スマホで使えるトランシーバーアプリと従来型無線機との違いとは?

2024年12月以降、電波法の改正によりアナログ方式の一部の周波数帯で簡易無線機が使えなくなることも後押しして、無線機のデジタル化が進められています。その代替ツールとして注目を集めているのが、スマートフォンで使えるトランシーバーアプリです。

しかし、無線機を使ってきた方にとっては、アプリでこれまでと同等の機能が使用できるのか、疑問に思うことも多いのではないでしょうか。そこで本記事では、トランシーバーアプリの特徴や機能、従来型の無線機との違い、メリット・デメリットなどについて解説します。

スマホでトランシーバーの機能が使えるトランシーバーアプリ

トランシーバーアプリとは、スマートフォンにインストールすることでトランシーバーのような通信ができるアプリのことです。従来のトランシーバーのように特定の周波数帯を必要とせず、スマートフォンの回線を利用するため、携帯電話の電波が届く範囲ならどこでも使用できます。

トランシーバーアプリの人気が高まっている背景には、スマートフォンの普及と通信インフラの進化があるともいわれています。4Gや5Gといった高速通信環境が整い、音声品質や通信の安定性は格段に向上しました。ビジネスシーンでも安心してスマートフォンが使える上、従来型の無線機ではむずかしかった同時通話や、通話に限らない多様なコミュニケーションができることから、さまざまな現場でトランシーバーアプリの活用が広がっています。

トランシーバーアプリの機能

トランシーバーアプリの基本的な機能は通話機能ですが、そのほかにも、アプリによってさまざまな機能が搭載されています。おもな機能として、下記のようなものが挙げられます。

<トランシーバーアプリのおもな機能>

アプリによっては、音声通話以外にテキストメッセージや画像、位置情報の送受信ができるものもあります。ほかのコミュニケーションアプリと異なるのは、ユーザー同士の友達登録などが不要で、管理者がグループを作成でき、ビジネスでも活用できる点です。

また、通話ボタンを押すだけでグループ内に一斉連絡できることが、トランシーバーアプリの最大の特徴です。多くのトランシーバーアプリはバックグラウンドでも実行されるため、相手がアプリを閉じていて通話ボタンを押すなどの着信操作をしなくても、音声を届けることができます。

トランシーバーアプリと従来型無線機との違い

トランシーバーアプリと従来型の無線機は同じような機能を使うことができますが、いくつかの違いがあります。それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。

通信方式

トランシーバーアプリは、携帯電話回線やインターネット回線といった、スマートフォンの通信を使用します。スマートフォン同士が直接電波をやり取りするのではなく、ネットワークでつながっており、通話アプリのように特定の相手とだけ通話できます。また、トランシーバーアプリを使用する際は、相手と同時に通話することが可能です。

一方、従来型の無線機は、機器同士が直接電波をやり取りし、同じ周波数を使用している人と通信を行います。送受信の際に同じ周波数を使用するため、送信中は受信ができず、受信中は送信ができない単信方式での通信が一般的です。

通信距離

トランシーバーアプリと従来型の無線機では、通信距離が異なります。

トランシーバーアプリは、通信距離に制限がありません。スマートフォンがWi-Fiや携帯電話回線に接続していれば、世界中のどことでも通信することが可能です。

一方、従来型の無線機は、種類によって電波を飛ばす強さ(送信出力)が決められているため、通信距離に制限があります。たとえば、特定小電力トランシーバーが通信できるのは数百m、デジタル簡易無線機でも数kmほどです。

免許取得や登録申請

トランシーバーアプリは従来型の無線機と違い、免許の取得や登録申請が必要ありません。電波の周波数には限りがあるため、無線機で電波を使用する際は免許や登録申請が必要な場合があります。

スマートフォンを使うトランシーバーアプリであれば手続きが不要で、誰でも手軽に使用可能です。

混信・傍受リスク

トランシーバーアプリは、従来型の無線機と違って混信や傍受されるリスクがありません。

従来型の無線機では、通信距離の範囲内で同じ周波数を使うと、ほかのユーザーの通信とぶつかって正常な送受信ができなかったり、誰でも受信ができて盗聴や傍受されたりする可能性があります。トランシーバーアプリでは暗号化されたインターネット通信を行うので、セキュリティ面では安心といえるでしょう。

トランシーバーアプリのメリット

手軽に使用できるトランシーバーアプリには、さまざまなメリットがあります。ここでは、4つのメリットについてご紹介します。

初期費用がかからない

トランシーバーアプリはスマートフォンがあれば使用できるため、新しく機器を購入する必要がなく、初期費用がかからないのがメリットです。従来型の無線機は、機能や送信出力によって価格に幅がありますが、比較的低価格な特定小電力トランシーバーでも数千円はする上、必ずペアかそれ以上の個数を購入する必要があります。

すでにスマートフォンが支給されている業務現場であれば、トランシーバーアプリのほうがコスト削減の効果は大きいといえるでしょう。

機器管理の負担が軽減される

トランシーバーアプリのメリットは、機器管理がスマートフォン一台で済むことです。スマートフォンは普段から持ち歩いている人が多く、業務のために携行する場合でも負担が大きくなりません。

また、スマートフォンは勤務先から貸与されている場合でも個人が管理するケースが多いため、オフィスで機器を管理するために出先から戻らなければいけない手間や、機器管理業務の面でもコストの削減や効率化を図ることができます。

同時に複数人へ連絡できる

トランシーバーアプリのメリットの1つは、一度で複数人に連絡できる同報性があることです。電話で個別に連絡する場合と異なり、通話ボタンを押すだけでグループ内のメンバーに一斉連絡ができるため、イベント運営や緊急時の対応など、大人数への情報伝達が必要な場面で便利に使えます。

アプリによってはグループ機能も備わっており、柔軟にコミュニケーション方法を選ぶことができます。

独自の機能が搭載されている

トランシーバーアプリのメリットには、ビジネス利用に役立つ独自の機能が搭載されていることも挙げられます。

たとえば、通話音声のテキスト化や位置情報の共有といった機能により、情報の一元管理や効率的な業務連絡が可能となるでしょう。また、アプリをアップデートすることで、常に最新の機能を使用できる点も魅力です。

トランシーバーアプリのデメリット

トランシーバーアプリには、スマートフォンを使う手軽さや機能面でのメリットがある一方で、デメリットもあります。おもなデメリットは、下記の通りです。

携帯電話の圏外では使用できない

トランシーバーアプリは携帯電話回線を使うため、契約している通信キャリアの圏外では使用できないことがデメリットです。

たとえば、通信キャリアがアンテナを整備していない山間部や地下など、携帯電話の電波が届かない場所では通信が途絶えてしまいます。また、通信キャリアでシステム障害が起こった場合も同様です。

業務でトランシーバーアプリを使う際には、電波状況が不安定な環境や、万が一のシステム障害に注意してください。

バッテリーを消耗する

トランシーバーアプリのデメリットに、スマートフォンのバッテリーを消耗することが挙げられます。長時間の通信を行った場合や、バックグラウンドでアプリが実行されている場合はなおさらです。

スマートフォンはトランシーバーアプリ以外にもさまざまなシーンで使用されるため、いざというときにバッテリー切れによって連絡ができないといった事態も起こりかねません。モバイルバッテリーを用意するなど、長時間の使用を考慮した対策が必要です。

即応性を求められる場面で操作できない可能性がある

トランシーバーアプリを使うにはスマートフォンの操作が必須となるため、即応性を求められる場面で遅れをとる可能性があります。緊急時は物理ボタンがある従来型の無線機のほうが優れている場合があるかもしれません。事前に操作性を確認し、メンバーに操作のレクチャーを行っておくことが大切です。

連絡の遅れによって損害が予想される業務では、無線連絡をトランシーバーアプリで代替するリスクについて、十分に検討しましょう。

ビジネス使用ではセキュリティチェックが欠かせない

トランシーバーアプリには無料のアプリも多く流通しており、セキュリティ面で不安があることもデメリットです。ビジネスでの使用にあたっては、情報漏洩や不正アクセスのリスクを考慮したセキュリティ対策が求められます。

さらに、使用したいトランシーバーアプリのサポート体制が整っているか、信頼できるデベロッパーが開発したものかを事前に確認することが大切です。

日本語に対応していない場合がある

トランシーバーアプリはさまざまなデベロッパーからリリースされており、一部のトランシーバーアプリは日本語に対応していません。人によっては操作面で不便さを感じる可能性もあり、デメリットとなります。トランシーバーアプリを共用したいメンバー全員が使いやすい操作性かどうか、対応言語に問題がないかなど、導入する前に確認しておくことをおすすめします。

トランシーバーアプリをビジネス利用するなら、アイコムの「IP500APP」がおすすめ

ビジネスの現場でトランシーバーアプリを導入する場合は、法人向けのサービスを選ぶことをおすすめします。

アイコムの「IP500APP」は、アイコム製IPトランシーバーとほぼ同等の機能を備えた、安全かつ効率的なコミュニケーションを実現するIPトランシーバーアプリケーションです。

IP502HなどのIPトランシーバーと通話互換性があるため、現場で使う方はIPトランシーバー、オフィスで使う方はアプリといったように、状況に応じて使い分けることができます。
さらに、オプションで端末位置情報を利用した動態管理ツールや、ほかの種類のトランシーバー、電話、放送設備との連携が可能な通信拡張ユニットもご提供しています。

このサービスの詳細は、下記をご覧ください。

より高い堅牢性を求めるならIPトランシーバーの検討を

屋外での業務や移動を伴う業務など、スマートフォンでは堅牢性と即応性に不安があるという場合、IPトランシーバーの導入を検討してみましょう。

IPトランシーバーは新しく機器を導入する必要があるものの、携帯電話回線を使用するため、通信方式や通信距離といった点ではトランシーバーアプリと同等の利便性があります。

デュアルSIMタイプのIPトランシーバーであれば、1つの通信キャリアで通信障害が起こっても、リスクを低減できます。また、防水性能や堅牢性が高く、過酷な環境でも安心して使えることは大きなメリットです。

トランシーバーアプリは、現場の状況に合わせて導入しよう

トランシーバーアプリは、スマートフォンで使用できる手軽さや機能性が大きなメリットですが、屋外での堅牢性、緊急時の即応性といった点ではリスクもあります。トランシーバーアプリを導入する現場がどのような環境で、どのような使い方が想定されるかを把握し、状況に合わせて検討することが大切です。

アイコムは総合無線機メーカーとして、IPトランシーバーをはじめとした高機能な無線機を提供しており、多くの企業様や団体、自治体に製品を導入いただいています。
トランシーバーアプリとIPトランシーバーを併用するなど、ビジネス用途に合わせた機器のご提案も可能ですので、企業のご担当者様はお気軽にご相談ください。