリースイッチの配線をしている様子です。

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写真10 プラスチックケースを固定したところです。これでは見えませんが、蓋の方を生基板にネジ止めしています。

5.ソフト
基にしたのがNo.164のハイブリッド式周波数カウントです。計算方法を修正し、全体的なマイナーチェンジをしています。いつものようにBASCOM AVRを使って作っています。ソフトはここに置いておきますので、参考にして下さい。

ソフトダウンロード

なお、PCの環境はWINDOWS XPで、BASCOM AVRの製品版 VER.1.11.9.8を使ってコンパイルしています。書き込みはAVR ISPmkII ですが、基板のISP端子との接続には自作の変換ケーブルを使っています。これ以外の環境についての確認はしていません。

6.使用感
少々クセが強い印象もあるのですが、一度使うと普通のカウンタでAFは測れなくなります。それ程快適に早く細かく測る事ができました。このままでは、それ程の精度は出せないとは思います。しかし取りあえずAFですので、普通のカウンタ以上の精度は容易に出せるはずです。さて、次のRF用の「Ⅱ」はどうなるのでしょうか・・。