MCA無線とは?サービス終了後の代替策も解説。

広域をカバーすることで便利だったMCA無線。しかし、近年のIPトランシーバーの普及や、設備の老朽化などを理由にサービスの終了が決まってしまいました(MCAアドバンスは2027年3月31日、800MHz帯デジタルMCAサービスは2029年5月31日にサービス終了)。まだ猶予はあるといえ、機材の買い替えや使い方の理解を考えると、代替できる通信手段の検討は急務と言えるでしょう。この記事では、MCA無線の特徴をおさらいしながら、乗り換え先としておすすめの通信手段をご紹介します。

MCA無線は、日本全国で通話できる無線システム

MCAサービスは、1982年から40年以上にわたって一般社団法人移動無線センターが提供している業務用無線機の通信システムです。全国に配置した中継局を経由し、専用の通信網を通じて日本全国の相手と通話できることが大きな特徴で、物流業や、土木・建築業、地方自治体、ライフライン業などで通常業務の情報共有や、BCP(事業継続計画)対策、災害時の通信手段として重宝されてきました。

MCA無線の2つのメリット

災害時や緊急時に強い

専用の通信回線を利用しているので、災害時や緊急時の携帯電話キャリアの通信規制に関係なく通話できます。スマートフォンや固定電話では、多くの通信が集中すると通話できる回線数に制限がかかるケースもありますが、MCAサービスは一般の携帯電話回線が混雑しても、専用回線ならではの安定した通話が可能です。また、大規模な災害時も中継局の設備が堅牢で稼動を止めるリスクが小さいことも災害に強い要因のひとつです。ほかにも、停電対策や通信経路の二重化など、運用面での対策もとられています。

日本全国で通話できるつながりやすさ

MCAサービスは、基地局を全国に100カ所以上も備えています。日本の産業・経済活動が集中している「太平洋ベルト」を中心に、一部の海上地域も通話エリアとしてカバーするなど、日本全国の多くの地域で通話することが可能です。また、NTTドコモの携帯電話回線と連携して、より広い通話エリアを実現したサービスも備えています。

MCAアドバンスとは|一般財団法人移動無線センター

MCA無線の3つのデメリット

日常業務だけではなく、いざというときの通話ライフラインとしても大きな存在感をもつMCAサービスですが、デメリットもありました。そのうち3つの要素をご紹介します。

ランニングコストが高い

ランニングコストとして2000円を超える利用料が毎月必要となります。また、利用料は通話容量やプランによって異なります。送信するデータや通話量が、契約した量をオーバーすると別途費用が必要となります。

利用可能エリアが狭い

大都市圏を結ぶ高速道路沿いなどでは問題なく利用できますが、山間部やトンネルなどではMCAサービスの専用回線がカバーしていない場所もあります。また、建物内での通話は専用回線の電波が届きにくく、通話できないケースもあります。さらに、プランによっては、ひとつの中継局しか利用できず、通話エリアが契約した中継局の周辺のみということもあります。

免許の取得が必要

MCA無線を利用するには、総務省の免許が必要です。免許の有効期限である5年ごとに、総合通信局に書類を提出し、免許を更新し続ける必要があります。また、免許も即日交付されるものではなく、申請して数週間後にやっと免許が交付されるため、更新手続きを計画的に行わなければならない煩雑さがあります。

MCA無線はサービスが終了します

デメリットもありながら、広範囲で話せる使い勝手と、いざというときに備えた安心感で20年以上にわたり日本の業務用通話を支えてきたMCAサービスですが、2024年、その終了が発表されてしまいました。なぜ、MCA無線のサービスが終了することになったのでしょう。

2029年5月31日をもってサービス終了

MCAサービスを提供するMRC(一般財団法人移動無線センター)は、その理由のひとつに、サービス開始から20年が経ち、各社から発売されていた端末が終売を迎え、新しい端末を供給できない状態になってることを挙げています。また、故障時の対応や、メンテナンスが難しくなってきていることも要因のひとつのようです。

800MHz帯デジタルMCAサービス終了について|一般財団法人移動無線センター

docomoの携帯回線と組み合わせたMCAアドバンスもサービス終了

また、NTTドコモの携帯回線と組み合わせて利用するサービスである「MCAアドバンス」については、2027年3月31日にサービス終了と、通常のMCAサービスより早く終了が予定されています。また、利用されることが少ない中継局は順次休廃止を行なう予定とのことで、利用者によっては早々に別のサービスを探す必要性に迫られそうです。

MCAアドバンスのサービス終了について|一般財団法人移動無線センター

MCA無線の新規申し込みは、現在不可能!

すでに、MCAサービスの新規の申し込みは2023年5月で終了しており、今後新たにMCA無線のサービスを受けることはできません。安全・安心、業務の効率化を長年担ってきたMCA無線は一定の役割を終えたと言えるでしょう。

MCA無線と同じようなことができる無線機は?最適な乗り換え先は?

では、MCA無線の代替手段はあるのでしょうか。MCA無線の特長のどの部分を重視するかによって、大きく3つの選択肢があるといえます。MCA無線の魅力をどこに感じていたのか、改めて見つめなおすことが、最適な代替手段の選択につながります。

「通信できるエリアを広くしたい」ならIPトランシーバー

MCA無線の大きな特徴、日本全国で話せるというポイントを重視するなら、IPトランシーバーがおすすめ。人口カバー率99%という広域をカバーするほか、料金も1800円~とリーズナブル。また、スマートフォン同様に免許更新の手続きが不要なことも魅力です。なかには、万一のキャリアの通信トラブルにも対応できるデュアルSIMタイプのIPトランシーバーもあります。

IP210H製品ページ

IP510H製品ページ

「災害時の通信手段として確保したい」なら衛星通信トランシーバー

災害時や非常時に備えた通話手段としてなら、衛星通信トランシーバーがおすすめです。大地震や大津波などの巨大災害時においても、衛星を経由して通話するため、地上の通信インフラの状況に関わらず通話することができます。送信ボタンをワンプッシュするだけですぐに複数の端末に情報を伝えることができるトランシーバーならではの同報性は、衛星電話にない大きな特長です。

IC-SAT100製品ページ

「普段用にも災害用にも使いたい」ならハイブリッドIPトランシーバー

IPトランシーバーと簡易無線機のどちらも使える、ハイブリッドIPトランシーバーもMCA無線の代替としておすすめ。日常の業務連絡は通話エリアが広いIPトランシーバーとして利用し、携帯電話回線に影響があるような災害時には、数キロ程度の近距離間で情報をやりとりできるデジタル簡易無線機として利用することができます。なお、通話モードを設定などで切り替える必要はありません。通話を始めるときに送信するボタンを2つ備えており、ボタンを押し分けることで、無線機の通話モードを選ぶことができます。

IP700製品ページ

まとめ:MCA無線がサービス終了しても、同様に使える無線機はたくさん!

MCAサービスは終了してしまいますが、これまで見てきたように、代替となる無線システムがあります。複数のサービスを組み合わせることで、現在のシステムより強固かつ便利なシステムを構築することも可能です。アイコムでは、MCAサービスからの乗り換えのご相談も承っています。