

無線機(トランシーバー/インカム)を使いたい。無線機を使えば、もっと業務の効率が上がるに違いない。しかし「免許が必要なのでは?」という疑問から導入をためらう方も多いのではないでしょうか?
実は無線機の中には、免許が不要で気軽に使用できる無線機も多種多彩に揃っています。
ここでは、無線機を使うのは初めてという方にも、安心して導入していただけるよう、免許不要で使える無線機について、使用条件やおすすめの機種まで詳しく解説。間違いのない無線機選びをサポートします。
この記事の目次
無線機の使用には<基本>免許が必要
「公共の電波」という言葉を聞いたことがあると思います。電波(周波数)が公共の場である以上、秩序を守るために、ルールや規制が必要なのは言うまでもありません。このルールや規制こそが、電波法や無線機の免許制度です。
免許が必要な理由は電波の秩序を守るため
なぜ、無線機には免許が必要なのでしょうか。もし、誰もが好き勝手に無線機を使い、電波を出すことができたら。複数の電波が無秩序に飛び交い、お互いの電波が干渉し、安定した通信ができなくなってしまいます。
そうなると、警察、交通機関、企業等の無線通信にも支障をきたし、私たちの生活にも大きな影響が出ることは容易に想像できます。
こういった混乱を回避するために、電波の公平かつ能率的な利用を確保し、公共の福祉を増進する「電波法」が存在します。そして、電波の適正利用を図り、快適かつ安定した通信を実現するために、無線機の使用には基本的に「免許」が必要とされます。
免許不要で導入できる無線機の3つの条件とは?
基本的に免許が必要とされる無線機ですが、下記の条件に該当していれば、無免許で使用することができます。
- 電波が微弱であること
- 小電力かつ特定の用途に使用する無線機であること
- 以上の他に、インターネットやWi-Fi®を介して通信する無線機も、免許なしで使うことができます。
1.電波が著しく微弱な無線機
電波(周波数)の適正利用を図るため、国(総務省)が免許制度により規定を設けていることはご理解いただけたと思います。しかし、今の時代、全ての無線機器を免許制度により管理、規制するのは、管理する国、利用する企業や団体、双方にとって、手間、コストの面からも非現実的です。電波の有効利用の妨げにもなり兼ねません。
このような理由から、Bluetooth®、ワイヤレスマイク、小出力の無線機器など、微弱な電波を使用するものについては免許不要とされています。
他の通信機器に影響を与える可能性のある大出力の無線機は、免許制度により厳密に管理。微弱な電波を使用する通信機器の免許は免除。このようにして、電波(周波数)利用の秩序維持と促進を両立させています。
2.特定の用途で使用される小電力の無線機
免許不要で使える無線機の条件として、小電力かつ特定の用途に使用する無線機であることが挙げられます。具体的には以下の通りです。<引用:総務省電波利用ホームページ>
- 空中線電力が1W以下であること。
- 総務省令で定める電波の型式、周波数を使用すること。
- 呼出符号または呼出信号を自動的に送信し、または受信する機能や混信防止機能を持ち、他の無線局の運用に妨害を与えないものであること。
- 技術基準適合証明を受けた無線設備だけを使用するものであること。
3.携帯電話の回線やWi-Fi®を使用する無線機
携帯電話やスマートフォンと同様に、電話回線やWi-Fi®を介して通信する無線機も免許なしで使用することが可能。携帯キャリアの通信網を使用して通信する無線機は、通信業者が包括免許を取得しているため、ユーザーが個別に免許を取得する必要がありません。
Wi-Fi®(無線LAN)については、アンライセンスバンドと呼ばれる無線局免許を必要としない周波数帯を使用しているため、Wi-Fiトランシーバーも免許不要で使うことができます。
免許不要で使用できる無線機は5種類
特定小電力 トランシーバー |
デジタル小電力 コミュニティ無線機 |
デジタル簡易無線機 (登録局) |
IPトランシーバー | Wi-Fiトランシーバー | |
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免許/資格 | 不要 | 不要 | 不要(登録が必要) | 不要 | 不要 |
送信出力(電波の強さ) | 10mW (0.01W) | 500mW (0.5W) | ~5W | - | - |
通信距離の目安 | ~500m | ~1km | ~5W | 全国 (携帯電話の通話圏内) |
全国 (携帯電話の通話圏内) |
本体価格の目安 | 10,000円前後~ | 25,000円前後~ | オープン価格 | オープン価格 | オープン価格 |
通信料の目安 | 不要 | 不要 | 不要 | 月額1,800円~ | 不要 |
利用シーン例 |
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免許不要で導入できる無線機には、大きく分けて以下の5種類があります。
- 特定小電力トランシーバー
- デジタル簡易無線機<登録局>
- デジタル小電力コミュニティ無線機
- IPトランシーバー
- Wi-Fiトランシーバー
それぞれに特徴があり、そのメリットとデメリットを知ることが、最適な無線機選びの第一歩です。
価格(安さ)で選べば<特定小電力トランシーバー>
免許なしで使える無線機を選ぶ際、価格(安さ)を優先するなら特定小電力トランシーバー、一択。1台10,000円前後(実勢価格)で購入することが可能です。他の無線機と比較すると、コスト的には圧倒的に有利です。
その一方で、出力が0.01W(10mW)と弱いため、通話できるのは300m程度。壁や障害物があると、さらに通話範囲が狭くなってしまうため、使用する場所は限定されます。
特定小電力トランシーバーは、小規模な飲食店、交通整理など屋外の見通しのいい場所、アウトドアのレジャー等での使用に適しています。
価格と通信距離のバランスで選べば<デジタル小電力コミュニティ無線機>
デジタル小電力コミュニティ無線機は、特定小電力トランシーバーと同様、免許も登録も不要。最も手軽に使える無線機の1つです。本体価格も特定小電力トランシーバーの次に安価で、1台25,000円程度。大きな違いは、電波の強さです。特定小電力トランシーバーの50倍となる0.5W(500mW)。より広いエリアをカバーできます。価格と通信距離のバランスがとれた無線機です。
一方で、メーカーが限られており、製品のバリエーションが少なく、他の無線機と比較すると、選択肢が少ない点がデメリットになります。
デジタル小電力コミュニティ無線機は、中規模の店舗や施設でのビジネス利用、レジャーや地域イベントでの使用に適しています。
距離で選べば<デジタル簡易無線機>
デジタル簡易無線機は、登録局と免許局の2種類。免許不要なのは登録局で、簡単な登録申請のみで使用できます。免許不要ですが、5Wのハイパワー(特定小電力トランシーバーの500倍)。無線機の中では、最も電波が強く、~5kmの長距離通信が可能です。
この免許不要で長距離通信が可能なデジタル簡易無線機(登録局)ですが、デメリットもあります。それは無線機本体が高額であること。使用にあたっては登録が必要なことや、電波利用料(400円/年×台数)の支払い等が面倒と感じるかも知れません。
デジタル簡易無線機(登録局)は、大規模なイベントや大型のショッピングモール、広範囲を対象とする警備業等に適しています。
カバーエリアの広さで選べば<IPトランシーバー/Wi-Fiトランシーバー>
免許不要で通話距離の長さ/カバーエリアの広さを求めるなら、IPトランシーバーです。通信に携帯電話の回線を利用するため、全国どこでも使用可能。遮蔽物があっても、どれだけ離れていても、携帯電話のサービスエリア内なら、安定した通信が可能です。
しかし、マイナス面もあります。携帯電話の通話圏外となる地下や山岳部等では使用することができません。また、IPトランシーバーは、他の無線機とは異なり、月々の通信料を支払う必要があります。本体の価格に加え、通信料が1台あたり1,800円~(定額制/月額)が必要となり、コスト面での負担は少なくありません。
■免許も通信料も不要のWi-Fiトランシーバー
免許不要の無線機としてWi-Fi(無線LAN)トランシーバーという選択肢もあります。IPネットワーク上のWi-Fiアクセスポイントを経由して通信するため、月々の通信料は不要。すでにWi-Fi®の環境があれば、導入コストも大幅に削減できます。しかも、アクセスポイントを増設するだけで、簡単に通信エリアを拡張することが可能。Wi-Fi(無線LAN)環境下で使用するなら、魅力的な無線機です。
以上から、IPトランシーバーは、大規模な商業施設、全国を移動する運送業等、広範囲を管理する警備業等にお勧め。Wi-Fiトランシーバーは、入り組んだ建物内、高層ビル、遠隔地にある拠点間の通信に適しています。
免許不要で使えるおすすめ無線機11選
ここでは、免許なしで使える無線機、特定小電力トランシーバー、デジタル簡易無線機<登録局>、デジタル小電力コミュニティ無線機、IPトランシーバー/Wi-Fiトランシーバーのおすすめ製品を全11機種ご紹介します。
特定小電力トランシーバーおすすめ3選

携帯性を優先するなら、小型/軽量のIC-4350
わずか約93gの軽量ボディが魅力。動きの多い作業に向いたコンパクトモデルです。優れた防水性能を備えているので、雨の日でも安心して使用できます。

通話距離で選ぶなら、中継通話対応のIC-4188D
中継通話に対応しているので、簡単に通話距離を2倍に拡張可能。さらに、中継器をLAN接続することで、大型店舗や施設、多層階のビル等、さらに広範囲で安定した通話を実現します。

ビジュアルも重視するなら、5色揃ったIC-4120BT
企業/お店のイメージに合わせて選べる5色のラインナップ。Bluetooth®にも対応しているので、マイクやイヤホンをワイヤレスで接続することが可能。見た目もスマートです。
デジタル小電力コミュニティ無線機のおすすめ製品

ビジネス/レジャーで使用するなら、簡単操作のIC-DRC1MKII
GPSやFMラジオなど機能が充実。ビジネスだけでなく、レジャーや地域イベントでも気軽に使用することが可能。付属品が充実しており、購入後、すぐに使用できます。
デジタル簡易無線機<登録局>のおすすめ3選

大出力5Wと機能性を求めるなら、最新モデルのIC-DPR45
デジタル簡易無線機<登録局>のベーシックモデルでありながら、Bluetooth®や97chの増波にも、しっかりと対応。防水性能も最高水準。コストパフォーマンスに優れた製品です。

携帯性を重視するなら、コンパクトなIC-DPR4 PLUS
出力を2Wに抑えることで、小型&軽量ボディ、低価格を実現。使用に必要なバッテリーや充電用のACアダプターも同梱されています。

車や事務所で使用するなら、車載タイプのIC-DPR100 PLUS
操作性に優れた5Wの車載モデル。オプションの卓上電源やマイクを使用することで、事務所等で基地局として運用することもできます。
IPトランシーバーお勧め3選

より確実な通信を必要とするなら、デュアルSIM対応のIP502H
NTTドコモとau、2つのLTE回線に対応。一方のキャリアに障害が発生しても、回線を切り替えることで、通信を継続することができます。BCP対策にも最適なモデルです。

携帯電話の圏外でも使うなら、拡張性に優れたIP510H
LTEに加えWi-Fi(無線LAN)接続にも対応。山岳部や地下、トンネル内など、携帯電話の圏外でも使用することができます。

おすすめWi-Fiトランシーバー

Wi-Fi環境で使用するなら、免許/通信料不要で使えるIP110H
免許だけでなく、通信料も不要のWi-Fi通信専用モデル。軽量コンパクトで、ハンズフリー、同時通話にも対応した使い勝手に優れたモデルです。
無線機の入手から使用開始まで
免許不要の無線機については、様々な製品があり、それぞれに特徴があることは、ご理解いただけたと思います。次のステップとして、ここでは無免許で使える無線機、それぞれの入手方法と使用開始までを解説します。
特定小電力トランシーバーならネット通販での購入が可能
免許不要で使えることに加え、比較的簡単に入手できるのも特定小電力トランシーバーの魅力。無線機の専門店だけでなく、大型電気店、インターネットでも購入することができます。しかも、免許や登録申請など、手続きは一切不要。入手次第、すぐに使用を開始することができます。
デジタル簡易無線機(登録局)/デジタル小電力コミュニティ無線機の入手方法は?
デジタル簡易無線機(登録局)、デジタル小電力コミュニティ無線機とも、無線機販売店はもちろん、ネット通販およびレンタルで入手可能。デジタル小電力コミュニティ無線機は入手後、一切の手続きなしで、その日からすぐに使うことができます。一方、デジタル簡易無線機(登録局)を購入した場合は、利用者が登録した上で使用する必要があります。
IPトランシーバーは通信会社との契約が必要
IPトランシーバーを入手する方法は2つ。購入とレンタルです。いずれの場合も、携帯電話の回線を使用するため、通信会社との契約が必要。契約はIPトランシーバーを購入またはレンタルした販売店やメーカーを通して行います。IPトランシーバーは最適な機種の選定、通信プランの見極めなど、最初が肝心。まずは信頼できる販売/レンタル店や無線機メーカーに相談されることをお勧めします。
免許不要の無線機を安心して導入していただくために
免許なしで誰でも使える無線機ですが、いざ購入/レンタルするとなると、やはり不安なもの。そこで、ここでは安心して無線機を導入していただくためのポイントを2つ紹介させていただきます。
<無線機お試しサービスの活用>
実際に使用する環境/距離で通信できるのか、不安に感じられている方も多いと思います。そんな方におすすめなのが「無線機のお試しサービス」。実際に使ってみることで、通信の状況、無線機の操作を、導入する前に確認することができます。一部の販売店/レンタル店、もちろんアイコムでも、無線機の貸し出しサービスを実施しています。
<無線機購入時の注意点>
インターネット通販でも入手可能な免許不要で使える無線機ですが、購入する際には注意が必要です。無線機の中には、日本の電波法の技術基準に適合していない(技適マークが記されていない)製品が多く潜んでいるからです。もし、安易にインターネットで技適マークのない無線機を購入し使用すると、電波法違反で罰せられることになります。購入の際は、信用できるメーカーの製品を選ぶ、または、しっかり技適マークを確認することが重要です。
まとめ~免許不要で使える無線機~
電波(周波数)は公共のものであり、限られた資源であることから、その利用を適切に管理する必要があります。そのために電波法があり、無線機の使用には基本的に免許が必要とされています。
一方で、電波が微弱、小電力かつ特定の用途に使用する無線機は免許不要です。
その免許なしで使える無線機には様々なタイプがあり、様々な特徴を持った製品が揃っています。無線機を有効かつ快適に使うために、多種多様な無線機の中から、業務や作業内容、使用環境に最適な製品を選ぶことが重要です。
無線機選びで迷ったら、ぜひ無線通信機器の専門メーカーアイコムにご相談ください。
・免許不要 ・距離 ・コスト ・携帯性 ・防水性能 ・・・
無線機に求める条件をお聞きし、アイコムの30種類を超える免許不要の無線機の中から、ベストな製品をご提案させていだきます。さらに、無線機の設定、操作方法から使用開始後のアフターフォローまで、トータルにサポート。アイコムなら、免許不要の無線機を、長く、安心してご使用していただけます。