業務で使える防水トランシーバー|保護等級の見方から活用シーン別おすすめ機種を紹介

トランシーバーの導入を検討されている企業ご担当者様によっては、数ある製品から自社の環境で使う無線機をどれにするか、悩むところではないでしょうか。利用環境によっては防塵・防水性能も、トランシーバーを選ぶうえで、大きな選定ポイントのひとつです。
この記事では、防塵・防水性能の指標である「保護等級(IPコード)」について解説し、利用シーンや保護等級別のおすすめトランシーバーをご紹介します。

防塵・防水性能を表す「保護等級(IPコード)」とは

スマートフォンやワイヤレスイヤホン、デジタルカメラなどの製品紹介で「IP67」「IPX8」といった表記を見たことはありませんか? 
これは「保護等級(IPコード)」と呼ばれるもので、外部からの異物や水の侵入に対して、機器がどの程度の保護性能を持っているかを表す指標です。
身近なデバイスだけでなく、屋外や水回りで使用されることの多いトランシーバーにも、この保護等級が表記されています。IPコード表記をするためには、IEC(International Electrotechnical Commission) と整合する、日本産業規格が定めた試験条件をクリアしなければなりません。製品を選ぶ際は、まずこの保護等級(IPコード)の意味を正しく理解することが大切です。

保護等級の数字の読み方

保護等級の数字の読み方

IPコード(Ingress Protection Code)は、「IP」のあとに2桁の数字が続きます。
左側にある数字は「防塵」、右側にある数字は「防水」の保護レベルを表しています。どちらも、数字が大きいほど保護性能が高くなります。また、保護レベルを定めない場合は、その等級の表記に該当する数字の部分を「X」で表記します。

防水等級について

まずは、防水等級について詳しく見てみましょう。

等級 保護の内容
IPX0 無保護
IPX1 製品上部から垂直に滴下する水に対して保護されている
IPX2 製品を15度傾けた状態で製品上部から垂直に滴下する水に対して保護されている
IPX3 製品上部から両側に60度までの角度で噴霧された水に対して保護されている
IPX4 製品に対するあらゆる方向からの水の飛まつに対して保護されている
IPX5 製品に対するあらゆる方向からの噴流水(12.5 ℓ/min)に対して保護されている
IPX6 製品に対するあらゆる方向からの暴噴水(100 ℓ/min)に対して保護されている
IPX7 水に浸しても影響がないように保護されている。製品を水中で使用するもの
IPX8 潜水状態での使用に対して保護されている。より厳しい条件の中で使用するもの(試験環境は協議により決定します)
IPX9 外郭に対して、あらゆる方向から高圧・高温水を噴流しても、有害な影響を及ぼさない

2026年1月、日本産業規格として「JIS C 60529」が新たに制定されました。これは2003年から使われてきた「JIS C 0920」の後継規格で、国際規格(IEC 60529)に準拠した内容・番号体系が採用されたものです。この改正により、水の浸入に対する保護等級として、従来の最高等級「8」に加えて、「高圧・高温水噴流」に対応した「9」が新設されました。

防塵等級について

次に、防塵等級について見ていきましょう。

等級 保護の内容
IP0X 無保護
IP1X 直径50 mm以上の大きさの外来固形物に対し保護されている。
大人の握り拳が危険個所へ接近しないように保護されている。
IP2X 直径12.5 mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。
大人の指での危険個所への接近に対して保護されている。
IP3X 直径2.5 mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。
工具での危険個所への接近に対して保護されている。
IP4X 直径1.0 mm以上の大きさの外来固形物に対して保護されている。
針金での危険個所への接近に保護されている。
IP5X 防塵試験用粉塵(直径75 μm)が入ったとしても所定の動作および安全性を損なわないように保護されている。
IP6X 耐塵試験用粉塵(直径75 μm)が入らないように保護されている。

「完全防水」「生活防水」の違いと保護等級との関係

「完全防水」や「生活防水」といった言葉を見かけられたことはないでしょうか?
製品の防水性能を直感的に伝える表現としてECサイトや店舗での商品紹介で広く使われています。しかし、これらの言葉そのものに明確な定義や統一された基準はなく、メーカーや製品によって示す範囲が異なるのが実情です。
そのため、製品の防水性能を正確に比較・確認したい場合は、「完全防水」「生活防水」といった表現ではなく、本記事で紹介した保護等級の数字を確認することをおすすめします。保護等級は国際的に定められた試験条件に基づく指標であるため、製品間の比較がしやすく、自社の使用環境に合っているかどうかを客観的に判断する材料になります。

防水トランシーバーを使用する際の注意点

保護等級が高い製品であっても、どのような環境・使い方でも無条件に性能が発揮されるわけではありません。保護等級はあくまで規格が定めた試験環境での評価値であり、正しく使用することが性能を維持する前提となります。ここでは、防水性能付きのトランシーバーを使用する際に注意したいポイントをご紹介します。

極端な温度差・水圧がかかる環境での使用

保護等級の防水性能は、規定された試験条件(水温・水圧・浸漬時間など)のもとで評価されたものです。そのため、試験条件を大きく超えるような環境での使用には注意が必要です。
たとえば、IPX5やIPX6は一定の水圧下での噴流水を想定した試験ですが、高圧洗浄機から至近距離で放水された場合など、試験条件を超える強い水圧がかかる状況では、想定どおりの防水性能が発揮されない可能性があります。また、熱湯や極端に冷えた水にさらされる環境、急激な温度変化が生じる環境では、パッキンや外郭部材の変形・劣化が早まり、防水性能が低下するおそれがあります。
保護等級はあくまで目安として理解し、使用環境が試験条件の範囲内に収まるかどうかを確認したうえでお使いください。

コネクター・端子カバーなどの適切な管理

トランシーバーの防水性能は、本体外郭の密閉性によって保たれています。充電端子やアクセサリー端子には、防水性能を維持するためのカバーやパッキンが設けられており、これらが正しく閉じられ、劣化していない状態であることが性能発揮の前提となります。 
端子カバーの閉め忘れや、パッキンの劣化・破損がある状態で水がかかると、保護等級どおりの防水性能が保証されません。日常的な使用のなかで、以下の点を定期的に確認することをおすすめします。  

コネクター・端子カバーなどの適切な管理

★Checkポイントの例

  • 端子カバーが確実に閉まっているか
  • パッキンに亀裂・変形・汚れの付着がないか
  • カバーのロック機構が正常に機能しているか

また、充電バッテリーパックなどの本体に取り付けるオプションがある場合、防水性能に対応していないと、無線機そのものの防水性能が発揮できないため注意が必要です。
異常を感じた場合は、お早めに販売店またはアイコムへご相談ください。

防水ケースでの代用は可能か

トランシーバー本体の防水性能に不安がある場合、「防水ケースに入れれば代用できるのでは」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、防水性能を防水ケースで代用することはおすすめしません。トランシーバー本体は保護等級に基づいた防塵・防水性能のテストを実施しているものが多く、本体の性能の範囲内でも十分に防水性能を担保できます。

一部、海洋・河川などの特殊環境において防水ケースを補助的に使われている場合があります。ご利用される場合、通信状況(電波が飛ばない、聞こえづらいなど)の不具合等が発生してもメーカー保証外となる可能性がございます。ご注意ください。

利用シーン・等級別アイコムのおすすめ防水トランシーバー

キッチンなど水回りの作業が多い飲食店、雨天時の作業も多く常に雨風にさらされる屋外の警備・工事現場など、業種によって求められる防塵・防水性能はさまざまです。ここでは、多様な現場でも活躍するアイコムの防水トランシーバーを、利用シーン・等級別にご紹介します。

機種選びで確認したいポイント

トランシーバーには、電波の型式、出力電力、利用用途などに合わせてさまざまな種類があります。今回は、免許や登録が不要で手軽に使える特定小電力トランシーバーと、登録局・免許局の手続きが必要なデジタル簡易無線機の防水トランシーバーの選定ポイントをご紹介します。

防水性能付き:おすすめの特定小電力トランシーバー

アイコムの特定小電力トランシーバーは、IP54〜IP67の防塵・防水性能を備えた機種をラインアップしています。同じ保護等級の機種でも、本体の重さや運用時間に違いがあるため、現場での使い方に合わせてお選びいただけます。

機種名 防塵
防水
通信距離※1 重さ※2 運用時間※3 おすすめの利用シーン
IC-4400 / IC-4400L IP67 約1〜2km IC-4400:約117g
IC-4400L:約122g
約20時間 飲食・介護・学校・ショッピングモール
IC-4310 / IC-4310L IC-4310:約117g
IC-4310L:約122g
IC-4120 / IC-4120BT IP54 IC-4120:約144g
IC-4120BT:約148g
約23時間
IC-4350 / IC-4350L IP67 IC-4350:約120g
IC-4350L:約125g
約30時間 警備・イベント
IC-4188D IP54 約154g 約20時間 工事・建設

1 見通し距離。周囲の状況、環境によって通信距離は異なります。

2 付属品、オプションバッテリーなどの重量を含みます。

3 付属品、またはオプションバッテリー装着時の目安です。

防水性能付き:おすすめのデジタル簡易無線(登録局/免許局)

デジタル簡易無線機は、5Wの出力が可能で、大規模現場や長距離通信が必要な環境に向いています。
登録局と免許局の2区分があり、登録局は届出のみで使用でき、手続きが簡単です。免許局は申請・免許取得が必要ですが、専用周波数を使うため、混信しにくいのが特長です。
アイコムのラインアップはいずれもIP67対応で、屋外や過酷な現場環境にも対応しています。重さや運用時間の違いを確認しながら、現場の規模や用途に合わせてお選びください。

機種名 防塵
防水
通信距離※1 重さ※2 運用時間※3 おすすめの利用シーン
登録局
IC-D70 PLUS IP67 約1km~4km 約236g 約13時間 ホビー・飲食・介護・学校・ショッピングモール
IC-DPR7S PLUS 約243g
IC-DPR4 PLUS 約148g 約10.5時間
IC-DPR45 約263g 約16.5時間 警備・イベント
免許局
IC-DU45 IP67 約1km~4km 約266g 約16.5時間 警備・工事・建設・防災
IC-DU75 PLUS 約234g 約12時間

1 見通し距離。周囲の状況、環境によって通信距離は異なります。

2 付属品、オプションバッテリーなどの重量を含みます。

3 付属品、またはオプションバッテリー装着時の目安です。

まとめ

防塵・防水性能を示す保護等級は、トランシーバー選びの重要な指標のひとつです。等級の数字が大きいほど保護性能が高く、使用する現場の環境(水しぶきが多い水回り、粉塵が舞う工場、雨天での屋外作業など)に合った等級の機種を選ぶことが、機器の故障リスクを下げ、メンテナンスコストの削減にもつながります。
ただし、端子カバーの管理や、試験条件を超える環境での使用に注意しながら、正しくお使いいただくことが大切です。機種選びにお困りの際は、ぜひアイコムにご相談ください。用途や現場環境に合わせて、最適な機種をご提案します。