業務用無線機(インカム)とは?選び方と導入時の注意点を解説

業務用無線機(インカム)は、現場の従業員が円滑なコミュニケーションを行い、作業の効率化と安全性の向上を図るために欠かせないツールです。たとえば、広い敷地内で業務を行う現場では、無線機を導入することで、離れた場所にいる従業員同士でも瞬時に情報を共有できます。

こうしたメリットから、業務用無線機を導入したいとお考えの企業ご担当者様は多いのではないでしょうか。しかし、無線機にはさまざまな種類があるため、何を選んだらいいか迷われているかもしれません。
そこで本記事では、業務用無線機の概要や無線機の種類を紹介し、機器の選び方と導入時の注意点について解説します。

業務用無線機(インカム)は業務で使用する無線機の総称

業務用無線機とは、業務内での通信手段として使用される無線機の総称です。業務用無線機という名称の特定の機器が存在するわけではなく、業務用無線機の中にも、用途や通信距離に応じてさまざまな種類があります。
無線機は複雑に分類されるため、まずは無線機とインカムの概要のほか、業務用無線機と比較されやすいアマチュア無線機について理解を深めておきましょう。

無線機は電波を利用する相互通信機器

無線機とは、機器同士で直接電波をやり取りし、音声の無線通信を行う機器のことです。無線通信を行う際は、通信を行う機器同士で電波の周波数(チャンネル)を合わせて通話します。電話のような番号入力が不要で、通話ボタンを押せば、複数人への一斉連絡やグループ通話を即座に行うことができます。従来は送信機(トランスミッター)と受信機(レシーバー)が別々でしたが、現在では1台で送受信ができるトランシーバーが主流です。

なお、無線機で電波を使用するには、無線局を開設し、総務大臣の免許を受ける必要があります。ただし、無線機の種類によっては、免許が不要で無線局の開設届けと登録申請だけで使用できるものや、免許や登録申請が不要なものもあります。

インカムは特定の区域内での無線通信システム

インカムとは、「インターコミュニケーションシステム(内部通話装置)」の略語で、本来は特定の区域内での無線通信システムを指します。しかし、現在では無線機(トランシーバー)にヘッドセットやイヤホン・スピーカーを接続したものをまとめてインカムと呼ぶのが一般的です。

オペレーター業務を行う企業など、電話やパソコンなどを通信機器として使用する一部の業界では、ヘッドセットやイヤホン・スピーカーそのものをインカムと呼ぶこともあります。

業務用無線機とアマチュア無線機の違い

業務用無線機とアマチュア無線機は、使用目的に大きな違いがあります。アマチュア無線とは、電波法の定義によると「金銭上の利益のためではなく、もっぱら個人的な無線技術の興味によって行うもの」です。そのため、アマチュア無線を営利目的で使用すると、たとえ無線従事者免許や無線局免許を持っていても電波法に違反することになり、厳しい罰則が科せられる可能性があります。

アマチュア無線機に対して、企業や組織が金銭の利益を目的とした活動で使用できるのが業務用無線機です。個人事業主であっても、事業を営んで利益を得ている場合は営利組織とみなされるため、たとえば個人タクシーで無線機を使う場合は、業務用無線機を用意することになります。

業務用無線機(インカム)の種類

業務現場に導入できる無線機にはさまざまな種類があり、使用にあたって免許が必要なものもあるため、用途や必要な資格を把握しておくことが大切です。ここでは、業務用無線機の種類を解説します。

特定用途向け無線機

特定用途向け無線機は、行政やインフラ、消防といった公的機関での業務や、船舶・航空など特殊な環境での業務に使用される無線機です。用途に応じて、下記の4つに分類されます。

<特定用途向け無線機の種類>

  • 一般業務用無線機:行政・インフラ系組織で使用されるUHF無線機、VHF無線機など
  • 船舶用無線機:船舶間の連絡用に用いられる国際VHF無線機など
  • 航空用無線機:航空交通管制に用いられるVHF航空無線機など
  • 消防救急用無線機:消防や救急関係者が使用する消防救急デジタル無線用受令機など

こうした業務は人命に関わることも多いため、特定用途向け無線機には特別な周波数(チャンネル)が割り当てられており、一般の方は扱うことができない無線機もあります。
なお、特定用途向け無線機の無線局には、多くの場合、免許が必要です。また、操作にあたって、国家資格の無線従事者免許が必要な無線機もあります。

デジタル簡易無線機

デジタル簡易無線機は、特定用途向け無線機を使用するような特殊な業務ではなく、一般的な企業などの業務で使用する無線機です。強力な電波を出すため、数km程度の広い範囲で使用でき、デジタル方式で通信を行うことで高い秘話性を備えています。
デジタル簡易無線機を使用するための無線局には2種類あり、開局に免許が必要な「免許局」と、登録申請だけで開局できる「登録局」にわかれます。

<デジタル簡易無線機を使用できる無線局の種類>

・免許局
免許局は、総務大臣の免許を受けて開局する、法人や団体向けの無線局です。無線の使用者に無線従事者免許などの資格は必要ありません。ただし、業務に使用することが条件で、使用範囲は免許された法人内の社員同士・団体内の職員同士の通信にかぎられます。

・登録局
登録局は、免許よりも手続きが簡単な登録申請を行うことで開局できる無線局です。無線の使用者に資格は不要で、用途も特に限定されていないため、業務で使うのはもちろん、レジャーで使うこともできます。また、使用範囲に制限がなく、登録者でなくても使用できるため、レンタルすることも可能です。

アイコムのデジタル簡易無線機については、下記をご覧ください。

デジタル簡易無線機

デジタル小電力コミュニティ無線機

デジタル小電力コミュニティ無線機は、元々地域コミュニティ用の無線機として登場しましたが、2018年から市街地でも使用できるようになった無線機です。用途に制限がなく、免許や登録申請も必要ありません。GPS機能を有しているのが特徴で、屋外であれば1km程度の距離を結ぶ通信が可能です。広範囲なエリアでの同時通信が可能なため、屋外の現場やイベントでの利用に適しています。

特定小電力トランシーバー

特定小電力トランシーバーは、送信出力が弱いため免許や登録申請が不要で、誰でもすぐに使用できる無線機です。無線機の中では価格も低いので導入コストの負担が少ない上、購入後もランニングコストがかからず、手軽に利用できます。通信距離は数百m程度と短くなりますが、携帯電話回線が圏外になる地下や山間部でも通信でき、限定されたエリアで利用するのに最適です。

アイコムの特定小電力トランシーバーについては、下記をご覧ください。

特定小電力トランシーバー

IPトランシーバー

IPトランシーバーは、従来の無線機とは異なり、携帯電話回線を使用する無線機です。携帯電話の基地局を中継して通信するため無線局を開設する必要がなく、携帯電話の通信エリア内であればどこでも通信できます。トランシーバーの基本性能である一斉同報やグループ通話に加えて、電話のような同時通話もできるのか特長です。機種によっては、テキストメッセージの送受信機能やGPS機能を備えているものもあります。

アイコムのIPトランシーバーについては、下記をご覧ください。

IPトランシーバー

業務用無線機(インカム)の選び方

業務用無線機(インカム)を導入する際には、用途や環境に応じて適切な無線機を選ぶことが重要です。ここでは、業務用無線機の選び方について、詳しく見ていきましょう。

通信距離で選ぶ

業務用無線機を選ぶ際に重要なポイントとなるのが、通信距離です。通信距離は無線機の種類によって異なるため、業務現場の広さが無線機を選ぶ目安になります。一般的な業務で使用できる無線機の通信距離は、下記の通りです。

<業務用無線機の通信距離の違い>

  • デジタル簡易無線機:数km
  • デジタル小電力コミュニティ無線機:1km程度
  • 特定小電力トランシーバー:数百m
  • IPトランシーバー:携帯電話回線の通信エリア内

ただし、デジタル簡易無線やデジタル小電力コミュニティ無線機、特定小電力トランシーバーの通信距離は、周囲の建物や障害物によっても影響を受けるため、現場の状況を確認しましょう。

機能で選ぶ

必要な機能で業務用無線機を選ぶこともできます。たとえば、GPS機能を搭載しているものや、Bluetooth®️(ブルートゥース)に対応していてヘッドセットをワイヤレスで接続できるもの、防水性能が高いものなどは、現場で必要とされることが多いでしょう。こうした機能が作業効率や安全性の向上につながることも多いため、実際に業務を行う従業員の意見を聞いておくことをおすすめします。

機能で無線機を選ぶ場合は、下記をご覧ください。

絞り込み検索

業種で選ぶ

無線機の利用シーンは業務内容によって異なるため、自社の業種に合わせて機種を選ぶ方法も有効です。たとえば、飲食店や病院といったお客様・患者様への迅速な対応が必要な業種と、車両の移動が伴う物流などの業種とでは、導入する無線機も変わってきます。アイコムでは業種別の無線機器活用例をまとめていますので、同じ業種の導入事例を参考にするのもおすすめです。

業種で無線機を選ぶ場合は、下記をご覧ください。

業種別の無線機器活用例

メーカーで選ぶ

無線機はさまざまな企業から販売されているため、メーカーで選ぶのも1つの方法です。品質やサポート面で信頼できるメーカーの製品を選べば、長期にわたって安定した運用が可能となります。まずはメーカーに希望を伝えてみて、どのような無線機を導入するのがいいか相談してみるのもいいでしょう。

アイコムでは、ネットワークを含めた無線システムの構築や、現場の状況に応じて複数の無線機を組み合わせた提案も行っています。

業務用無線機(インカム)を導入する際のポイント

現場に適さない無線機を選んでしまわないために、業務用無線機を導入する際にいくつかのポイントをチェックしておきましょう。ここでは、3つのポイントを紹介します。

免許や登録申請が必要か

業務用無線機を導入する前に、導入機種に免許や登録申請が必要かどうかを確認しましょう。デジタル簡易無線機を使用する場合は、免許を受けて無線局を開局するか、登録申請を行う必要があります。手続きを怠ると違法行為となるため、必要な申請は導入前に済ませておくことが求められます。

業務で使用する通信範囲に対応しているか

無線機の通信範囲が現場の広さに対応しているかは、導入前に十分な確認が必要です。たとえば、IPトランシーバーは広範囲での通信に有効ですが、携帯電話の圏外となるエリアでは通信できません。また、特定小電力トランシーバーは手軽に導入できますが、通信範囲はほかの無線機よりも限定されます。

導入後のランニングコストを想定しているか

無線機を導入する際には、導入コストだけでなく、ランニングコストも考慮する必要があります。たとえば、IPトランシーバーの場合は、月々の携帯回線通信料が発生します。また、デジタル簡易無線の場合、少額ではありますが、1年ごとに無線局1局あたり400円の電波利用料が必要です。

業務用無線機(インカム)は用途に適したものを選ぼう

業務用無線機にはさまざまな種類があり、用途や環境によって機種の選択が変わります。無線機を選ぶ際は、通信距離や現場の環境、機能などを基準にするのがポイントです。
また、無線機の導入にあたっては、電波法の遵守が欠かせません。免許や登録が必要な場合もあるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。これらの点を踏まえて最適な無線機を選び、業務効率の向上を図りましょう。

アイコムは総合無線機メーカーとして、高機能な業務用無線機を提供しており、多くの企業様や団体、自治体に製品を導入いただいております。業務の内容や現場の状況に応じたご提案が可能ですので、業務用無線機の導入をご検討中の企業のご担当者様は、お気軽にご相談ください。