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No.143 電蓄からデジタルオーディオまで 第45回

オーディオ界に大きな影響をもたらしたiPod
iPodの登場は、それまでのオーディオ界に大きな影響をもたらした。
デジタルポータブルオーディオプレーヤーだけでなくコンポーネントステレオまで幅広い影響があった。2001年発売の初代iPodは、記録装置に東芝製で8GBまたは10GBの1.8インチ超小型HDDを搭載し、このHDDに数千曲の音楽を保存できた。さらに、ファッショナブルなデザインとカラー、パソコンとインターネットを使って音楽の配信サービスを受けられることなどが大きな魅力で人気を呼んだ。

Windows対応モデルも発売したことで普及に拍車
アップル社のiPod発売の狙いは前回で少し触れているが、パソコン市場において同社のマッキントッシュとWindows対応パソコンの戦いで劣勢にあり、これを挽回するためマッキントッシュだけに対応したiPodを発売したという見方があった。しかし、実際のところアップル社は、それよりソニーのポータブルMDプレーヤーを凌駕してiPodを世界ナンバーワンのデジタルポータブルオーディオプレーヤーにしたいという狙いがあった。その頃は、インターネットやパソコンの普及拡大とともに、音楽や映像の世界にもデジタル化の波が押し寄せていたからである。そして、この分野は将来的に大きなビジネスになると予想していた、というのが自然だろう。この予測が有ったからこそ、初代モデル発売からわずか1年後には世界中に普及していたWindowsパソコン対応モデルも発売した。この素早い対応は、いかにデジタルポータブルオーディオプレーヤーのビジネスが同社の経営の柱となり、大きな利益を生み出すとの期待を持っていたかをうかがわせる。

高音質化よりデザインの良さや小型化、薄型化、操作性、メモリー容量拡大を目指す
そして、初代iPod以降次々と発売されたモデルを見るとアップル社のデジタルポータブルオーディオプレーヤーに対する考え方が見えてくる。iPodは、デジタルポータブルオーディオプレーヤーとしての高音質化を目指すと言うより、デザイン性や小型化、薄型化、操作性、そしてメモリー容量をできるだけ大きくして、保存できる曲数を増やしていくことなどにこだわっている。したがって、一部の派生的なモデルを除いて基本的なデザインは、コンパクトカセットサイズの筐体に四角い液晶表示を上に、その下にはスクロールホイールと呼ばれる円い操作部分がある。また、HDDや半導体メモリー、表示装置の技術進歩により発売時期によっては、四角い液晶画面がモノクロからカラーになったり、スクロールホイールがタッチ式になったりしたが、基本的デザインは踏襲している。

光沢のあるホワイトの本体カラーでファッショナブルなイメージに
本体カラーも初期には光沢のあるホワイトだけだったが、途中からブラックやレッドなども発売された。しかし、基本はホワイトでイヤホンコードもホワイトだった。それまでオーディオ界ではイヤホンコードはブラックが主流だったのを、ファッショナブルで軽快なホワイトとすることでイメージチェンジした。オーディオ界では、アナログ時代からアンプやチューナーなどのステレオコンポーネントは、重厚なイメージのゴールドやシルバー、ブラックなどが主流だった。やがてCDが登場しデジタルオーディオ時代となっても高級感があり、音質的にも優れていそうな印象を与える、こうしたカラーがずっと主流だった。

専門外のことはサードパーティにまかせる戦略
アップル社がiPodにホワイトのイヤホンコードを採用した結果、周囲の人から見るとひと目でiPodを聴いていると分かった。それがiPodユーザーにとって「最新のデジタルポータブルオーディオプレーヤーiPodを持っている」との自慢や自尊心につながり、普及を後押したという。なお、iPodのイヤホン端子は標準的な3.5㎜のステレオミニジャックを採用している。これはアップル社として、より高音質で音楽を聴きたい人にはオーディオ専業メーカーが発売している、高音質なイヤホンを使ってもらえばよいと考えていたのだろう。専門外のことは、サードパーティにまかせた方が良いとの戦略である。これは、パソコンメーカーであるアップル社だけに、パソコンビジネスにおいては、サードパーティが開発するマッキントッシュ対応ソフトの充実が、結果的にマッキントッシュの市場における付加価値アップとなっていることを十分理解していたからだ。当然、デジタルポータブルオーディオプレーヤーにおいても周辺機器としてのイヤホン、アンプ内蔵スピーカーなどのハードウエア、インターネットやパソコンで利用するソフトウエアのいずれにおいても、サードパーティの力が必要と考えていたはずだ。

パソコンの外部記憶装置としての可能性とマルチユース化
また、iPodは小型HDD搭載モデルでスタートしたが、その後は、フラッシュメモリー採用のモデルも発売している。HDD、フラッシュメモリーのどちらにしても大容量メモリーを搭載し、パソコンと接続できるということは、パソコンの外部記憶装置としての役割も果たせることを意味する。そして、音楽よりデータ量の大きい画像や動画(ビデオ)も記録保存できるようになる。同時に液晶表示装置のカラー化、高精細化が進み、iPodはデジタルポータブルオーディオプレーヤーの範疇から飛び出して、音楽や動画、さらには、パソコンの外部記憶装置としての可能性からマルチユース化へ向かう。
また、フラッシュメモリーの大容量化や量産に伴い低価格化が進んだことで、iPodにも採用しやすくなった。その結果iPod shuffle、iPod nanoなどフラッシュメモリーを採用したモデルが次々と発売され、iPodファミリーが増えて行った。また、HDDの小型化技術も進み、1インチの超小型HDD(4GB、6GB)を搭載したiPod miniも発売された。

記憶装置 主な製品
HDD iPod (アップル)、
iPod mini (アップル)、
ギガビート (東芝)、
ネットワークウォークマン (ソニー)
フラッシュメモリー MP3プレーヤー (アイリバー他)、
iPod nano (アップル)、
iPod shuffle (アップル)、
ネットワークウォークマン (ソニー)
SDメモリーカード D-snap (パナソニック)
メモリースティック ネットワークウォークマン (ソニー)
USBメモリー USBメモリープレーヤー (アイワ/ソニー)
記憶装置と主なデジタルポータブルオーディオプレーヤー


参考資料:JAS journal(日本オーディオ協会編)、日本ビクターの60年史、SOUND CREATOR PIONEER、ソニーHP、ソニー歴史資料館、パナソニックHP、JEITA・HPほか


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