Onlineとーきんぐ
No.236「モバイルホットスポットopenSPOT・3」
2017年10月号の"QST"「SharkRF openSPOT Hotspot」(p.54-57)のリフレクタ(インターネット上の仮想レピーター)の記事「ホットスポット」*に刺激されてエストニア(ES)のSharkRF社からopenSPOT を取り寄せ、ホットスポットを始めた経緯をOnlineとーきんぐNo.212「SharkRF openSPOTでつくるホットスポット」で紹介しました。その後、2018年秋には"openSPOT・2"へ引き継がれ、さらに2020年1月、写真で見るようにサイズが一回り大きくなって登場したのが新型のopenSPOT・3です。
*一般的にアクセスポイントから受信できる場所を、無線LANスポット、Wi-Fiスポット、フリースポット、ホットスポットなどと呼ぶ。
▲モバイル3点セットのID-31とopenSPOT・3、Wi-Fiルーターdocomo L-04D。
ニューモデルopenSPOT・3
OpenSPOT・3はアマチュア無線用に設計されたバッテリー駆動のポータブルのデジタル無線インターネットゲートウェイ、すなわちモバイルホットスポットです。このopenSPOT・3はWi-Fiインターネットアクセス、Wi-FiルーターおよびID-31などを使用して、デジタル無線ネットワーク上の他の人と通話すことができます。
▲ 2017年発売の初代ホットスポット SharkRF openSPOT。
openSPOT・3の特徴はバッテリー内蔵とクイックセットにあります。戸外へ持ち出すだけならopenSPOT・2に外付けスマホ用補助バッテリーを付けるとモバイルホットスポットが構築できます。openSPOT・3の本体価格は€249(約3万円)+送料€30(3,600円)+輸入内国消費税1,700円、立替納税手数料1,100円の合計36,400円ですから多少高価に感じるかもしれません。
ある日のxreflector.netのモジュールDCS002のRepeater/DongleはSharkRF openSPOTの使用者が3人、openSPOT・2が5人、openSPOT・3が1人でした。openSPOT・2が多いのはコストパフォーマンスの良さにあると思われます。
私はデジタルハンディ機のID-31でホットスポットにアクセスする仕組みが気に入ってD-STARリフレクタ(インターネット上の仮想レピーター)を始めました。しかしながら無線機を使うには無線局免許状の変更(届)が必要になります。ホットスポットのopenSPOTの送信出力が20mWの送信機であるためJARDの認定をいただいて関東総合通信局へ電子申請届出システムを経なければなりません。届けの詳細はOnlineとーきんぐNo.222を参照ください。
openSPOT・3の仕様
寸 法 |
100 x 58 x 18.5 (mm) |
重 量 |
77g |
動作温度範囲 |
バッテリー充電中0~+45° C 通常の運転中:-20~+60° C |
電 池 |
ポリマーリチウムイオン1200 mAh |
電 源: |
USB ポートを介して 5 V DC |
消費電力 |
Max. 800 mA @ 5 V (4 W) |
UHF モデム |
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Wi-Fi モジュール |
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マニュアル |
http://manuals.sharkrf.com/openspot3/en/ |
最初のステップ
openSPOT・3をUSB電源(DC5V)に接続してバッテリーの充電を行います。次いで電源ボタンを1秒間押して電源を入れます。本体のLEDが白く脈動するとopenSPOT・3 APと呼ばれるWi-Fiネットワークを送信しています。この時、Webブラウザデバイス(スマートフォン、タブレット、コンピューター)をWi-Fiネットワークに接続します。今回もスマートフォン(Android)を使いましたが、Windows PCやChromebookなどが問題なく使えます。
▲ニューモデルopenSPOT・3(左)と2018年発売のopenSPOT・2(右)。
▲インターネットアクセスのopenSPOT3 APに接続する。
▲Japanに変更します。
▲Quick setupでD-STAR/DCS/XLXのサーバー等を設定する。
Quick setupは画面下部の□Advanced modeにチェックマークを入れてQSをタップすると、下の画面に変わります。Server、Module、Callsignを入力します。詳しい設定はバックナンバー(No.222)を参照ください。
▲Device UIDはopenSPOT・3の裏面にUIDの記載があります。
Device UIDはopenSPOT・3の裏面にUIDの記載があります。あるいはopenSPOT・3のConnectをクリックすると接続できます。
▲Status画面。自分のアクセス並びに同じモジュールをモニターできる。
Wi-Fiルーター
ここではスマホとopenSPOT・3をWi-Fiに接続しましたが、Wi-FiルーターL-04Dに置き換えるとモバイル運用が可能となります。ドコモのL-04Dは2012年6月14日に発売されたWi-Fiルーターの定番ですが、ドコモオンラインショップの当時の価格は1万7640円でした。2020年4月現在アマゾンで調べると9,800円でした。さらに中古品ならその半額で買えそうです。L-04Dのサイズは幅90×奥行き12.6×高さ62mm、89gと軽いので携帯に適しています。
なお、L-04D に装着するSIMカードはイオンモバイルのタイプ2(グローバルIPアドレス)を3,240円で購入し、データ通信のみの月額使用料518円(税込)にて契約しました。
▲ドコモWi-FiルーターL-04D。
トランシーバーの設定
ここではD-STARデジタルトランシーバーID-31を使いました。D-STARの設定は単一周波数にします。アマチュアバンドの使用区分に決められた430.70MHzから431.00MHzの公衆網に接続し音声の伝送に限り使用できるVoIP(Voice over Internet Protocol)に設定します。筆者は430.730MHz、DVモードとしました。URCALLはCQCQCQに、openSPOT・3のローカルモジュールをDに設定します。DMR、C4FM、NXDN、P25、POCSAG等の設定はオリジナルのマニュアルを参照ください。
変更申請(届)
移動する局の場合は異なる二つの免許(個人局と社団局)が必要になります。つまりクライアントとアクセスポイントを同一免許による免許申請ができない※とする解釈により、クライアント側(自局の移動する局)とアクセスポイント側 (社団局の移動する局 )によりホットスポットの移動運用を実現しました。
※電波法第五十二条 無線局は、免許状に記載された目的又は通信の相手方若しくは通信事項 (特定地上基幹放送局については放送事項)の範囲を越えて運用してはならない。(抜粋)「通信の相手方」に自局が含まれないとする解釈によります。
詳しくはバックナンバー(No.224)を参照ください。
移動する局(ホットスポット)の免許 | |
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クライアント側(自局の移動する局) | アクセスポイント側(社団局の移動する局) |
固定局(ホットスポット)の免許 | |
クライアント側(自局の移動する局) | アクセスポイント側(自局の固定局) |
ここで重要なのがopenSPOT・3の[送信機系統図と諸元]になります。これにより審査に通るか否かが決まります。私の場合は[送信機系統図と諸元](PDF)をリフレクタ(仮想レピータ)に詳しいJF1CXH岡野俊郎氏のご好意により提供された工事設計書(PDF)を添付しました。申請の詳細はバックナンバー(No.224)を参照ください。
▲送信機系統図と諸元(※クリックするとA4判のPDFが取得できますので、そのまま申請書に添付できます)TNX JF1CXH
まとめ
openSPOT・3はSharkRFのWebサイトhttps://www.sharkrf.com/products/openspot3/
のShopからPayPal、クレジットカードにより購入できます。生産国のエストニアはICT(情報通信技術)分野で最先端を走る国として知られており、2月10日、エストニアからラタス首相が来日して安倍首相と会談し、「普遍的価値を共有するパートナー」と共同記者発表が行われましたが、ICT先進国のエストニア製のホットスポットopenSPOT・3を紹介しました。
参考資料
openSPOT・3ユーザー・マニュアル http://manuals.sharkrf.com/openspot3/en/
o「送信機系統図と諸元」PDF by JF1CXH 岡野俊郎氏
No.222 「モバイルホットスポットopenSPOT・2」
No.224 「モバイルホットスポットopenSPOT・2の変更申請(届)」
No.212 「SharkRF openSPOTでつくるホットスポット」