私たちが管理しているD-STARレピーター山中湖430(JP1YLH)と、山荘シャック(1kW局)のIC-7700とIC-7600のリモートコントロールは、これまでADSL回線を使っていましたが、このほど地元CATVサービスの光回線に変更しました。

1)NTT東日本(2017年11月30日)が発表したニュースリリース(要旨)

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NTT東日本は、ブロードバンドサービス「フレッツ・ADSL」(以下、本サービス)について、「フレッツ光」提供エリアにおいて2016年7月1日(金)より新規申込受付を終了していますが、関連物品の製造終了による保守物品の枯渇が見込まれること、およびご利用者が年々減少しており、今後もこの減少傾向が見込まれることから、「フレッツ光」提供エリアにおきまして、2023年1月31日(火)をもってサービス提供を終了します。

本サービスをご利用中のお客さまにつきましては、「フレッツ光」もしくは「光コラボレーションモデル」の光アクセスサービスへの移行をご検討ください。また、2017年12月1日(金)の申込より、本サービスを利用中で「フレッツ光」に移行されるお客さまは、「フレッツ光」の初期工事費等を無料とします。あわせて、当社以外の事業者さまの提供するADSLサービスをご利用中のお客さまについても、合意した当該事業者さまのADSLサービスから「フレッツ光」に移行いただける場合、「フレッツ光」の初期工事費を無料とします。

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今まで、ネット回線としてADSLを利用していた方は、2023年までにいずれかのタイミングで光回線への変更が必要となります。現在、山梨県南都留郡山中湖村の山荘に設置のJP1YLH D-STARレピーターは、ADSLによりインターネット回線に接続されていて特段の支障がありませんが、無線機のリモートコントロール(以下、リモコン)はADSLを利用しているため、上り回線の速度が問題となり、運用上様々な症状に悩まされるようになりました。例えば、受信音に息をつくような途切れが生じるほか、送信音にも跡切れが認められました。これはADSL通信速度の低下に起因するもので、運用意欲をそぐものとして改善策を模索していたところです。

2)山荘シャックのインターネット回線をADSLからCATV網の光回線に変更

ADSLは一般ユーザーを対象に、格安料金の上り下りで通信速度の異なるインターネットサービスを提供してきました。通常、写真のダウンロードやプログラムの更新など大容量のデータは受け取り側(下り回線)が太い方が効率良く、上り回線はダウンロードのリクエストコマンド位の送出ですから、細い回線で十分なので多くのネットユーザーの実体に合わせた規格になっています。

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ルーターの設定に取り組むJF1GUQ

山荘シャックがある山梨県山中湖村のケーブルテレビ会社が、NTT東日本の動向に合わせたのでしょうか、それまで何度も噂で聞こえては立ち消えになっていた光回線を使用したインターネット接続サービスを開始しました。

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ADSL上り(アップロード)速度テスト結果(※クリックすると画像が拡大します。)

3)ADSL 8Mbpsでは、アップロード700kbpsが精一杯

D-STARは主にDV(デジタルボイス)データ等のやりとりにインターネット回線を使用しますが、デジタル音声のやり取りだけですので、さほど回線容量は必要としません。10kbpsあれば十分通りますから、ADSLで問題なく使用できました。

私たちが同一回線上に乗せているもうひとつのサービスがRS-BA1(IPリモートコントロールソフトウェア)で、必要とされる回線速度は次の通りです。

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サーバー側 :上り 500kbps、下り 350kbps以上

※受信音(16kHz、16bit、1ch LPCM)、変調音(8kHz、16bit、1ch LPCM)で使用の場合

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実測値の700kbpsはトランシーバーのリモートコントロールに使用できるぎりぎりの性能で余裕がなく、速度低下により時には受信音や送信音が途切れることもありました。今回のインターネット回線変更により、快適な運用が期待できます。

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光回線上り(アップロード)速度テスト結果(※クリックすると画像が拡大します。)

CATV光回線は上り、下り共に5Mbpsの回線速度です。まさに「サーバーを構築してください」と言わんばかりに、安定した通信を提供してくれています。これによりD-STARとRS-BA1によるリモートコントロールがスムーズに運用できるようになります。

4)CATVのアクセスルーターはHuawei社製HG8045Q

ADSLモデムを撤去して代わりに光回線用アクセスルーターを設置します。工事業者が設置した状況で室内Wi-Fiからインターネットにアクセスするのは、ルーターの背面に印刷されたPass Keyを入力することでスマホやパソコンが簡単に接続できました。

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Huawei社製ルーターHD8045Q(左)

ただし特殊な用途として、外部からLAN内の機器にアクセスするためのサーバー構築時の設定情報が見つからないトラブルに苦労しました。ネット接続機器はメーカーにより用語やデータの登録方法が一様ではありません。今回はHuawei社のルーターは独自の設定でしたから、取扱説明書をよく読んで取り掛かったものの上手く動作しません。DMZ(一つのLAN側IPアドレスをインターネットに公開できる機能)という禁じ手を使うと、D-STARだけなら、インターネットに公開することはできますが、それではHFトランシーバーのリモートコントロールが出来なくなります。

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転送ルール ポートマッピング設定

結局、紆余曲折の末に見つけたD-STARサーバー用転送ルールの記述は図のようになりました。次にその勘所を紹介しておきます。

種別:カスタム設定を選択する

ポートマッピングを有効にする:窓にチェックを入れる

マッピング名:D-STAR(自由に名付けて良い)

内部ホスト:クラスA(IPアドレスとしてJARLから指定された10.***.***.***)を記述したD-STARサーバー用ルーターのWAN側IPアドレス

プロトコル:UDP

内部ポート番号:40000-40000

外部ポート番号:40000-40000

同じように2番目(TCP、40001)、3番目(TCP、10022)も記述します

要点は外部送信元ポート番号を記入しないということでした。この項目を指定すると、指定以外のポートからのアクセスが通らないことが判明しました。これに気が付くまでしばし時間がかかりました。ネットで見つけた情報に救われたことを申し添えておきます。

その他は初期値のままとしました。

なお、RS-BA1 Version1用に指定したプロトコルとポート番号を追記すると、外部からアクセスが可能になります。

例:UDP 50001等

基本的な設定等は次の記事をご覧ください。

No.195 「本格的リモートシャックの構築」その1

No.197 「本格的リモートシャックの構築」その2

No.198 「本格的リモートシャックの構築」その3

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自宅からRS-BA1 V1によりIC-7700のリモートコントロールしている様子。ノートPCはHP EliteBook

あとがき

ADSLから光回線に変わったことでHF帯トランシーバーのリモートコントロールが生き返りました。専用のルーターに設定を終えたところで、スマートホンによるテザリングを実施してノートPC(EliteBook)に疑似的なリモートコントロール端末を作り、IC-7700とIC-7600にそれぞれにアクセスして動作を確認しました。結果は上々でスムーズな運用が期待できそうです。自宅に戻り、およそ120キロ離れた山荘シャックのHF機をリモートコントロールしてみたところ、回線速度も十分で快適な操作ができたことを報告しておきます。

参考資料:EchoLife HG8045Q取扱説明書