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No.138 電蓄からデジタルオーディオまで 第40回

2003年度末までにMD機器約8000万台、メディア累計出荷数約11億枚
1992年に、デジタルオーディオとして最初のMD機器が商品化されてから、ハードウェア/メディアを合わせて約80社がMD規格に参入、2003年度末までにMD機器は約8000万台、メディアの累計出荷数は約11億枚に達していた。市場は、本格的なブロードバンド時代が到来しており、音楽配信などのオンラインサービスが台頭するとともに、音楽や動画などの様々なコンテンツを高音質・高画質で記録できる汎用メディアへのニーズが高まっていた。MDもこうした時代に対応することが必要になり、新たに開発されたのが「Hi-MD」規格だった。

ブロードバンド時代対応のメディアに進化させた「Hi-MD」規格
PC(パソコン)の普及に対応するために開発されたのが「Net-MD」規格なら、ブロードバンド時代対応のメディアに進化させたのが2004年1月に発表された「Hi-MD(ハイエムディー)」規格。このころ本格的なブロードバンド時代の到来を迎えつつあり、ソニーは、MDとの再生互換を確保しながらブロードバンド時代に対応する必要性に迫られていた。この「Hi-MD」規格によってブロードバンド時代に対応するとともに、音楽から動画、PCデータまでの多様なコンテンツを扱うことが可能な汎用記録メディアへと進化した。

「Hi-MD」規格対応機器は、それまでのMDとの再生互換性を維持
「Hi-MD」規格は、それまでのMDディスクを「Hi-MD」に初期化することで、記録方式を効率化し、約2倍の高密度化を実現。さらに、DWDD(Domain Wall Displacement Detection、磁壁移動検出方式)技術を採用することで、音楽の場合、最大約45時間分のコンテンツを記録することが可能となる「Hi-MD」規格専用の1GB記録用「Hi-MD」ディスクも開発された。重要なのは、「Hi-MD」規格に対応した機器は、それまでのMDとの再生互換性を維持しており、MDをそのまま再生することができることだった。
一般に光/光磁気ディスクでは、レーザーのスポットサイズによって読み出せる記録マークの大きさが決定され、メディアの記録密度を上げるためには、小さな記録マークを読み出せるスポットサイズの小さなレーザーが必要だった。DWDDとは、磁壁移動型の磁気的超解像(MSR)技術の応用で、レーザーをディスクに照射することによって生ずる温度差を用い、実際にはレーザービームよりも 小さい記録マークを一時的に拡大して読み出す技術である。

ATRAC3plus採用で高音質化を実現した「Hi-MD」
さらに、「Hi-MD」規格ではATRAC3plusが採用され高音質化も図られた。ATRAC3plusは、高い圧縮率と高音質を兼ね備えた音声圧縮技術で音楽CDと同じクオリティであるリニアPCM録音も可能で、PCとの高い親和性も持っていた。長時間録音を可能とするだけでなく、音源を圧縮せずに記録するリニアPCM録音にも対応、市販の音楽CDと同じ高音質記録・再生が楽しめるようになった。
一方、ファイルシステムにFAT(File Allocation Table)システムを導入し、「Hi-MD」規格に初期化したMDディスクや1GBの記録用「Hi-MD」ディスクを、テキストファイルや画像などのPC上のデータファイルを記録できる汎用記録メディアとしても使用できた。なお、著作権を保護する技術にはメモリースティックやNet MDで採用されていた「Open MG」と「Magic Gate」が採用された。ディスク上の音楽コンテンツには暗号化を施すとともに、SCMS(Serial Copy Management System)にも対応していた。さらに、USB規格のMass Storage Classに対応しており、PCと接続するだけで外部ストレージ機器として認識され、携帯性に優れたPC用の書き換え可能なリムーバブルメディアとして活用できるようになった。
「Hi-MD」規格の登場によって、1枚のディスクで長時間の音楽を楽しむことや、画像やテキストファイルなどを記録し、手軽に持ち出すことが可能になった。自宅のPCからダウンロードした音楽を外部で「Hi-MD」規格対応機器で聴きくことができるようになった。ソニーは、「Hi-MD」規格の開発によって、MDを汎用記録メディアという新しい用途へ拡大、MD市場の更なる拡大を目指したのだった。

「Hi-MD」規格対応第一弾、Hi-MDウォークマン「MZ-NH1」発売
そして、ソニーは2004年7月に「Hi-MD」規格対応商品の第一弾として、Hi-MDウォークマン「MZ-NH1」など3機種と、Hi-MDデスクトップオーディオ"サウンドゲート"「LAM-X1」、「Hi-MD」規格の"記録用Hi-MDディスク(記録容量1GB)"「HMD1G」を同時に発売した。

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Hi-MDウォークマン「MZ-NH1」などと、Hi-MDディスク"「HMD1G」
(※クリックすると画像が拡大します。)

Hi-MDディスク"「HMD1G」を使って最長約45時間の録音が可能
Hi-MDウォークマン「MZ-NH1」は、録音・再生機として充実した機能を持つ「Hi-MD」規格対応ウォークマンの最上位機種。"記録用Hi-MDディスク"「HMD1G」を使って最長約45時間の録音や、音声圧縮のないリニアPCM方式での高音質録音・再生に対応していた。また、録音した楽曲をPCにアップロードすることもできるので、今までの音楽CDや、電子音楽配信サービス(EMD)から購入した音楽データと合わせて、付属のアプリケーションソフト"Sonic Stage Ver.2.1で簡単に編集・管理を行いながらMDに高速転送して音楽を楽しむことができた。さらに、FAT(File Allocation Table)システムに対応し、USBでPCと接続、外部ストレージ機器として音楽データだけでなく、PC上のデータも簡単に記録できる汎用記録メディアとしてMDディスクの用途を拡げている。


参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、ソニーHP、ソニー歴史資料館、JEITA・HP、「MDのすべて」(電波新聞社)ほか


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