皆さんも、飲食店や店舗、空港や駅で、スタッフが無線機、イヤホンやマイクを装着しているのを、一度は見かけたことがあると思います。それが、インカムです。このように様々なシーンで活躍していることからも、インカムがいかに業務に役立つツールであるか、おわかりいただけると思います。ここではインカムの基礎知識から、そのメリット、おすすめの製品・使用開始まで、わかりやすく解説します。

インカムとは

「インカム」という言葉は聞いたことがあっても、どういう意味なのか?何ができるのか?どんなメリットがあるのか?詳しくは、ご存じない方が多いのではないでしょうか。ここでは、インカムの概要(基礎知識/正式名/意味)を簡単にご紹介します。

実は「インカム」の厳密な定義はありません

「インカム」とは、通話するための通信機器です。しかし、インカムという言葉の意味、それが具体的に示すものについては、定義があるわけではありません。電話オペレーターやテレビのスタジオで使用されているヘッドセットもインカムと呼ばれていますし、無線機やスマートフォンにイヤホン/マイクを接続した機器もインカムと言われています。無線機やトランシーバー本体をインカムと呼ぶこともあります。最近ではスマートフォンにイヤホンマイクを接続するタイプのインカムも登場しています。各メーカーや業界により、その意味合いや該当する機器が異なっています。

インカムの正式名と意味

「インカム」という言葉は、すでに一般的になっています。しかし、正式名を知っている方は少ないのではないでしょうか。インカムの正式名(フルネーム)は、インターコミュニケーションシステム(Intercommunication System)です。先述の通り「インカム」という言葉は、各メーカーや業界により、その意味合いや指し示す機器が異なるため、製品の選定等の際には注意が必要です。
当記事内では「インカム」はイヤホン/マイクが接続された無線機(トランシーバー)、「無線機」は機器本体で通話する通信機器として話を進めていきます。

インカムの使い方

インカムの通信方式には、2種類あります。交互通話(単信方式/シンプレックス)と同時通話(複信方式/デュプレックス)で、それぞれ使い方が異なります。

■交互通話方式の通信では、PTT(送信ボタン)を押しながらマイクで話します。
相手と交互に通信、つまり一方しか話ができないため、自分が話し終わったら「どうぞ」と伝え、PTTボタンを離すことで、今度は受信のターンに移ることができます。

■同時通話方式の通信では、電話のように、お互いが同時に話すことが可能です。
PTT(送信)ボタンを押して相手を呼び出し、相手がPTTボタンを押すことで通信がスタート。どちらかが再度PTTを押すことで通話が終了します。

このように、いずれの通話方式も操作は簡単ですので、すぐに使いこなせるようになるでしょう。

インカムと無線機(トランシーバー)の違い

インカムと無線機(トランシーバー)は、どちらも情報やメッセージを伝える通信機器ですが、それぞれに特徴があります。その特徴を理解し、職種や作業内容にあった機器を選ぶことが重要です。

無線機の特徴

ビジネスにおいて無線機とトランシーバーは、同じものと考えて問題ありません。無線機とは、電波の送受信を兼ねた通信機器。離れた場所にいる相手と通話するだけでなく、一斉に複数の人へ連絡することができるのが特徴です。そのため、多くのスタッフが共同で作業を行うイベント会場や工事/建設現場、警備業で多く使用されています。

インカムの特徴

先述の通り、インカムはヘッドセットとマイクが一体化した通信機器(無線機)です。そのため、無線機本体を持ったり、操作したりする必要がなく、音声を送受信している時も作業できる等のメリットがあります。インカムは、店舗や飲食店、介護施設など、作業をしながらの通話に適しています。

インカムをビジネスで使うメリット

インカムは、ホテルや飲食店、工事現場など様々な業種で使用されています。それだけインカムはビジネスにおいて、大きな魅力、メリットがあるということです。そのメリットを以下にまとめました。

ハンズフリーなので両手で作業をしながら話せる

インカムにはイヤホン/マイクが接続されているので、無線機本体を操作したり、手に持ったりする必要がありません。同時通話対応の無線機なら通話しながら、両手で作業することができます。

月々の通信料が不要

インカムは通信料なしで使用できるタイプも多くあり、ランニングコストを抑えることができるのも大きなメリットです。

電話回線に左右されず、安定した通話が可能

一般的に使用されているインカムは、機器間で直接通信します。スマホなどでの通話とは異なり、電話回線や通信インフラの状況に左右されることもなく、安定した通話が可能です。

すぐに使いこなせるシンプル操作

インカムの操作は基本的にマイクの送信ボタンを押すだけ。操作がシンプルなので、初めての方でもすぐに使うことができるほか、作業にも集中できるというメリットもあります。

インカムが効果的なビジネスシーン

インカムはスタッフのコミュニケーション/連携を強化することができます。迅速かつスムーズな対応、連携した動きが求められるビジネスシーンで、インカムは効果を発揮します。

介護 ~サービスと安全性の強化、人手不足の解消にも効果を発揮~

常に入居者への迅速な対応が求められる介護業界では、職員間の情報共有、スムーズな連絡ができるインカムは効果的なツールです。特に電話と異なり、一斉連絡ができるため、スタッフがリアルタイムで状況を把握でき、迅速かつスムーズな対応が可能になります。慢性的な人手不足による諸問題も、インカムによる職員間のコミュニケーション強化で対応することが可能です。

店舗 ~スムーズなお客様対応と業務の効率化を実現~

店舗をはじめとした接客業においてもインカムは、その威力を発揮します。レジから倉庫担当者に在庫を確認したり、お客様からの問い合わせに対し、専門のスタッフに対応を専門のスタッフに対応を依頼したり、スピーディで的確な接客が実現します。また、一斉連絡により、全スタッフが店内の状況を同時に把握することができるため、各スタッフが適切な動きができ、業務効率の向上にもつながります。また、作業をしながら通話できるのも、インカムが店舗での使用に向いている点です。

イベント ~スタッフの連携強化でイベントの進行/管理/案内の質を向上~

多くのスタッフが関わり、リアルタイムで進行するイベントでは、一斉連絡、情報の共有ができるインカムは最適なコミュニケーションツールとなります。設営時の指示、イベントの進行/管理、来場者の案内、警備まで、幅広く活用することができます。また、迅速な動きが求められるイベント業では、ワンアクションで通話を開始できるインカムは非常に便利です。

インカムの種類とおすすめ製品

インカムを構成する機器を無線機とイヤホン/マイクに分けて紹介します。無線機は免許不要で使えるものをピックアップしています。

特定小電力トランシーバー ~気軽に、低コストでの導入が可能~

1台10,000円前後(市場価格)で購入することが可能で、コスト的には圧倒的に有利です。その一方で、出力が0.01W(10mW)と弱いため、小規模な店舗、見通しのいい場所での使用に適しています。

■IC-4120

交互通話に対応。中継装置やLAN接続により、通話範囲を拡張できるため、大規模な店舗や施設での使用も可能です。

デジタル簡易無線機<登録局> ~大型の施設、広範囲での通信に対応~

5Wのハイパワー(特定小電力トランシーバーの500倍)。免許不要で使える無線機の中では電波が強く、~5kmの長距離通信が可能です。

■IC-DPR45

Bluetooth®や97chの増波にも、しっかりと対応。防水性能も最高水準。コストパフォーマンスに優れた製品です。

IPトランシーバー ~携帯電話の通話圏をカバー~

カバーエリアの広さを求めるなら、IPトランシーバーです。通信に携帯電話の回線を利用するため、全国どこでも使用可能(月々の通信料が必要)。遮蔽物があっても、どれだけ離れていても、携帯電話のサービスエリア内なら、安定した通信が可能です。

■IP510H

LTE回線とWi-Fi環境下で通信可能なハイブリッドタイプのIPトランシーバー。どちらかの回線が使えない環境であっても、通信が途切れることがなく、安心して利用できます。

スマホアプリ ~お持ちのスマートフォンを活用~

スマートフォンにアプリをインストールすることで、インカムとして使用することができます。無線機を購入する必要はありませんが、初期設定費用、利用料等がかかります。

■IP200APP

Android™/iOS®のスマホ/タブレットに対応するIPフォンアプリです。アプリ上で、内線電話・外線電話・一斉連絡が可能。ビジネスフォン・IPトランシーバーとほぼ同等の電話・トランシーバー機能を備えています。

■ICOM CONNECT

Android™/iOS®のスマホに対応したAIインカムアプリです。複数人への一斉連絡、会話の文字起こし機能、合成音声による同時通訳機能、テキスト入力による音声発信など多様な機能を兼ね備えています。

インカム用マイク/イヤホン等の周辺機器

■イヤホンマイク

通話ボタンが装備されているため、無線機本体を持たずに送受信の切り替えが可能。無線機本体を操作せずに通話できるため、介護や店舗など、動きの多いビジネスシーンで特に有効です。

■ヘッドセット

イヤホンとマイクが一体となっています。イヤーフック型、ネックアーム型、ヘルメット取り付け型など、バリエーションも豊富。業種や業務内容に合わせて、最適な製品を選ぶことができます。

■Bluetooth対応イヤホンマイク

無線機本体とイヤホンマイクをワイヤレスでつなぐタイプです。コードの煩わしさから解放されるため、作業をしながら、移動しながらでも快適に通話することができます。

ビジネス用インカムの入手から使用開始まで

インカムには、様々な無線機があり、それぞれに特徴があることはご理解いただけたと思います。次のステップとして、それぞれの入手方法と使用開始までを解説します。

特定小電力トランシーバーならネット通販で購入、すぐに使える

比較的簡単に入手できるのが特定小電力トランシーバーです。無線機の専門店だけでなく、大型電気店、インターネットでも購入することができます。しかも、免許や登録申請など、手続きは一切不要。入手次第、すぐに使用を開始することができます。

デジタル簡易無線機<登録局>はネット通販で購入、簡単な登録で使える

デジタル簡易無線機<登録局>は、無線機販売店はもちろん、ネット通販およびレンタルで入手可能。使用開始に際しては、利用者が登録する必要があります。

IPトランシーバーは通信会社との契約が必要

IPトランシーバーを入手する方法は2つ。購入とレンタルです。いずれの場合も、携帯電話の回線を使用するため、通信会社との契約が必要。契約はIPトランシーバーを購入またはレンタルした販売店やメーカーを通して行います。

スマホアプリは初期設定が必要

スマホ用インカムアプリは、Google Play、App Storeからダウンロードが可能。イヤホンマイクと接続して使用します。ただし、そのままでは使えず、インストール後、販売店で初期設定等が必要になります。

インカムを安心して導入していただくために

インカムお試しサービスの活用

免許なしで誰でも使えるインカムですが、いざ購入/レンタルするとなると、やはり不安なもの。そこで、ここでは安心して無線機を導入していただくためのポイントを紹介させていただきます。

■ビジネス用インカムお試しサービスの活用

実際に使用する環境/距離で通信できるのか、不安に感じられている方も多いと思います。そんな方におすすめなのが「インカムのお試しサービス」。実際に使ってみることで、通信の状況、無線機の操作を、導入する前に確認することができます。一部の販売店/レンタル店、もちろんアイコムでも、インカムの貸し出しサービスを実施しています。

まとめ

当記事では、インカムの基礎知識、メリットからおすすめ製品、使用開始までを解説しました。小規模な飲食店から、大規模な店舗、イベント、介護等の施設まで、業種やビジネスシーン、規模に関係なく、インカムによるコミュニケーション強化が、業務の効率、精度の向上につながることをご理解いただけたと思います。

また、簡単に使えること、免許不要なタイプもあり手軽に導入できることをご紹介しました。インカムをより身近に感じていただけたのではないでしょうか。

インカムは確実にビジネスを進化させます。インカムに少しでも興味を持たれた方は、気軽にアイコムにご相談ください。