「公共の電波」という言葉を聞いたことがあると思います。電波(周波数)が公共の場である以上、秩序を守るために、ルールや規制が必要なのは言うまでもありません。このルールや規制こそが、電波法なのです。この電波法を理解せずに電波を利用する機器を使用すると、罰則が科されることがあるので、注意が必要です。ここでは、電波法を理解していただき、正しく無線機器を使用できるよう、わかりやすく解説します。
この記事の目次
電波法の基礎知識
電波法とは、1950年に施行された、電波の公平かつ能率的な利用を確保して、公共の福祉を増進することを目的とした国内の法律です。最初に電波法の概要と目的について説明します。
電波法の概要
電波法では、<第一章>総則、<第ニ章>無線局の免許等、<第三章>無線設備、<第四章>無線従事者、<第五章>運用等に関する規制やルールを設けることで、電波の適正利用を図っています。そのおかげで、私たちは、スマートフォンやWi-Fi®、無線機等を不便なく使用することができるのです。
電波法の目的
もし、誰もが好き勝手に無線機器を使い、電波を出すことができたら。複数の電波が無秩序に飛び交い、お互いの電波が干渉し、安定した通信ができなくなってしまいます。そうなると、警察、交通機関、企業等の無線通信にも支障をきたし、私たちの生活にも大きな影響が出ることは容易に想像できます。こういった混乱を回避するために、電波の公平かつ能率的な利用を確保し、公共の福祉を増進する「電波法」が存在します。
通信機器(電波)を使用する際のルール
先述の通り、通信機器を正しく使用するために、守らなければならないルールがあります。主なものは、二つ。技適マークの確認と免許の取得です。
技適マークをまずは確認
無線通信機器(インカム・無線機・トランシーバー等)を入手/使用する際、まず確認しなくてはならないのが、技適マーク(技術基準適合証明または工事設計認証を受けていることを証明するもの)です。原則としては本体の見やすい場所に記載されています。また、本体への記載が難しい機器については、取扱説明書や外箱などに記載されていることもあります。一部、スマートフォンなどは、機器本体ではなく設定項目の中などに記載されていることもあります。
無線従事者/無線局免許の取得
目的が趣味、業務に関わらず、無線局を開設し、運用するためには、原則として「無線従事者免許/無線局免許」が必要となります。ただし、資格が必要な無線設備でも、主任無線従事者の監督を受ければ無資格者でも操作が可能になります(アマチュア無線技士の資格は除く)。また、無線機の種類によっては、無線従事者免許、無線局免許不要で使用できるものもあります。
■参考例
|
アマチュア無線機 |
特定小電力無線機 |
IP無線機 |
デジタル簡易無線機(登録局/免許局) |
一般業務用無線機 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 無線従事者免許 | 要 | 不要 | 不要 | 不要 | 要 |
| 無線局免許 | 要 | 不要 | 不要 |
免許局:要 |
要 |
| 無線従事者免許 | 無線局免許 | |
|---|---|---|
| アマチュア無線機 | 要 | 要 |
| 特定小電力無線機 | 不要 | 不要 |
| IP無線機 | 不要 | 不要 |
| デジタル簡易無線機(登録局/免許局) | 不要 | 免許局:要 登録局:登録 |
| 一般業務用無線機 | 要 | 要 |
無線従事者免許の取得方法
無線従事者資格により、操作できる範囲が決まります。無線従事者資格を取得するためには、次のような方法があります。
国家試験
無線従事者資格ごとに実施される国家試験に合格することにより、無線従事者免許を取得することができます。無線従事者資格の国家試験は、公益財団法人日本無線協会で実施されています。無線従事者になるための国家資格は全部で23資格。第二級・第三級海上特殊無線技士、第二級・第三級陸上特殊無線技士、第三級・第四級アマチュア無線技士の6資格の国家試験は、全国300カ所以上の会場(テストセンター)でコンピューターを利用し、年間を通して実施されています。(CBT方式)
養成課程講習会
無線従事者の養成課程講習会は、総務大臣が認定した者(団体)により、無線従事者に必要な知識・技能の習得を目的として行われます。養成課程の受講者は講習を受け、修了試験に合格することで、無線従事者資格を取得できます。養成課程には、直接個人の受講者を募集して実施している「公募養成課程」と、団体等から依頼を受けて実施する「受託養成課程」があります。
電波法違反の罰則
電波法に違反した場合
無免許で電波を発射すると、不法無線局を開設・運用したとされ電波法違反となり、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処される可能性があります。また、公共性の高い無線局に妨害を与えた場合は、5年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金の対象となります。
免許および登録を要しない無線局
電波法第4条において「無線局を開設しようとする者は、原則として総務大臣の免許を受けなければならない」と定められています。ただし、発射する電波が極めて弱い無線局や、一定の条件の無線設備だけを使用し、無線局の目的、運用が特定されている無線局については、無線局の免許および登録は要しないとされています。これらの免許および登録を要しない無線局は、次のとおりです。
発射する電波が著しく微弱な無線局
発射する電波が著しく微弱な無線設備については、他方への電波による影響がほとんどないため、免許申請や登録が不要とされています。模型類の無線遠隔操縦を行うラジオコントロール用発振器やワイヤレスマイクなどが該当します。
市民ラジオ(CB無線機)
26.9MHz~27.2MHzの周波数帯で、総務省令で定める電波を使用し、かつ空中線電力が0.5W(500mW)以下で、かつ技術基準適合証明を受けた無線設備のみを使用する無線局であれば、免許不要で使用することができます。
小電力の特定の用途に使用する無線局
- 空中線電力が1W以下。
- 総務省令で定める電波の型式、周波数を使用。
- 呼出符号または呼出信号を自動的に送信しまたは受信する機能や混信防止機能を持ち、他の無線局の運用に妨害を与えないもの。
- 技術基準適合証明を受けた無線設備だけを使用するもの。
- 以上の条件を満たす小電力の特定の用途に使用する無線局も、免許や登録を必要としません。例えば、コードレス電話や小電力セキュリティシステム、狭域通信システム(DSRC)の陸上移動局等があります。
まとめ ~安心して無線機器を使用するために~
電波(周波数)は公共のものであり、限られた資源であることから、その利用を適切に管理する必要があります。そのために電波法が存在すること、さらに無線機器を使用する際の基本知識やルールについてもご理解いただけたと思います。
しかし、無線機器は多種多様。無線機選び、資格や免許について不安に感じられる方も少なくないと思います。そんな時は、無線機器の購入/使用開始前に無線機器メーカーや販売店に相談することをお勧めします。
