「防災月間」に寄せて、アイコム「防災向け無線ソリューション」をご紹介
増える自然災害から住民の命を守る「防災無線」
低予算での構築を可能にするアイコム式防災向け無線ソリューション
近距離で直接通話する従来型トランシーバーと、携帯電話網を使う広域性のあるIPトランシーバーを組み合わせた<ハイブリッド型の無線ソリューション>が、防災意識の高い自治体などに支持されています。
災害時に住民の命をつなぐ無線機の重要性、需要はますます増しており、アイコム式の無線システムは、全国の各自治体で導入されています。
このコラムでは、9月の「防災月間」を機に、当社の<防災向け無線ソリューション>について、東京都奥多摩町の導入事例なども交えて紹介します。
限られた防災予算 増える災害、緊急時に “ 必ずつながる ” 通信網の構築が課題
東日本大震災をきっかけに、国は防災行政無線のデジタル化を進めてきました。デジタル防災行政無線のシステム整備には、中継局の設置など大規模な設備投資が必要です。
他方、税収の少ない地方自治体は、厳しい財政状況が続きます。災害時の連絡網を低予算でどう構築するかは喫緊の課題です。加えて昨今、地震や台風、豪雨など大規模な自然災害が増えています。通信障害を引き起こすケースも多く、携帯電話(スマホ)が使えなくなるリスクを想定する必要があります。いま、行政には”必ずつながる” “途絶えない”連絡手段が求められています。
あらゆる種類の無線機をつなぎ、低予算で広範囲の無線通信エリアを構築
当社は通信障害に強いさまざまな無線機の開発を業界に先駆けて行ってきました。それらを用いると、防災行政無線と同等の通信エリアをカバーしながら、信頼性の高い通信網を安価に構築できます。

魔法の箱「RoIPゲートウェイVE-PG4」を活用した通信概念図
3タイプの無線機を活用
当社が自治体に納入している無線機は主に3タイプです。
その3つとは、無線機同士が直接通信する従来型のトランシーバー(非IPトランシーバー)と、携帯電話網を使って通信するIPトランシーバー、衛星回線を経由する衛星通信トランシーバーで、それぞれに特長があります。
携帯電話網を使わない非IPトランシーバーは、端末同士で直接通信するため、中継局への電力網の途絶や物理的な損壊があっても通話できる一方で、通話エリアは電波の届く範囲内に限定されます。
携帯電話網を使いながら通信障害に強い製品開発
携帯電話網を使うIPトランシーバーは、スマホのように遠距離でも使えるため便利で、近年普及が進んでいます。高い利便性・広域性を有する一方で、通信できるか否かは中継局などの通信インフラの状況に左右されるという側面があります。
その中でも当社は、IPトランシーバーと非IPトランシーバーの両方の通信方式を持つ、業界初のトランシーバーもラインアップしています。また、SIMカードをキャリア別(au回線、NTTドコモ回線)に2枚挿せる製品も開発するなど、IPトランシーバーにおける通信障害対策に手を打っています。
66機の衛星回線を利用、北極や南極でも“つながる”衛星無線機
また当社は、携帯電話回線などの地上インフラに頼らずに長距離通信ができる、衛星通信トランシーバー(IC-SAT100、IC-SAT100M)も、日本で唯一提供しています。66機の周回衛星を利用して通信するため、通話の際、端末のアンテナを衛星(特定の方角)に向ける必要がありません。大規模災害等で地上のインフラがダウンした場合でも、安定した通信を確保できます。その範囲は北極や南極を含む地球全体に及びます。操作も「通話」のボタンを押すだけと容易にしています。
周波数や機種の異なる無線機をつなぐ “魔法の箱”
加えて、これらの無線機(非IPトランシーバー、IPトランシーバー、衛星通信トランシーバー)同士の通話をかなえる、当社が“魔法の箱”と呼ぶ通信拡張ユニット(RoIPゲートウェイVE-PG4)も開発しています。周波数や機種の異なる無線機から電話やインターホンまで、さまざまな通信機器の相互通信を可能にするこの技術は、無線通信機器の専業メーカーならではの強みです。
また自治体には、これまで使っている既存の無線機もあり、その活用方法も問われます。“魔法の箱”は、規格を問わず無線機の通話を可能にするので、保有する“無線資産”を最大限活用できます。
こうした高い技術力と製品力を武器に、自治体の悩みや要望に応じて、アイコム式の<防災向け無線ソリューション>を提案しています。莫大な費用がかかる中継局を新設することなく、従来使用している簡易無線機も活用しながら、より低廉な予算でに広い範囲をカバーする無線通信網を構築します。
実際の導入事例
東京の約1/10、都内最高峰もある山間地を有する奥多摩町、災害時の孤立リスク低減
「低コスト」「広域性」「既存の簡易無線の有効利用」「使いやすさ」で防災システムを構築
東京都奥多摩町では、IPトランシーバーと衛星無線機を主体に、当社が“魔法の箱”と呼ぶ通信拡張ユニット(RoIPゲートウェイVE-PG4)を用いた<防災向け無線ソリューション>を、2022年末に構築しています。
奥多摩町は都内最高峰の登山スポットとして知られる雲取山(くもとりやま)など山々に囲まれています。降雪や積雪量は東京で最も多く、面積は都内で最も広く全体の1/10を占めます。「情報の孤立地域を防ぐ」を最重要項目として、「低コスト」「広域性」「既存の簡易無線の有効利用」「機器の使いやすさ」を主なポイントに、災害時の通信手段を見直しました。
奥多摩町では当初、既存のアナログ防災行政無線をデジタルに切り替えることも検討しましたが、中継局の建設、維持に莫大な予算がかかります。町民が住むエリアは携帯電波が通じるため、中継局が不要で「低コスト」なIPトランシーバー43台を導入しました。大規模災害で考えられる通信障害を踏まえて、IPトランシーバーと非IPトランシーバーの2つの通信方式を持つトランシーバーや、SIMカードを2枚挿せるデュアルSIM対応のトランシーバーを採用しています。片方のキャリアにトラブルが起きても即座に回線を切り替え、リスクを低減します。
電波の届かないエリアのある奥多摩町において、「情報の孤立地域をなくす」ためには、衛星通信の利用が有効です。使い方の難しい衛星電話から、使い慣れた無線機と同じくボタン一つで通信できる衛星無線機20台(IC-SAT100、IC-SAT100M)に切り替え、「機器の使いやすさ」もクリアしました。
また、多様な通信機器をシームレスに接続する当社の通信拡張ユニット(RoIPゲートウェイVE-PG4)を導入し、新たに活用するIPトランシーバーや衛星無線機、既存の簡易無線機の違いを超えて通話できる防災システムを組みました。町役場や消防団、避難所ではそれぞれ使用する無線機が異なります。本来、互換性のないそれらを同ユニットが連携させ、一斉同報できるようにします。そうして、「既存の簡易無線の有効利用」をしながら、情報を瞬時に広く共有できる体制を整えました。
導入事例の詳細については、こちらから
東京都奥多摩町様導入事例
奥多摩町で導入されている主な製品について

IP700シリーズ
業界初、携帯回線での通話と、無線機同士での通話の両方が可能なIP無線機「IP700」シリーズ
IP無線機「IP700シリーズ」は、携帯回線(LTE)経由での通話と、無線機同士が直接通信する従来式の通話の両方が可能な、業界初のトランシーバーです。「IP700」シリーズ同士だけでなく、当社の従来機(携帯電話回線用、直接通信用の無線機)との通話もできます。
また、通信に必要なSIMカードをキャリア別(au回線・NTTドコモ回線)に2枚挿せる「デュアルSIM」に対応し、大規模災害などで片方のキャリアにトラブルが起きても即座に回線を切り替えられます。
コミュニケーションを絶やすことのできない緊急時に強い無線機です。

IC-SAT100
災害時やへき地でも使える衛星無線機「IC-SAT100」
当社の衛星無線機「IC-SAT100」は、66機の周回衛星を利用して通信するため、通話の際、端末のアンテナを衛星(特定の方角)に向ける必要がありません。大規模災害等で地上のインフラがダウンした場合でも、安定した通信を確保できます。その範囲は北極や南極を含む地球全体に及びます。
操作も「通話」のボタンを押すだけと容易です。
無線機なので一斉通話ができ、電話と異なり関係各所に何度もかけ直す必要がありません。
また定額制なので、通話分の課金がありません。

VE-PG4
種類の異なる無線機同士の通話を可能に、通信拡張ユニット「RoIPゲートウェイVE-PG4」
通信拡張ユニット「RoIPゲートウェイVE-PG4」は、種類の異なるさまざまな無線機同士で、一斉に話せるように変換する製品です。これを導入すれば、IPトランシーバー、衛星無線機、簡易無線機、特定小電力トランシーバーといった、各種無線機とも通話可能です。無線機に限らず、構内放送のスピーカーに音声を流すなど、機器を問わない通信を実現する“魔法の箱”です。
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