ホームアマチュア無線機器トップBEACONトップエレクトロニクス立国の源流を探る > No.137 電蓄からデジタルオーディオまで 第39回

エレクトロニクス立国の源流を探る


前の記事  | 

No.137 電蓄からデジタルオーディオまで 第39回

MDの需要拡大を図るため高音質化、長時間化などの新規格が登場
2010年のJEITA国内出荷統計からMDの項目が削除されMDの時代は終焉したわけだが、MDが登場してからこの間、生き残りをかけて高音質化、長時間化、他の分野への応用など様々な努力が傾けられた。その一つにMDLP(Mini Disc Long-Play mode)がある。2000年から導入された規格で、MDに2倍、4倍の長時間録音モードを追加した規格。もともとMDの開発は、CDからのダビングを想定したものでステレオ録音の場合60分間録音できる「60分ディスク」がメインだった。これに「74分ディスク」、「80分ディスク」なども追加発売された。また、モノラル録音の場合は、録音可能時間はそれぞれ2倍の120分、148分、160分となる。MDの長時間録音化は、オーディオ市場活性化を望んでいたメーカーはもちろん、ユーザーの間にも長時間化を望む声が多かったのでMDLPの登場は歓迎された。

MDの2倍の録音時間のLP2モード、4倍のLP4モード
MDLPには、MDの2倍の録音時間のLP2モードと、4倍のLP4モードがある。LP2モードでは、符号化方式として「ATRAC3」が採用され、「ATRAC」の292kbpsに対してLP2モードでは132kbpsが、LP4モードでは66kbpsの符号化方式が採用されている。LP2モードは歌や楽器の練習用に、LP4モードではステレオ音声の左右相関を利用して圧縮するJoint Stereoを導入、ビットレートの不足を補っているので、会議の録音などが適した用途となる。しかし、「ATRAC」と違ってスケールファクターが存在しないので音量の調整は出来ない欠点があった。それでも、LP4モードで60分ディスクを使用し240分間録音でき、さらに80分ディスクでは最大320分間録音できるのは大きなメリットだった。

モード 符号化方式 60分ディスク 74分ディスク 80分ディスク
SP (ステレオ) ATRAC 60分 74分 80分
SP (モノラル) ATRAC 120分 148分 160分
LP2 (ステレオ) ATRAC3 120分 148分 160分
LP4 (ステレオ) ATRAC3 240分 296分 320分
表:MDとMDLP各モードとディスクによる録音可能時間

MDとの上位互換性を確保されていたMDLP
新しい規格を追加した場合に重要なのは、従来規格との互換性である。MDLPデッキで録音したディスクを、従来のMDデッキなどで再生できるかどうかである。MDLP非対応機器でもディスクの認識は可能で、SPモードで記録された場合は再生できる。しかし、LP2モードやLP4モードで録音されたディスクの場合は、曲名欄の先頭に「LP:」と表示され、音声が流れない。これに対してMDLPデッキでは、MDとの上位互換性があり、MDデッキで録音されたディスクは再生可能となっている。これは、MDLPがMDとの互換性を重視して開発されたためである。

2001年にはNet MDが登場、パソコンと音楽データ転送が可能に
さらに、2001年にNet MDと呼ばれるMDとパソコン間の音楽転送規格をソニーが発表した。これによりパソコンにある録音データをMDに転送して音楽を楽しむことができるようになった。このころは、ICレコーダー(デジタルオーディオレコーダー)が台頭してきた時期で、1990年代急速に普及してきたMDにも陰りが出ており、MD開発メーカーのソニーばかりでなく、MD機器を製造しているメーカー各社にとっても朗報だった。

ICやHDDを記録媒体とするデジタルオーディオレコーダーが登場
パソコンの普及率が高まるにつれ、音楽とパソコンの関係は一段と深まりICレコーダーの普及によって、両者の関係は一層密となって行った。ICレコーダーとデジタルオーディオレコーダー(デジタルオーディオプレーヤーとも呼ばれる)は厳密に区別できないが、本連載では、ICレコーダーは、いわゆるボイスレコーダーのように会議や商談、学習などに使われる音声の録音再生機器として、デジタルオーディオレコーダーは、音楽の録音再生をメインとした機器と区別しておきたい。つまり両者は、デジタルメモリーを記録媒体とした機器としては共通だが、その用途により機能、性能に特徴を持たせたものだからである。また、デジタルオーディオレコーダーは通常、半導体メモリ(IC)を記録媒体とした機器を指すが、HDD(ハードディスクドライブ)や光磁気ディスクを記録媒体とした機器も含む。

記録媒体をIC化することでデジタルオーディオレコーダーの小型化、軽量化、薄型化が進む
このように、ハード的にはICレコーダー、デジタルオーディオレコーダーが混沌としていた2000年代初期は、メーカー団体のJEITAでも出荷統計をまとめる場合に機器の項目を統一するのに苦心したようで、前回の本連載に掲載しているJEITA出荷統計でもすっきりまとめられていない。いずれにしても、ICメモリーを記録媒体としたデジタルオーディオレコーダーは、最大の特長である固体メモリーによる小型化、軽量化、薄型化であり、それに伴うポータビリティの良さと、操作性の良さで人気を呼んだ。ただ、ICメモリーとして使われたフラッシュメモリーは、当時高価だったためユーザーの負担も大きかった。そこに目を付けたのがソニーで、そのころ量産が進んで価格も安かったMDを記録媒体とし、パソコンとリンクできるデジタルオーディオレコーダーとしてNet MD規格を発表したのだった。そして、ソニーはNet MDウォークマン「MZ-N920」を発売した。さらに、オーディオメーカーが各社もNet MD市場に参入したので、MDとパソコンの関係はより深まっていった。


参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、日本ビクターの60年史、SOUND CREATOR PIONEER、ソニーHP、ソニー歴史資料館、パナソニックHP、JEITA・HP、「MDのすべて」(電波新聞社)ほか


前の記事  | 
←記事一覧