近年、無線機業界では、電波の有効活用のためのデジタル化が進んでいます。電波法改正により一部の周波数を利用するアナログ無線の使用禁止や、デジタル無線の使用できるチャンネルが拡大した「増波対応」など、デジタル無線を取り巻く状況も変化してきています。

そこで本記事では、デジタル無線とアナログ無線の違い、またデジタル無線に関わる電波法改正について解説します。

デジタル無線とは?

デジタル無線機とは、「デジタル方式」で電波を発信する無線機のことを指します。
音声を「0」と「1」のデータに変換し、電波を発信することで、傍受されにくく、また、占有する周波数帯幅(使用する周波数の範囲)が少ないため、電波を有効活用することが可能です。

アナログ無線との違い

音声をデジタルに変換し、電波を発信するデジタル無線と違い、アナログ無線機では、音声の振幅をそのまま電波に乗せて送信する方式を使います。アナログ無線は、山岳地帯や、ビル群など入り組んだ地形に強いというメリットがあります。しかし、占有する周波数帯幅が大きく、音質が悪いという欠点があります。

デジタル無線の代表格「デジタル簡易無線機」について

デジタル方式で電波をやり取りする無線機の種類のひとつに、「デジタル簡易無線機」が挙げられます。
デジタル簡易無線機とは、「簡易無線局」といって、簡易な業務や個人の用途での利用を目的にした無線機の種類です。デジタル方式でやり取りされる簡易無線局の無線機として「デジタル無線」と同一視して記されていることも多いため、覚えておきましょう。

デジタル簡易無線機のメリット

デジタル簡易無線機は、5Wの強力な電波を出すことができ、数km程度の広い範囲で使用できます。また、デジタル方式で通信を行うため、高い秘話性も備えています。

免許局と登録局とは?

デジタル簡易無線機を使用するための無線局には2種類あり、開局に免許が必要な「免許局」と、登録申請だけで開局できる「登録局」にわかれます。

<デジタル簡易無線機を使用できる無線局の種類>

■ 免許局

免許局は、総務大臣の免許を受けて開局する、法人や団体向けの無線局です。無線の使用者に無線従事者免許などの資格は必要ありません。ただし、業務に使用することが条件で、使用範囲は免許された法人内の社員同士・団体内の職員同士の通信にかぎられます。

■ 登録局

登録局は、免許よりも手続きが簡単な登録申請を行うことで開局できる無線局です。無線の使用者に資格は不要で、用途も特に限定されていないため、業務で使うのはもちろん、レジャーで使うこともできます。また、使用範囲に制限がなく、登録者でなくても使用できるため、レンタルすることも可能です。

デジタル無線に関連した電波法改正は2つ!

さて、デジタル無線では、その利用を促進・拡大するために、ここ数年で電波法が改正されています。
ここからは、デジタル無線に関連した電波法について解説します。
 

①    無線機もデジタル化へ「一部の周波数を利用するアナログ無線の使用禁止」
②    デジタル無線が利用拡大「デジタル簡易無線の増波対応」

一部のアナログ無線は令和6年(2024年)12月1日以降、使用禁止に。

電波は有限資源で、総務省が電波をどのように「割り当て」するかを管理しています。携帯電話をはじめとする電波を利用する機器は、近年増加の一途であり、無線機に割り当てられている周波数も、最適化されています。その一つが、350MHz及び400MHz帯の簡易無線局のアナログ無線(アナログ方式の無線機)の使用禁止。アナログ無線をデジタル無線に変えることで、占有周波数帯幅を狭帯域化(ナロー化)ができるため、デジタル化が進んでいます。現時点(2025年5月)で、アナログ無線機は使用を「禁止」されています。アナログ無線機をお持ちの方は、以下総務省サイトより、お問い合わせ先の記載もありますので、ご確認ください。

可能性が広がる、デジタル簡易無線機の増波対応。

デジタル簡易無線機は、使用者に免許不要な上、クリアな音質で、長距離の通信ができることなどから、個人から業務まで幅広い用途で利用が進んでいます。また、無線機のデジタル化やアナログ停波に伴うデジタル簡易無線機への移行なども相まって、デジタル簡易無線機を利用するユーザーが増えています。
そこで、総務省では簡易無線局において、350MHz及び460MHz帯のデジタル方式の周波数を拡大しました。これにより、電波が混雑して使いにくかった場所や時間でも、使いやすくなると見込まれています。また、上空などでも利用できるチャンネルの増波、ドローンなどとの通信もメーカーにより可能になりました。

増波チャンネル対応製品や中継装置も登場。おすすめ製品を紹介。

電波法の改正により、各メーカーでは新しい規格に対応した製品が登場しています。デジタル簡易無線機では、増波により使用できるチャンネルが登録局は35chから97chへ、免許局は65chから75ch+10ch(ペア/中継用)に増えました。無線機の利用が多い大規模な現場や会場などで課題点となっていた混信の低減が見込まれています。デジタル簡易無線機の「免許局」では、「中継局」が新たに追加されました。中継装置を利用が可能になったことで、今までの通信距離を約2倍にのばすことができるようになりました。

■「登録局」デジタル簡易無線機のおすすめ

ビジネスやレジャーで手軽に利用できるベーシックモデル【IC-DPR45】。
Bluetooth®機能に対応・防塵・防水性能も高水準で、コストパフォーマンスに優れた製品です。

■「免許局」デジタル簡易無線機のおすすめ

無線局免許を取得した企業や団体などの法人が利用できる、デジタル簡易無線機(免許局)【IC-DU45】。
大型倉庫やビル管理業、大型商業施設の警備業などのビジネスシーンでご使用いただけます。
Bluetooth®機能、ワンタッチで通話の相手を切り替えられるサブチャンネルPTT機能など便利な機能を備えています。

■「免許局」デジタル簡易無線機の中継装置

増波モデルのデジタル簡易無線機(免許局)に対応の中継装置【IC-RP6300CR】。
通信距離を約2倍に延ばすことが可能です。
デュプレクサ付属のため、送信受信のアンテナ1本で運用することができます。

まとめ

アナログ無線機の使用禁止や、デジタル簡易無線機の増波対応など、「デジタル無線」を取り巻く状況は、ここ数年で変化しています。無線機は、複数人に一斉連絡ができ、コミュニケーションツールとして利用が進んでいます。デジタル無線の“今”を知っていただき、より無線機が活躍することを願っています。デジタル簡易無線機や中継装置だけでなく、さまざまなジャンルの無線機を取り揃えていますので、無線機にご興味がございましたら、ぜひお問い合わせください。