ターミナルモードでおうちD-STAR

設定が簡単になりました! IC-705のターミナルモード

大きなアンテナタワーや立派なシャック、固定機・モービル機などを持っていない私にとってのアマチュア無線とは、専らレピータ経由のD-STAR運用です。友人とスキーやハイキングで山に登った時にはシンプレックスでCQを出しますが、低地にあり、周りにもたくさんの建造物がある自宅からの5W運用は難しいものです。幸いD-STARレピータへのアクセスはできるため、レピータを通じて全国のハム仲間とのQSOを楽しんでいます。
 


「各局ありがとうございました。これにて○○レピータクリアします」。これは、レピータ運用をしているとよく耳にするフレーズだと思いますが、この言葉の裏には「交信中ずっとレピータをお借りしていました。」という意図が隠されています。スペクトラムスコープで空き周波数を見つけ、いわば自分専用のチャンネルを一時的に作り交信を楽しむシンプレックス通信とは異なり、数が限られているレピータを使用し続けるということは憚れるものだと思います。

そこで活用したいのがD-STARターミナルモード、アクセスポイントモードです。本来、レピータへ電波が届かない場所からの運用を想定して開発されたものですが、これを利用すれば自分専用のレピータが作り出せるためレピータ占拠の心配がなくなります。早速やってみよう! と当時のメインリグ、ID-51でチャレンジするも設定が難しく、追加でケーブルを購入したり、アプリをインストールする必要があったり・・・となかなか一筋縄ではいかないものでした。

今回IC-705を購入し、大変便利だと実感したのは「内蔵ゲートウェイ機能*」です。つまり、ケーブルやアプリは不要。自宅にWi-Fi環境さえあればIC-705単体でターミナルモードの設定が完結してしまうということです。ID-51と比較すると大幅に簡素化されていますね。今回は、コロナ禍で外出自粛が促されている状況での“ターミナルモードでおうちD-STAR運用”についてレポートしたいと思います。ただし、インターネット接続環境が異なると設定は大きく異なりますのでご注意ください。
*IC-9700から搭載されている機能。

“ターミナルモードでおうちD-STAR” 運用環境

  • 使用リグは最近買ったばかりのIC-705
  • QTHは低地にある自宅
  • 自宅の固定回線に繋いだWi-Fiブロードバンドルーターを使用

※IPv4接続できる、グローバルIPアドレスが払い出されている環境です。
※ルーターのポート開放やフィルターの設定が必要です。

この2つの※について難しく感じる方もいると思いますので、インターネットプロバイダーのサポートセンターのご利用をお勧めします。私もネットワーク設定に自信がなかったので、プロバイダーに全てお任せしました。

IC-705を自宅のWI-FIに接続してみよう!

まず、IC-705を自宅のWi-Fiに接続しました。スマートフォンやゲーム機器からの接続に慣れていると、とても簡単な操作です。
 

[MENU]ボタン→SETアイコン→WLAN設定→WLANをONにします。
 

次に接続設定内、アクセスポイント一覧で自宅のWi-Fiを選択し、パスワードを入力すれば接続完了です。

内蔵ゲートウェイ設定、ゲートウェイコールサインを入力…ゲートウェイコールサインは意外と何でもいい!?

次に取扱説明書を読みながら、[MENU]ボタン→DV GWアイコン→内蔵ゲートウェイ設定の各項目を設定しました。
 

設定完了後、内蔵ゲートウェイ設定がこのような画面になっているとOKです。


ターミナルモードには、無線機にゲートウェイコールサインを設定する必要があります。取扱説明書を見ると、「自局コールサインの後、8桁目に任意のアルファベットを付加する。」となっています。自局コールサインJP3JZKのあとスペースを入れて、「Z」を入力しました。Zにした理由は特にないのですが、使用できるのはG, I, Sを除くアルファベットAからZということでしたので、覚えやすい最後の文字にしてみました。

IC-705のIPアドレスを固定する…ちょっとややこしそうですが、実はカンタン

またまた取扱説明書を読みながら、[MENU]ボタン→SETアイコン→WLAN設定→接続設定の内各項目を設定しました。

少し話はそれますが、私は犬を2匹飼っています。無線機の設定をしていると1匹が私の顔を覗き込んできました。
 

「お姉ちゃん、またCQやるの?ちゃんと設定できた?」
黒いポメラニアン、名前は“クロ”です。

  • [DHCP]→「OFF」を選択。
  • [IPアドレス]→割り当て可能なIPアドレスを設定。
  • [サブネットマスク]→通常は「255.255.255.0」を利用。
  • [デフォルトゲートウェイ]→接続するルーターのIPアドレスを設定。
  • [プライマリDNSサーバー]→接続するルーターのIPアドレスを設定。
  • [セカンダリDNSサーバー]→通常は設定不要。

説明書等にはこのように書かれていますが、こちらもまた少々難しいですね。でもほとんどの場合は深く考える必要はないようです。[割り当て可能なIPアドレス]については初期設定のまま使用しましたが問題ありませんでした。また[デフォルトゲートウェイ]と[プライマリDNSサーバー]に設定する“接続するルーターのIPアドレス”ですが、私が利用したのは、普段自宅でWi-Fiに接続して使用しているiPhoneのWi-Fi設定画面です。ここから簡単に見つけることができました。Androidユーザーも、Wi-Fi設定から見つけることができると推察します。
 

iPhoneで設定→Wi-Fiと進み、自宅のWi-Fiを確認。右端のインフォメーションアイコンを押して、IPV4アドレスという設定グループ内にルーターのIPアドレスが表示されています。
 

犬に心配されましたが、無事に設定完了! 設定完了後のWLAN設定画面です。

IC-705を再起動していよいよ運用開始!

電源を入れ直し、あとは運用するのみです。[MENU]ボタン→DV GWアイコン→<<ターミナルモード>>をタッチしました。なお、一度ネットワーク設定をすると次から自動的に接続されるようになっているようです。運用したいときに<<ターミナルモード>>をタッチするだけなので、とても便利ですね。DR画面のTO欄には、相手のコールサインやCQを出したいレピータを設定します。

ID-51と比較すると、画像伝送も楽々ですね。私はよく愛犬の写真に自分のコールサインをつけて送ります。画像伝送をしているともう1匹が無線機に近寄ってきました。

「あれ?僕の写真だ。誰に送るのかな?」
こちらはトイプードルの“メープル”です。

ハム仲間と久しぶりにお空で再会できました

東京ハムフェアで知り合った方や、以前D-STARレピータ運用でお話した方・・・アマチュア無線を通してできる友達というのは全国にいるものです。全国各地のレピータに順番にCQを出しても、ターミナルモードなので最寄りレピータを占拠することなく二日間合計6時間以上に渡りD-STAR運用を楽しむことができました。2020年は残念ながらハムフェアが中止となってしまったことに加え、私生活が忙しくなかなかオンエアすることができていなかったため、長くお会いできていない方ともQSOができて大変嬉しかったです。コロナ禍のおうちD-STAR運用は大成功となりました。
 

よくお世話になっている都城430レピータ。アマチュア無線ならステイホームでも繋がれますね。

また、最寄りレピータを占拠せずに運用できるということで海外のいろいろな国のレピータでCQを出してみましたが、残念ながら応答はなく・・・今後の課題としたいと思います。
 

“UR?”と返ってきているので、電波は届いているはず。来年はより粘り強くCQを出してみたいです。