無線機(トランシーバー・インカム)には、車に取り付けて使用するタイプのものがあります。車のバッテリーから直接電源をとることができるのが便利で、移動しながら通話をしたり、情報収集したりできるのが魅力です。

しかし、車載型の無線機を使ってみたい方の中には、どのような機種を選べば良いのか分からないと悩まれている方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では、車で使用できる無線機の種類やおすすめの製品を紹介します。さらに、導入時の注意点や業務での活用事例も解説します。

車で使用する無線機の種類

無線機(トランシーバー・インカム)には、趣味で使用される「アマチュア無線機」と、仕事で使用される「業務用無線機」の2種類があります。これらは、無線通信を行うという点では同じですが、使用目的が大きく異なるため、注意が必要です。

車載型無線機を使用するにあたって、まず「アマチュア無線」と「業務用無線」の違いについて理解を深めておきましょう。

アマチュア無線とは

アマチュア無線とは、個人が自身の趣味で使用する無線のことです。電波法では、「金銭上の利益のためではなく、もっぱら個人的な無線技術の興味によって行うもの」と定義されています。そのため、仕事でアマチュア無線を使用すると、たとえ無線従事者免許や無線局免許を持っていても電波法に違反することになり、厳しい罰則が科せられる可能性があります。

アマチュア無線機を使用するには、送信する周波数や設備に応じた「アマチュア無線技士(1級~4級)」の資格が必要です。また、無線局を開設するためには無線局免許状の申請をしなければなりません。

参考:総務省 電波利用ポータル|その他|アマチュア無線は仕事に使えません!

おすすめのアマチュア無線機

ここでは、車載型のアマチュア無線機を使用したいと考えている方に向けて、おすすめのアイコム製品をご紹介します。

■ID-5100

144/430MHz デュアルバンド デジタルトランシーバー(GPSレシーバー内蔵)です。大型のタッチパネルを採用、アマチュア無線のデジタル通信D-STAR®に対応しています。

■ID-4100

144/430MHz デュオバンド デジタルトランシーバー (GPSレシーバー内蔵)です。アマチュア無線のデジタル通信D-STAR®に対応しています。オプション追加でBluetooth®対応イヤホンマイクの使用が可能です。

■IC-2730

ロングセラーの144/430MHzデュアルバンド FM(アナログ)20Wトランシーバーです。また、Black Edition(ブラックの液晶) のIC-2730Bもラインナップしています。Bluetooth®機能を搭載するなど、使いやすさが魅力です。

業務用無線とは

業務用無線とは、企業や組織が仕事で使用する無線のことです。もちろん、個人事業主であっても、事業を営んで利益を得ている場合は営利組織とみなされるため、業務用無線機を使用する必要があります。

車載型の業務用無線機は、「デジタル簡易無線機(免許局・登録局)」と「IPトランシーバー」の2種類があります。仕事で使用するため、乗用車だけでなく、トラックやバスなどの大型車のバッテリーの電圧に対応しているのが特長です。

・乗用車のバッテリー:DC13.8V(±10%)

・大型車のバッテリー:DC26.4V(±10%)

なお、業務用無線機は種類に応じて免許や登録申請が必要な場合があります。下記で解説するので、ぜひ車載型無線機を選ぶ際の参考にしてください。

おすすめのデジタル簡易無線機

デジタル簡易無線機は、最大5Wの高出力により、車載型無線機同士で~10kmの広い範囲をカバーすることができます。かんたんな登録申請でレジャーなどでも使える「登録局」と、免許を受けて業務でのみ使用できる「免許局」の2種類に分かれます。

手軽に広い範囲をカバーできるデジタル簡易無線機ですが、無線機本体が高額であるというデメリットもあります。また、使用にあたって電波利用料(400円/年×台数)の支払いが必要です。

ここでは、車載型のデジタル簡易無線の導入を検討されている方に向けて、おすすめの製品をご紹介します。

■IC-DPR100 PLUS

登録手続きだけで手軽に使えるデジタル簡易無線機(登録局)です。5Wの高出力で、配送業務や送迎業務など、広いエリアを走る車両の連絡手段として活躍します。スピーカーマイクロホンが標準付属しているほか、無線機の動作を手元で制御できるコマンドマイクもオプションとしてラインナップしています。

■IC-DU7505

中継装置を利用して簡単に通話距離を2倍に拡張できるデジタル簡易無線機(免許局)です。より広いエリアでの配送業務や工事現場への資材運搬などで活躍します。また、コマンドマイクやハンズフリーマイクなど、多彩なオプションをラインナップしています。

おすすめのIPトランシーバー

通信に携帯電話の回線を利用するため、全国どこでも使用できる、免許不要の無線機です。遮蔽物があっても、どれだけ離れていても、携帯電話のサービスエリア内なら、安定した通信が可能です。

しかし、IPトランシーバーは、デジタル簡易無線機とは異なり、月々の通信料を支払う必要があります。

ここでは、長距離での通話が可能な車載用無線機をお探しの方に向けて、おすすめのアイコム製品をご紹介します。

■IP501M

auとNTTドコモのデュアルSIMに対応した、IPトランシーバーです。状況に応じてキャリアを切り替えて使用することも可能。物流や長距離バス、タクシーといった広域を移動する車両での使用に適しています。スピーカーマイク、マイクハンガー、車載ブラケット、DC電源ケーブルなど、付属品も充実。GPSアンテナも標準で付属しています。

車での無線機利用に関わる道路交通法に注意

道路交通法では、運転中に携帯電話などの無線通信機器を「手に持って通話する行為」、「画面を注視する行為」が違反となります。では、車載型無線機は問題ないのでしょうか。
車載型無線機は、操作をしなくても音声を聞くことができ、画面を見なくても話すことができるため、道路交通法に抵触しません。

また、IP無線機について、警察庁・国家公安委員会は、マイクを持ってボタンを押して送信する「PTT機能(Push To Talk:送信ボタン機能)」、マイクを手で持たずに送信する「ハンズフリー」も、道路交通法に違反しないとしています。車載型無線機は基本的にマイクを手に持ち、PTTボタンを押して通話します。加えて、「ハンズフリー通話」が可能な機種もあるため、車でも安心して使用することが可能です。

ただし、運転中は適切な速度で走行、周囲の安全を確認し、道路状況や天候に応じた操作を行うことが求められます。車で無線機を使用している際に、これらの義務を怠ってしまうと、「安全運転義務違反」罰則や反則金が科される可能性があるため注意しましょう。

業務で車載型無線機を使用するメリット

運転中の携帯電話やスマートフォンでの通話が禁止されているため、車を使用する業務での連絡ツールに困っているという企業のご担当者様も多いのではないでしょうか。

車載型無線機は、便利な連絡ツールとして、さまざまな企業で導入されています。ここでは、業務で車載型無線機を使用するメリットについて解説します。

一度に多くの人に同じ情報を伝えられる

無線機であれば、送信ボタンをワンプッシュして話すだけで、業務の内容や進捗状況を、迅速に報告することができます。携帯電話だと、車を停めて一人ひとりに電話をかけ続けなければいけませんが、車載型無線機ならスムーズに連絡することができます。また、一斉連絡により、業務や交通情報をリアルタイムで共有することもできます。

GPSで車の位置情報を把握できる

車載型無線機にはGPSを搭載している機種もあります。GPSを活用して、自分の位置情報(緯度/経度)を表示したり、通話相手に位置情報を送信したりすることが可能です。また、IP無線機のほとんどはGPSを搭載しており、位置情報サービスやソフトウェアを活用して、PCやスマホに無線機の位置情報を表示することができます。管理者が、車両の位置をリアルタイムに把握できるようになり、業務の効率化を実現します。

業務における車載型無線機の活用事例

車を使用する仕事でのコミュニケーションに便利な無線機ですが、実際にどのような場面で使用されているのでしょうか。ここでは、車載型無線機の活用事例をご紹介します。ぜひ、導入を迷われたときの参考にしてみてください。

配送業

各地へ荷物を配送・運輸する運送業では、いかにトラックを効率よく配置するかが重要です。効率よくドライバーを動かすためには、事務所から的確に指示を出すことが求められます。

車載型無線機を活用すれば、事務所からトラックの位置を把握することが可能です。急な配送依頼があった場合も、近くのドライバーに素早く指示を出したり、位置情報を活用して、依頼先への到着時刻を予測したりできます。

また、ドライバー同士でのコミュニケーションツールとしても有用です。リアルタイムな道路状況の情報共有や、トラック間の荷物の受け渡し場所の設定など、ドライバー同士での連携強化も実現します。

バス・タクシー業

バス・タクシーでも無線機は活用されています。急な配車依頼にも、事務所のスタッフが、依頼場所の近くにいるドライバーを確認して、効率的に手配することが可能です。また、問い合わせや相談があった場合も、すぐに運行状況を把握して、迅速な対応を実現します。車載型無線機を導入することで、細やかな対応ができるようになり、お客様の満足度向上にもつながります。

建設業

資材を積んだ工事車両や生コン車などに無線機を搭載することで、ワンタッチで用件を素早く伝えることができます。建設・工事現場の資材の不足状況を確認しながら、事務所のスタッフが素早くドライバーへ運搬の指示を行うことができます。

また、生コン車を扱う場合、生コンクリートは時間とともに固まる性質のため、90分以内に現場へ納品することがJIS規格で決められており、より速やかに運搬することが求められます。事務所から最適なルートを生コン車へ指示したり、ドライバー同士で道路状況を共有したりすることで、時間のロスを防ぐことも可能です。

送迎業務

ホテルや旅館、介護施設、幼稚園・学校などで広く利用されている送迎バス。車載型無線機を導入することで、施設スタッフと送迎バスの間で迅速に連絡を取り合うことが可能です。施設のスタッフが、送迎バスの到着時刻を正確に把握して、受け入れの準備を進めることができるため、業務の効率が向上します。また、体調不良者が出た場合など、万が一、バス内でトラブルがあった場合も、いち早く施設へ連絡することが可能です。

目的に最適な車載型無線機を選ぼう

車載型を含む、無線機には「アマチュア無線機」と「業務用無線機」の2種類があり、それぞれ使用目的が異なります。仕事で車載型無線機を使用したい場合は、「業務用無線機」であることを確認しておくことが大切です。

また、車載型無線機の導入にあたっては、電波法や道路交通法の注意が必要です。機種によっては、免許や登録手続きが必要な場合があります。これらの点を踏まえて最適な車載型無線機を選びましょう。

アイコムは総合無線機メーカーとして、高機能な業務用無線機を提供しており、多くの企業様や団体、自治体に製品を導入いただいております。業務の内容や現場の状況に応じたご提案が可能ですので、車載型の業務用無線機の導入をご検討中の企業のご担当者様は、お気軽にご相談ください。